僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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ジョジョ・ラビット


タイカ・ワイティティ監督がヒトラーに!映画『ジョジョ・ラビット』日本版予告編

原題:JOJO RABBIT
監督・脚本・出演:タイカ・ワイティティ
原作:クリスティン・ルーネンズ「Caging Skies」
アメリカ映画 2019年
☆☆☆☆☆

 

第二次世界大戦下のドイツ。10歳の少年ジョジョは、空想上の友達であるアドルフ・ヒトラーの助けを借りて、青少年集団ヒトラーユーゲントの立派な兵士になろうと奮闘していた。しかし、心優しいジョジョは、訓練でウサギを殺すことができず、教官から<ジョジョ・ラビット>という不名誉なあだ名をつけられる。
そんな中、ジョジョは母親と二人で暮らす家の隠し部屋に、ユダヤ人少女エルサが匿われていることに気づく。やがてジョジョは皮肉屋アドルフの目を気にしながらも、強く勇敢なエルサに惹かれていく――。

 

とゆーことで予告編の時から面白そうな作品だなと思ってた「ジョジョ・ラビット」早速見てきました。いやこれが実際大当たり。10年後とかには隠れた名作扱いされてそうな映画だなと思いました。いや賞レースとかにも結構絡んでるし隠れはしないか。

 

以前、何かの記事にも書いたと思うのですが、私の好きな作品の嗜好の方向性として社会性があるもの、というのが一つあります。現実の社会問題とリンクしている題材だったり、政治的あるいは批評性のあるものとエンタテイメント性が融合しているタイプの作品が好みなので、その手の作品は自然と評価が高くなります。
映画に限らず何でもですが、ああ面白かったな「だけ」ではダメなんですよね。

 

それは作品を通して何かを得る為に見るなり読むなりするためにそれに触れているから。勿論、それは例え駄作であろうが、ありとあらゆるもの全てに「得るものなんて」あります。要するにそれって自分の方の心掛けの問題ですから。けれど、作られた作品側もそれを意識しているものであれば、よりそこが大きいものになってくる。

 

それともう一つ、昔から好きな映画の傾向というのがあって、それは「子供」が主人公の映画。若干見るときの視点は違ってきますが、それは男女とかの性別は問わず、年齢的にも今回のジョジョ君みたいに無垢な子供でもいいし、多感な10代ぐらいでもアリです。
簡単に言うといわゆる「通過儀礼」的な作品で、自分の世界が全てだった少年少女が世の中を知り、痛みや苦しみを経験して、一つ大人になる。みたいな作品。

テラビシアにかける橋」「君の為なら千回でも」「ぜんぶ、フィデルのせい
パンズ・ラビリンス」「ディア・ウエンディ」「グッバイ・レーニン」etc...
いやちょっと違うのも入ってるかな?まあいいや。

 

でもって今回見た「ジョジョ・ラビット」はその辺りの嗜好のドストライクで思いっきりツボな作品になってました。

 

「第二次大戦もの」ではあるのですが、視点はものすごく現代的。
まあオープニングからビートルズがかかったりするので、その辺からも作品の方向性というのはおのずとわかる気もしますが、当時の時代性をリアルに再現するというより、今生きている現代から過去を振り返って、今これから自分達に何が出来るのか?を描いてる作品なんだなと思えて、すごくグッと来ました。

 

何と監督のタイカ・ワイティティ自ら演じるヒトラーも、リアリティのある人物として掘り下げるのではなく、ものすごく記号的。それも意図的に。まあ実際のヒトラーじゃなく、ジョジョのイマジナリーフレンドとしてのヒトラーなんで、そもそもがリアルである必要なんてないんですけども。

 

私たちの歴史は、無根拠な差別や偏見に囚われ、憎しみで思考を停止させてきた。
でも、ほんの少しだけ思いとどまって、その人と本当に向き合った時、また世界は違って見えてくる。つらい事や悲しい現実は今の世の中にもいくつもあるけれど、きっとこれから世界は、あなたは、変わっていく力をもっているんだよ、と教えてくれている作品なのだと思う。

 

それで、子供だけでなく、キャプテンKがさ~涙を誘うのよ。
カッコ良かったな。私もああいう事が出来る大人になりたい。
ナチスの軍人でありながらも、彼もまた一人の人間であって、彼なりに考える所もあり世界をかえるようなスーパーヒーローにはなれないけど、たった一人でも救う事が出来た。あれこそがまさしくヒーローだよね。
ナチスおばさんはあれはあれで笑わせてもらったからいいけど。

 

キャプテンKの下りもそうだけど、映画前半の伏線とかもきちんとラストにつながって、作りも凄く丁寧でした。
この人の作品はそれこそ「マイティ・ソー:バトルロイヤル」しか知らなかったけど、次の「ソー:ラブ&サンダー」の後にも良い作品を作ってくれるような気がします。
アメリカのコメディー映画って、笑いのツボが違ったりするのもあって、そんなに積極的に見ようと思うジャンルじゃないんだけど、この人なら楽しめそうかも。

 

年明け早々、今年の年間ベストに入ってきそうな良い映画でした。オススメ!