WONDER WOMAN:THE HIKETEIA
著:グレッグ・ルッカ(作)J・G・ジョーンズ(画)
刊:DC 小学館集英社プロダクション
アメコミ 2020年
収録:WONDER WOMAN:HIKETEIA(2002)
☆☆☆☆
自らの故郷「セミッシラ」より外界に出てきたワンダーウーマンは、自分の知る世界とこの世界の違いに慣れ始めたところであった。 そんな彼女の元に、突如ダニエルという女性が助けを求めに現れ、ワンダーウーマンと古代ギリシャの儀式「ヒケテイア」を交わすことになる。この儀式により、ワンダーウーマンはダニエルを守る使命を帯びることになるが、彼女は殺人の罪を抱えていた……。
グレッグ・ルッカが紡ぐ、ワンダーウーマンの悲劇が今、幕を開ける……。
「ワンダーウーマン1984」も延期になっちゃいましたね。まあそこは仕方ない。せめて映画館に行けるくらいにまでは早く収束してほしいとこです。
時系列的にはインフィニットクライシスより前。単発として出たこれが好評で当時の「ワンダーウーマン」オンゴーイング誌のライターに就任したとの事。その後のリバース期も同じくルッカが担当。
ええと、めちゃめちゃ暗くて重い話でした。
ワンダーウーマン/ダイアナは人間とは違う半神的な存在なわけですが、それより古い歴史を持つ太古の神々にとっては小娘でしかない、という設定がまず面白い。
で、自分の出生より古くからある太古の儀式、儀礼的な所には従わなければならない。いや、別に従わなくてもいいのかもしれないけど、本人も神の使途である以上、そういったものは重視するし、どんな過去があったとしても、庇護を求める存在を無下には出来ない。勿論、ヒーローとしても、女性の人権保護的な視点からも。
庇護を求めたダニエルも相当に重いものを背負っており、搾取されて非業な最期を遂げてしまった妹の復讐に生きていて、自らが殺人者としての罪を背負ってでもそれを成し遂げる。
この辺は個人的には「バットマン:究極の悪」って小説を思い出してしまいました。バットマンが東南アジアの人身売買組織と戦う話。
キャットウーマンなんかも娼婦設定ありましたけど、そうやってヒーローになれる存在ばかりじゃない、ただ搾取され悲劇のスパイラルに陥っていくだけなのが大半。それが普通な人ですよね。
そんな普通の人でしかないダニエルが憧れた存在がワンダーウーマンで、少しでも近づきたくて勉強してる内に、太古の儀式ヒケティアを知り、っていう展開がメチャメチャ上手い。
絶対に一線を越える事は無いし、法の守護者でもあるものの、お前だって色々と法律的にはヤバイだろっていうバットマンが、太古の儀式の前に現代の法律守れよって言うのは若干シュール。表紙からしてそうですが、今回はバットマンはちょっと損な役回り。
なんだか誰も幸せにはならないビターな終わり方が痛い。でもこういう重い話もアメコミらしくて、面白いのは面白かった。これ映画に合わせて出す話か?とは思ったものの、少し古めな作品ながら、それでも日本語版で紹介する価値のある名作ではありました。
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