画:村上としや
刊:大都社 StCOMICS 機動戦士ガンダムZZ第2巻+逆襲のシャア(99)収録
コミックボンボン88年3-4月号掲載
☆★
ときた洸一版「逆襲のシャア」の時に触れた、映画の公開時にリアルタイムでボンボンに掲載されたコミカライズ版がこちら。
近藤和久の「Z」の後に連載されたのが村上としや版の「ZZ」で、その流れで「逆シャア」も担当されたのかと思います。ZZの方は当時のボンボンKC以降、何度か単行本化されてますが、「逆シャア」が単行本化されたのはこのバージョンのみというレア収録。
そういう意味では貴重かもしれませんが、探してまで読むほどのものかと言えば、まあそんな事はありません。ガンダム漫画の収集家なら、せっかくなのでこれも集めようというくらい。そもそも単行本化されていないガンダム漫画なんて山ほどあるのでその手の雑誌掲載のみのものとかまで集めるとなるとキリがない。
ときた版の時に書きましたが、ボンボン版コミカライズは、一か月分のプロットをもらって、そこから漫画1回分にアレンジして連載という形のようですが、近藤版「Z」や村上としや版「ZZ」の時も、おそらくは同じような形だったと思われます。設定とかも決定稿が出る前にもう漫画版を描いてるのが、実はこのZZの1話目でわかる。なんと扉ページが永野版ZZで、劇中のおそらくガルスJと思われるMS(マシュマーが最初に乗ってくるMSなので)も、いわゆる誰もが知るあのガルスJではなく、ボツになった永野版デザインのMSになっております。
単行本化の際に描き直しとかせずにそのまま掲載されてるので、ある意味では貴重。
で、「逆襲のシャア」ですが、映画の方もおそらくは同じように脚本以前のプロット段階で描いてるのではないかと思われます。しかもそれをボンボンの読者層に合わせ、なおかつ前後篇の2カ月分のページ数におさめる必要があるという、色々と無茶が要求される作り。例え同じ「逆襲のシャア」のコミカライズ版であったとしても、アニメが完成したものを観て、その上10年も経った上で描かれたときた版とはそもそもバックグラウンドが違ってきます。
「逆襲のシャア」はアニメの前から連載していた富野の「ハイ・ストリーマー」もあれば、映画の脚本の第一稿をベースに描いた「ベルトーチカ・チルドレン」とアニメになる形の前の段階を想像できる小説が2本もありますので、そういった所を踏まえると、基本的にはボンボン読者に合わせた村上としやなりのアレンジがほとんどだとは思われます。
ハサウェイがパイロット候補生として最初から、ラーカイラムに乗ってたり、クェスもアムロやハサウェイと合う事はありません。基本的にはヒーローであるアムロがライバルのシャアと決着をつける話として描かれます。いや、実際決着はつかなかったりするんだけど、その辺りはご愛敬。一応、W(ウインター)作戦として、シャアの目的やこれまでの宇宙世紀の説明も入りますが、そんなのボンボン読者が理解出来るはずもありません。
クライマックスはハサウェイがアクシズが地球に落ちるのを地球に居る家族や子供達を守るんだ!的な所として描かれます。ボンボン読者にとってはガンダムもまた地球を守るヒーローなのでしょう。
決してそれをバカにしたりしてはいけません。私だって子供の頃はガンダム見てもモビルスーツがカッコいい以上の事は考えてませんでしたしね。
ちなみにこのコミカライズ版νガンダム、何とフィンファンネルもってません。確か一番最初に出た1/144のプラモにもファンネル付属して無かったはず。じゃあ、フィンファンネルって作品に後から加えられた要素なのかと言えばそんな事は無くて、νガンダムのデザインのコンセプトは「マントを羽織ったガンダム」でそこからフィンファンネルのアイデアに繋がっていたはず。
多分「0080」のガンダムNT-1アレックスが最初チョバムアーマー姿の方で公開されて、本当の姿が出るまでしばらく引っ張ったのと同じで、フィンファンネルはある種のサプライズというか、νガンダムの真の姿はこれだ!みたいなコンセプトで展開してたんだと思います。だから公開より先に描いてるこのコミカライズ版にはフィンファンネルが出せない。
アニメの方ではアムロがνガンダムの調整時に使っていたヘッドセットが「サイコミュヘッドセット」として特別な物として描かれるのと、そのおかげで超高機動が出せるのがνガンダムの特徴として描かれてます。ギュネイのヤクトはその目に見えない程の高機動で倒すという形になってます。そこだけだとちょっと「F91」っぽい。質量を持った残像は出ませんけど。
そういえば先日、ガンダムファンクラブ限定プラモとして「νガンダム ファーストロットカラー」なるものが公開されてましたけど、何それ?と思ったら、あの逆襲のシャア「特報」でバルカンぶっぱなしてたあのバージョンなのだそうな。随分マニアなとこついてくるな~と半分呆れますが、逆にそういうとこが面白くもありますね。
この単行本の表紙のνガンダムもボディの本来なら黒い所がグリーンになってますのでカラバリとしてコミカライズ版の設定生かしてバリエーションでっちあげるのもアリかも。商品出ても私は買わないけど。
ギュネイが一度やられた後、クエス機の方で再出撃したり(肝心のクエスは戦うシーンなし)ケーラがアクシズショックで無駄に死んだリと、何これ感は満載ですが、これも公式の漫画としてちゃんと表に出たものですので、いつか拾われる日が来るかもしれません。
ガンダムはこんな辺鄙なものまで飲み込めはしない!だから黒歴史にすると宣言した!とか言われそうですけどね。エゴだよそれは。
そうそう、逆シャアとは関係ないんですけど先日ツイッターで面白い話を見つけて、岡崎守版のファーストコミカライズ版、アムロがギレンの演説にブチ切れてTVモニター壊すって言う岡崎版のネタとして語られがちなシーン。あれってちゃんとTV版の方のプロットにはあったシーンだったそうな。ああいうのもただネタとして消費するより、掘り下げていってその背景を調べたり解釈の幅を広げる方が個人的には好みです。
恐らく、今後もいくつか作られていくであろう逆襲のシャアの漫画関連、とりあえず今回で現状出ている4作品程を取り上げる事が出来ました。
次は何を読もうかな。
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