僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

見たもの読んだものなどの簡単な記録と感想のチラシ裏系ブログ

8月の家族たち

8月の家族たち [DVD]

原題:August: Osage County
監督:ジョン・ウェルズ
原作・脚本:トレイシー・レッツ
アメリカ映画 2013年
☆☆☆☆★

 

<ストーリー>
8月の真夏日。父親が失踪したと知らされ、オクラホマにある実家へ集まった三姉妹。 真面目すぎて暴走しがちな長女バーバラと、反抗期の娘、実は別居中の夫。 ひとり地元に残り秘密の恋をしている次女アイビー。自由奔放な三女カレンと、その不審な婚約者。彼らを迎えるのは、闘病中だが気が強く、率直で毒舌家の母バイオレットと、その妹家族。生活も思惑もバラバラな“家族たち”は、つい言わなくてもいい本音をぶつけあい、ありえない“隠しごと”の数々が明るみに―。

 

とゆー事で「8月の家族たち」。友達にこれ面白かったよとオススメされた一本。
元は舞台用の戯曲のようで、基本は家の中だけで話が展開する会話劇。

 

映画を観終わってから予告編を見たのですが、え?これこんな軽いノリのコメディじゃなくないか?あまりの極端さに思わず笑ってしまうような場面は確かに何箇所かあったけど、ずいぶん偏った予告編だなぁと思ったのですが、調べてみると一応ジャンルとしてはブラックコメディーという事にはなってる様子。ホントに?

 

そう、私は大真面目に見ました。凄いリアルな話でクッソ重い話だったなぁと。受賞はしてないのですが、メリル・ストリープジュリア・ロバーツがこれでアカデミー賞にもノミネートされてます。それも納得出来る物凄い演技でした。なんて事言いつつ私は吹き替えで見たのですが(字幕に苦手意識は無いですが、あるものは基本字幕出しつつ吹き替えで見ます)その吹き替えも物凄い出来。外画メインの声優さんがほとんどですので、私が名前知ってる人は数人ですが、まさにプロの声優という演技で、絵に負けず劣らずセリフのニュアンスや会話の応酬がホントに凄かった。

 

でもって「家族」のお話なのですが、ここでいう家族とは親戚なんかも含めた血族、一家のお話です。
友達ともよく話をするのですが、家族がキーになる映画とかって、実際の自分の家族構成とかによって凄く見方が変わってくる物ですよね。
ありがちなのは「かわいい妹」キャラが物語に居たとして、実際に自分の家族に妹が居る人にとってそれは意外と素直には受け取れない、であったり、姉妹でも兄弟でも立場によって全然違う視点があったりするものですし、ましてや一人っ子の人がフィクションだけを見て兄弟が居るっていいな、なんて思う部分も、実際に兄弟が居る人にとっては良い部分もあるけど悪い部分もあるんだよって絶対に思う。全て重ね合わせるまで行かなくとも、その人が持ってるパーソナルな感情が見るときに必ず影響と言うのはしてきます。

 

例えば私なら姉が居るのですが、特別に疎遠でもなければ特に仲が良いわけでもなく、正月とかに顔を合わせれば普通に話をする程度でそこは割と特別な感情は無いのですが、もう少し広げた血縁関係となると、諸事情あって縁を切ったりもしているので、多分そこは家族によって色々あるものなんだろうな、というのがもう基本的な感覚としてあるわけです。つまり「普通はこうじゃない?」みたいな感覚があまり無い。「それぞれ事情があって当たり前」の方がむしろ普通、的な。

そういった経緯がありますので、今回の「8月の家族たち」も、ああこの家もまた込み入ったものがあるんだなと素直に受け止めて見てました。

 

あと、感覚的な所で言えば、私は割と皮肉屋な毒舌家です。性格ひねくれてるのは自覚してるものの、毒舌の方は意識してなくて、思った事を割とポロっと言ってしまう事が多々あり、人を傷つけたくは無いのでこれでも相当に気を使ってるのですが、空気読まずについ言ってしまう事があって、割と他人にはそう言われる事があります。

 

なのでこの映画、すげぇリアルな映画だなと思ってしまいました。会話の一つ一つに引き込まれて、2時間全然飽きずに見られました。

 

犬神家の一族」(の市川崑76年版)なんかは、ああ家族の怨恨って怖いね、みたいに他人の絵空事で見られたのですが、なんか今回のはこういうのあるよな、なんて凄く現実感を持ったリアルな話として受け止めてしまった。

物語の最終盤辺りで明かされる、実はこうでした的な展開が逆にノイズに思えてしまったくらいです。

 

是枝弘和の「真実」もこんな感じの話なのかな?気にはなってましたが映画館ではスルーしてしまった作品なのでいずれは見ておきたい所。

いかにもな感動のラストなんて無い作品ですので、割とどんよりした気持ちで終ってしまいますが、シネフィルなら見て損は無い面白い作品でした。オススメ!


映画『8月の家族たち』予告編