僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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1917 命をかけた伝令


『1917 命をかけた伝令』予告

原題:1917
監督・脚本・制作:サム・メンデス
英・米合作映画 2019年
☆☆☆☆

 

<ストーリー>
第一次世界大戦真っ只中の1917年のある朝、若きイギリス人兵士のスコフィールドとブレイクにひとつの重要な任務が命じられる。それは一触即発の最前線にいる1600人の味方に、明朝までに作戦中止の命令を届けること。進行する先には罠が張り巡らされており、さらに1600人の中にはブレイクの兄も配属されていたのだ。戦場を駆け抜け、この伝令が間に合わなければ、兄を含めた味方兵士全員が命を落とし、イギリスは戦いに敗北することになる―刻々とタイムリミットが迫る中、2人の危険かつ困難なミッションが始まる・・・。


とゆー事で、全編ワンカットという事で話題のこちら。
アカデミー賞では撮影賞、録音賞、視覚効果賞を受賞。

 

ネタバレにも触れますので、映画をこれから見るという人はご注意下さい。

 

予告にも出てましたので、2時間ワンカットというのは知ってましたが、予告編以上の情報は仕入れずに見ましたので、映画が始まってすぐ、この視点でカメラがずっと切れずに続くのかと最初からもうドキドキしながら見てたのですが、え?この展開でワンカットってどうやって撮影したの?凄くね?とか思いながら見てました。

 

でも流石に途中で、ああなるほど実際に2時間長回ししてるわけじゃなくて撮影上はそれぞれのカットごとに撮っているんだけど、それを完全なシームレスで繋いで「画面上はワンカット」という形にしているんだろうなというのは薄々気づく事が出来ました。(地形の影に一瞬だけ隠れるとかちょこちょこあったので)

 

「カメラを止めるな」みたいにずっと長回しで一発勝負でやってるものなのかなと思ってたけど、後からインタビューとか読んでみると、ワンカット風に繋いだ作品である事は普通に出してたんですね。密室の会話劇みたいなものならいざしらず、流石にこの内容では不可能でしょうし。

 

かと言ってそれで、なんだ種明かしをしてみればそんなもんかとは決してならずに、むしろこの作品の設計図というか組み立て説明書みたいなものがあればそれ見たいぞと思わせる、もう常人には想像すら不可能なレベルの組み立て方。
当たり前ですが画面の絵だけ繋がれば良いってものでは無いわけじゃないですか。ストーリーラインの緩急や登場人物の心の動き、そして見ているこちらがわの感情の動き方までコントロールしなきゃいけないわけで、そういう所も含めたこれの設計図って一体どうなってるの?というレベル。

 

映画好きなら、映画あるいはストーリー性のある映像とかはモンタージュ理論で形成されている事は知ってるわけじゃないですか(もしモンタージュ理論知らない人がいましたら自分で調べて下さい。流石にここでそこからの説明を1からはやれないのでごめんなさい)基本的にカットの繋ぎを自分で脳内補完してるわけで、じゃあそのカット割りが無く1シーンだったら、あれ?どゆこと?みたいに頭の中が混乱してしまいました。

 

まあ「カット」っていう言い方がネックで、要するに見えないものを自分の頭の中で補完するという事なので、実際そこは普通の映画と何もかわらないとは思うのですが、いつもとはちょっと違う感覚で、頭がパニックという不思議な体験をしてきました。

 

作品の意図的には、ワンカットにする事で見る者の没入感をより深めるというのがこういう作りにした理由のようですが、頭でっかちで考える私みたいな人にとっては逆に混乱して、変なノイズになってしまうという面白い話です。

 

私は映画見るときは頭の中の思考のラインを何本も作って、例えば話を追うラインだとか、感情を追うラインだとか、単純に画作りを見るラインだとか、テーマとしてどうのとかとにかく色々な思考を平行線で走らせて、そこをザッピングしたり繋いで重ねたりものすごーく脳内労力を使うので(今風にマルチタスクと言った方が伝わるのかな?)スケジュール的にどうしてもの時以外は1日に映画2本見るとかはしないようにしてたりするのですが、今回は撮影とか編集とか普段私はあまり考えてない技術的な部分まで気になり始めて頭の中がホントに大変でした。

 

しかもこれ、時間の配分どうなってるんでしょう?後半、物理的にブラックアウトしてしまう部分はともかく、起きてる時間って一度もカット切り替わって無いわけですからリアルタイムで2時間丁度の話って事ですよね。ブラックアウトするまで1時間半くらい?起きてから30分であの距離を動いてそれで話まで進むもの?でも時間は飛んでないし、そうだとしか言えない。

 

そのままを見ただけなのに、その「そのまま」を受け取るのに苦労してます。未だに魔法にかけられた気分。普段、この映画はこういう構造で、なんてわかったような気になって色々書いたりしてますけど、この映画に関しては本当にわからなくて映画設計の奥深さを改めて思い知らされた作品でした。

 

単純にゲームっぽい感覚だな~なんて思ってたら、主人公かと思ってたあの人唐突に死んじゃうし、今まで映画で感じた事の無い不思議な感覚が味わえました。こういうのは家でダラっと見てしまうと受け取る印象も全く変わってきそうですので、映画館で集中して見るべき作品。なので公開中に是非映画館に足を運びましょう。オススメ!