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シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(MCUその13)

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ MCU ART COLLECTION (Blu-ray)

原題:CAPTAIN AMERICA:CIVIL WAR
監督:アンソニー・ルッソジョー・ルッソ
原作:MARVEL
アメリカ映画 2016年
☆☆☆☆

 

MCUフェイズ3の1本目にして「キャプテン・アメリカ」としての3作目。世間でもほぼ「アベンジャーズ2.5」みたいなもんと言われてる通り、ソーとハルク以外のアベンジャーズほぼ集結の豪華作。

 

「エイジオブウルトロン」に続き、再上映で映画館で見て来ました。BD持ってますが、やはり映画館で見れるならそれに越した事は無いです。映画は映画館で見るものとして作ってあるわけですからね。吹き替え派としては字幕オンリーなのがちょっとだけ悩みどころですが、そこは些細な問題。

 

お茶漬け映画、フェイズ2のラストを飾った「アントマン」の後で、フェイズ3に入ったとたんにまたもたっぷりこってりで胃が重くなる作品です。超人登録法を巡って賛成派と反対派でヒーローコミュニティが対立、その間を縫ってヴィランも躍進というのは原作イベントのシビル・ウォーも同じですが、原作の内容的にはほぼタイトルだけを使った別物。

 

公開時の初見の時はやっぱりスパイダーマンやらブラックパンサー登場。アントマンも2作目を待たずしてジャイアントマンになっちゃうのか!と見た目の派手さに目を奪われがちでしたが、その辺を知った上で見ても十分に面白い。

 

日本人の感覚としては、政府の管轄に入るのはやむなし、好き勝手やったらそれはただのヴィジランテと同じで、それではヴィランとさほどかわらない、というトニーの方の意見とか、チームとして存続できるなら、問題が出てきた時に改案を出したり、世の中の流れに合わせて折半していくのが現実的、というウィドウの意見の方が最もらしく聞こえて、妥協しないキャップの方がわからずやな上に、友達だからとバッキーをかばってるように見えてしまう部分はある。その上ワンダは私捕まっちゃうし、と身も蓋も無い事言っちゃうし。

 

キャプテンアメリカ」の映画なのに、あれ?ちょっとキャップの方が若干わがまま通そうとしてないか?と不安になる。でも、そもそもがMCUの出発点、或いは元のアメコミの時点からのキャライメージで、トニー側の方が型破りで、キャップの方が規律を重んじるタイプのキャラクターとして描かれてきて、それが今作では逆転している事に意味がある。

 

金太郎飴の如く、どこを切り取っても同じ顔が出てくるわけではなく、そこに明確な変化が生まれている事。きちんと積み重ねや変化が描かれるというのがMCUでもあるわけです。MCUは映画じゃない、同じようなのばかり何度も作ってそんなの何が面白いの?と言ったスコセッシも居ましたが、それはそれ。後の「エンドゲーム」でその積み重ねを最大限に生かしてきたルッソ兄弟らしい視点がここでも垣間見える気がします。

 

かつては陽のキャラクターこそが他のアメコミ映画との最大の違いだったトニー・スタークがシリーズを重ねるごとに闇を抱えていく事になり、自身の所属するシールドが知らぬ間にヒドラに乗っ取られ権力の危うさを知ったばかりのキャップ。そういった流れの上でのシビルウォーがあるのだと。

 

でもってさらにゆさぶりをかけてくる復讐と報復というテーマ。トニー・スタークが見知らぬおばさんにソコヴィアで息子を失った事を告げられる冒頭。クロスボーンズことラムロウもヒドラの理念など捨て去り完全な私怨で復讐に現れる。父を殺され、犯人への復讐の為にブラックパンサーとなるティ・チャラ。今回の黒幕となるヘルムート・ジモの動機と真の狙い。操られていたとは言え、ウィンターソルジャーが父を殺した事を知り、自分をおさえられなくなるトニー・スターク。

 

そもそもが、「アベンジャーズ」のアベンジ(avenge)とリベンジ(revenge)の違い、みたいな所にも通じる部分。アベンジって日本ではあまり馴染みが無いし普段は使わないけど、「正義の為の報復」みたいな意味のようです。正義を遂行する的な感じでしょうか。対するリベンジは日本だと割と普通に再挑戦みたいな意味でも使われる事が多いですが、英語圏では私的な復讐の事で、良い意味に使われる事は無いのだそうな。

 

ただ、近しい人が言われの無い暴力に倒れ、そこで復讐は何も生まない的な綺麗事を言われても、そう簡単には感情をおさえられるようなものでもないのもまた事実。フェイズ3の幕開けからいきなり不穏な空気を漂わせるこの作風。見る方にも色々とゆさぶりをかけてきます。

 

単純に力で相手を滅ぼしても、それではいずれ復活してしまう(これまさにサノスですよね)だから内部から自らを崩壊させる手段を選ぶ、というジモのやり口の巧みさ。大した後ろ盾も無ければ天才的な頭脳でもないのにここまで上手くやれるのか、という感じはちょっと気になりますが、面白いヴィランの描き方だと思います。

 

ほとんどエキシビジョンマッチ的に描かれる空港でのチームアイアンマンVSチームキャプテンアメリカのいかにもアメコミらしい一大バトルも存分に見せてくれるのはやっぱり興奮しますし、「例え黒を白だと世間が言っても譲ってはいけない事は自分を貫け、世界中からどけと言われても大木のように堂々と立って動かず、お前がどけと言ってやれ」的なペギー・カーターのかつての言葉が葬儀の場でシャロンによって語られますが、これ、原作ではペギーではなくキャップ自身が言ってた、原作でも人気のある名セリフなんですが、そういう原作ファンをおっ!と思わせてくれる部分もあったりして、色々といたれりつくせりな作り。

 

ソコヴィア協定の話はどこいったんだよ!とかラフト刑務所から仲間を脱獄させるキャップとか、ちょっと気になる部分はあるにせよ、「アメコミ映画面白いな!」っていう気分にさせてくれるのが最高です。

 

荒唐無稽なアメコミヒーローを徹底的にリアルに見せる、というような路線の作り方もそれはそれで好きですし面白いですが、アメコミっぽさを存分に生かしたままで、それでいてちゃんと面白い物を作ろう、というのがMCUの大きな魅力なんじゃないかと思います。

 

コロナの影響で新作公開が延期になり、こうして過去作がまた映画館で見られる機会が増えたのは(今度はさらにジブリまでやるってよ)面白い流れだなと思います。
そんなに客が入ってるわけではないですし(今回は私含め2人でした)かつての名画座みたいなものが見直されるまでには行かないんでしょうけど、映画好きとしては再上映や古い作品も大歓迎です。見たいものが多すぎてとても忙しい日々を送っております。
この調子だと11月のブラックウィドウまで復習が間に合いそうです。


映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』日本版予告編

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