僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

見たもの読んだものなどの簡単な記録と感想のチラシ裏系ブログ

映画 ハートキャッチプリキュア!  花の都でファッションショー・・・ですか!?

映画ハートキャッチプリキュア!花の都でファッションショー・・・ですか!?【特装版】 [DVD]

監督:松本理恵 脚本:栗山緑
日本映画 2010年
☆☆☆☆

 

プリキュア映画9作目。TVシリーズ7作目「ハートキャッチプリキュア」の単独秋映画です。

 

シリーズの中でも屈指の人気を誇る「ハートキャッチプリキュア」で、映画の方もファンからは高い評価を受けてます・・・が、私はこれ見るのまだ2回目くらいかも?プリキュア映画はDVD全部持ってるので、好きな奴は何度も繰り返し見てるのですが、これは初見の時以来、見返す気になれませんでした。でも、つまんなかったわけじゃないのです。

 

ハッキリした理由が一つ。最初に見た時、ああこれ子供の為に作ってないな、と感じたからです。よく言われるのが、ミラクルライトの使いどころがよくわからない。プリキュア映画では定番の、冒頭のミラクルライトの説明も無い。オープニングは、クレジットを背景に溶け込ませてメチャメチャお洒落なOPにして作ってあります。とてもセンスがいい。

 

・・・でも当時は思ったんです。これ、子供が喜ぶの?って。子供に向けて作っていないプリキュアってどうなの?大人が見る分には面白いけど、なんかそれ嫌だな、っていう感覚が強くて、どうにも苦手になりました。そんな感覚があったので、最初に見て以来、見返す事は無かった作品になってしまいました。

 

うん、でも今回こうして順番にプリキュア映画の記事を書く為に見ていく中でしばらくぶりに観ましたが、確かに最初に感じた違和感はあるにはあるけど、本編中、つぼみの表情が細かくギャグ顔になったり、細かい笑いを入れてきたりと、大人向けっぽい作りの中でもちゃんと工夫して子供も楽しめるような部分は努力して入れてある事に気づけました。自分の中で勝手に印象だけで決めつけてしまってた部分はあるのかなと反省。

 

全然面白いし、今後は普通にリピートも出来そうです。とても良い出来。

 

果たして映画として何が素晴らしいかと言えば、この作品、プリキュアじゃなくて
オリヴィエが主人公なんですよね。それはあくまで構造上の話で、表向きは勿論プリキュアになってるのですが。


インフレの先に、TVとは違う映画用の主人公を置く事でなんとかまともな映画を作ろうとした「NS」に先駆けて、ちゃんとこの作品からそういう事をやってたんだなと思うと、色々と興味深いです。

 

プリキュア映画の特殊性って、秋映画の方はシリーズの完結編とかじゃなくて、あくまでTVシリーズの途中の話である所です。人気のある深夜アニメなんかがTVシリーズの後に劇場版やったりするのとは違う点がそこです。映画の後にまたTVシリーズに戻らなくてはならない。

 

あと「ドラえもん」とか「クレヨンしんちゃん」の映画とも違うのは、そっち系の場合、のび太君なりしんちゃんが映画の中での冒険なり事件で何かを学んで成長しても、決してそれがTVシリーズには還元されず、いつも通りののび太君やしんちゃんに戻ってしまい、映画とTVシリーズとは完全に切りはなされたものになっている点。

 

映画って、作品の中で成長や変化があるからそこがドラマになります。(それが全てとは言わないけれども)プリキュアも基本的にはシリアスな話ですので、そういう部分はこれまでの映画でも多少なりともある。けれど、あんまり大きくは変化できないんですよね。成長しきってしまうとTVのストーリーと齟齬が生じてしまうから。なので基本的には番外編っぽい話にせざるを得ないというのがありました。

 

そこをこの映画はどうやってるかと言うと、オリヴィエに変化と成長の軸を持たせる事によって、一本の映画としてきちんと芯のあるものにしつつ、つぼみを主人公ではなくちょっと脇の位置に置く事によって、映画の中での変化では無く、TVシリーズ初期の頃とは違う一面を持たせる事で、キャラクターの変化っていうのを描いてある。そこが凄く上手い。

 

ハートキャッチプリキュア」は「チェンジ」が一つのテーマになっていて、引っ込み思案だった主人公のつぼみが、周りの影響を受けて少しづつ成長していく、という形です。でも、映画だとえりかとかゆりさんに世話をやかれていたそのつぼみが、オリヴィエがチェンジするのを手助けする、という役割になってます。1本の映画内だとわかりませんが、TVシリーズをずっと見てきた人にとっては、お~つぼみも変わったな、成長したな、と思う事が出来る。

 

この作り、めちゃめちゃ上手く無いですか?
脚本の栗山緑って、TVの方のシリーズ構成やってる山田隆司の脚本用のペンネームだそうな。(後年になって出た小説版もこの人です)なのでキャラクターの描き方に違和感も無いし、きちんと繋がりも感じさせてくれます。

 

映画の中ではつぼみだけでなくて、オリヴィエがえりか、いつき、ゆりさんと一人づ順番に一緒に行動して、色々学んでいきます。そういう所からも、構造上はオリヴィエが主人公でプリキュアはそれをサポートする立場、というのがわかります。

 

そこ考えると、やっぱりミラクルライトの出番をなかなか作れないというのも仕方がなかったのかな?とも思わなくは無いです。オリヴィエを応援するプリキュアが居て、そのプリキュアをミラクルライトで応援っていう回りくどい事になっちゃいますので。

 

変な話、子供たちはプリキュアを応援したいのであって、冷たい言い方ですけどオリヴィエを応援しに来てるわけじゃないと思うんですよね。プリキュアを観に来たのに、プリキュアが脇役で見た事も無い男の子が主人公になってるというのは、ちょっと厳しい部分あるかもしれない。で、そこらへんの構造の難しさを解決したのが「NS1」という事になるのですが。

 

ただ、オリヴィエもちょっと気になる部分があって、ルー・ガルーという狼男なわけですが、月を見て変身とかしても、実際これがあんまり狼男っぽくない。爪が伸びるくらいで、あとはスーパーサイヤ人みたいになるだけ。なんかビジュアル的にはキャラデザが馬越さんというのもあって、覚醒オリヴィエ君が「聖闘士星矢Ω」でアプスにとりつかれたみたいでした(勿論、星矢Ωの方がずっと後ですよ。)

 

これは見た目を怖くしないとかで子供達に配慮したのかなぁ?サラマンダー男爵に改造された?という背景もあって、ビジュアル的にもモンスター化した方が悲劇性も増したような気がするんですけど、その辺りはどうなんでしょう?そこだけ少し勿体無い部分と感じました。大人視点ではですけれど。

 

オリヴィエ役が大谷育江(後のキャンディですね)、サラマンダー男爵が先日亡くなられた藤原啓治と、演技はお互いにメチャメチャ良いのですが。

 

声優と言えば、プリキュア映画お馴染みのチョイ役の芸能人もこの作品は無し。もしかしたら、そういう所も含めて、映画としての雑味を押さえて完成度上げたかったのかな?と、そこは邪推してしまいます。ある意味、水樹奈々が声優と言う枠を超えた芸能人枠という考え方もありますけども。


前年のNHK紅白歌合戦に声優として初参加。で翌年のこの作品と同じハートキャッチの年にも出場してAKBと共に企画コーナーで「Alright! ハートキャッチプリキュア!」を水樹さんが歌ってくれました。個人的には、実はこれってプリキュアの歴史においても結構重要な出来事だったんじゃないのかなぁと思ってます。

 

昔に比べたら紅白と言ってもそんなに視聴率も伸びないし、アーティストにとってもさほど興味を示さない人も居るくらいになっちゃってますけど、それでも話題性という部分ではまだまだ国民的番組として注目度は高い。そこにプリキュアの名を刻んだって相当に大きいのではないかと。

 

今でこそオリンピックの公式キャラクターになったりしてるくらいまで、プリキュア=国民的番組という認知度を高めてますが、それも紅白出場とかの積み重ねの流れがあってこそなんじゃないかな?と思っております。

 

キャラクターを演じただけで、自分の歌ってる曲では無いので、って断る事も出来たんじゃないかって思うんですよね。しかも紅白って大みそかですから、プリキュア的には宣伝のつもりだとしても最後の1カ月しかもう残ってません。商業上ではクリスマス商戦で売り切って、販促から解放される最後のラスト1カ月でもある。でもそこを引き受けてくれた水樹奈々プリキュアへの貢献度は思ってる以上に大きい、・・・と私は思います。

 

忙しくてオールスターズの舞台挨拶とかだと相棒マリン役の水沢文絵の方にまかせる形になっちゃってますが、水樹奈々は十分に貢献してくれたし、そこは仕方ないと思いたい。

 

とゆーかオールスターズだと一時期、マリンのバーターとしてブロッサムも出る、くらいの言い方されてたくらいなのが、またプリキュアとしては面白い部分。作品の中ではマリンの方が後々まで重宝されるくらいに圧倒的なインパクト残してたりしますね。

 

個人的にここからプリキュアに興味を持ったっていうのもありますし、データ的なものでなくあくまで感覚的にですが、そういった紅白の効果なんかもあってか。この辺りからプリキュアも知る人ぞ知るだけの、ただの子供向けアニメからある種の「ブランド」化していったようなイメージも強いです。

 

でも、そこで保守に走らないで、次々と新しい事に挑戦していった所がプリキュアの強みかと思いますし、それは何より(何度も言ってますが)初代からしてそもそも挑戦した作品だっから、というのはやっぱり大きい。常に挑戦し続けるのがプリキュアの作風になっている。

 

こうやって再見するまでは、ややネガティブなイメージがあって、子供向け作品である事を嫌って、ちょっと大人向けの路線に走った作品なんだって私の中で勝手に決めつけてた部分がありましたが、この作品もまた一つの挑戦の一環であったのかなと思うと、これはこれで許せるし、評価したくなってきました。

 

TVシリーズの方も、他のシリーズとはちょっと違う独特の作風がある名作ですし、人気があるのも頷けます。

変身アイテムのおもちゃが、これまでずっと電子系だったものを、思いきって液晶をとっぱらってなりきりに特化させたのもハトからですし、今のライダーや戦隊でお馴染みのコレクションアイテム(こころの種)をプリキュアで採用したのもハトから。ミュージカルショーDVDの記事で、半ば無理矢理ダークプリキュアの事を書いたりしましたが、やっぱりTVシリーズの方も色々と触れておきたい部分が多くて語りきれません。そこはまず映画の方を完走してからまた考えます。

 

次は「オールスターズDX3」です。この映画とは真逆のイベント映画特化型なのでその辺りについて書こうかな。よろしかったらおつきあい下さいませ。


映画ハートキャッチプリキュア!予告

関連記事

 

curez.hatenablog.com

curez.hatenablog.com