BEFORE WATCHMEN:MINUTEMEN・SILK SPECTRE
著:ダーウィン・クック、アマンダ・コナー
刊:DC ヴィレッジブックス ビフォア・ウォッチメンシリーズ2(全4巻)
アメコミ 2014年
収録:BEFORE WATCHMEN:MINUTEMEN #1-6 :SILK SPECTRE #1-4(2012-13)
☆☆☆☆
「ウォッチメン」の前日譚を描く「ビフォア・ウォッチメン」シリーズ2冊目。
今回は「DC:ニューフロンティア」のダーウィン・クックが担当。本編の1世代前のクライムバスターズ、初代ナイトオウルや初代シルクスペクターらの時代の「ミニッツメン編」を絵・脚本共にダーウィン・クックが、2代目シルクスペクターことローリーがチームに所属する直前くらいまでの青春時代を描く「シルク・スペクター編」をダーウィン・クックの共同脚本と共に脚本・絵をアマンダ・コナーが描く。
ブライアン・アザレロの1冊目が正直私には微妙でしたので、う~んやっぱりそもそも企画として無謀だよなこれ、という印象でしたが、2冊目のこれ、特にミニッツメン編がメチャメチャ面白い。シルクスペクター編はまた微妙でしたので☆4つとかにしてますけど、ミニッツメンのみなら☆5でもいいくらい凄い。
ウォッチメン本編の中では、設定上前の世代のヒーロー達も居たんだよという程度で断片的にその顛末とかが描かれる程度でしたが、そこを生かした上でダーウィン・クックらしい政治性やヒーロー要素、レトロチックな作風とベストマッチ!勿論、アラン・ムーアの作風とは違うんだけれど、そこはアメコミらしく別の作者が描いてた地続きの世界観はあるんだっていう前提で受け取るには全然これアリと思える作品になってました。
クライムヒーローとしてのシルエットのカッコよさとその矜持。さらに彼女が抱えていたその背景。そこに惹かれていく初代ナイトオウルの切なさ。時代や社会背景と、その変化。その辺りの描き方が抜群に素晴らしい。ミステリー要素もあって、グイグイと読ませるこの構成力。
確か作者のダーウィン・クックってもう亡くなられたんですよね。ニューフロンティアと共に題材の良さとかもあるのかもしれないけど、アートも凄く良いですし、邦訳されてない他の作品も読んでみたくなります。
でもってシルクスペクター編。
ミニッツメン編での初代サリーの方もそうですし、2代目のローリーもそうですが、シルクスペクターってどちらもあまり好きなキャラではなかった。でも、ちょっと嫌なキャラなんだけど、こういう人居るよねって思えるキャラ作りがとても上手い。
ウォッチメン本編にも関わってくる話ですが、シルクスペクター親子とコメディアンの関係性って、見てて(読んでて)あまり楽しいものではないんだけど、その複雑な心境こそがまさしく熱力学的奇跡であり、この世界の素晴らしさなわけで、そうなんだよこのわけのわからなさが現実であって、このろくでもない素晴らしき世界なんだって納得させられる部分でもあるんですよね。
キャラがカッコいいとかカッコ悪いとか、好きか嫌いかとかそういう事じゃない。そこには物語やテーマの深さや重さ、そう言う所に惹きつけられます。
本編も含めて、ローリーくらいの若い娘ならともかく初代の方のサリーの描き方って正直私は漫画で他に読んだ事無いかもしれない。
おじさんとかならまだあるんだけれど、なかなか漫画でおばちゃんって掘り下げられるケースは少ないですよね。女性向けの漫画だとまた違ったりするのかな?そこはわかりませんが。映画なんかだと普通におばさんがメインの話とかありますし、そういうのも何本も見てるので特に不思議に思った事はありませんが、こと漫画っていうと私の中では思いだせない。
好き嫌いで言えばサリーって好きではないのですが、そう言う所もちゃんと描いてあるのが作品としての素晴らしさでもあり魅力でもあったのかな、と改めて思ったりしました。
これは「ウォッチメンのサイドストーリー?アラン・ムーアじゃないのにそんな余計な物必要無くね?」という人にも、いやこれだけは面白いから読んで損は無いよ、と言える作品になってました。
ダーウィン・クック凄い!
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