僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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映画 スイートプリキュア♪ とりもどせ!心がつなぐ奇跡のメロディ♪

映画スイートプリキュア♪とりもどせ! 心がつなぐ奇跡のメロディ♪ 特装版 【Blu-ray】

監督:池田洋子 脚本:大野敏哉
日本映画 2011年
☆☆☆

 

プリキュア映画11作目。TVシリーズ8作目「スイートプリキュア」単独の秋映画。監督は後にTVシリーズ17作目の現行作品「ヒーリングっど♥プリキュア」を手掛ける事になる池田洋子の監督デビュー作になります。

 

基本的にTVシリーズに対しては番外編的な位置付けになる事が多いプリキュア映画では珍しく本編の36話と37話の間の話として明言されていて、キュアミューズが正体を明かして、操られていた敵のメフィストを解放、ミューズとしての目的は達したため加音町から自分達の国のメイジャーランドへ戻る、というような所から始まる。


脚本もTVの方のシリーズ構成を務める大野敏哉がそのまま担当。ただ、TVだとメフィストが解放された後は肌の色がちょっと明るめに変化しているものの、映画だと以前のままという若干の設定の不備は見受けられる。

 

という事でそんなスイ映画。
映画ファンにはお馴染みのライムスター宇多丸がラジオの映画評論コーナーシネマハスラー(今は番組が変わってムービーウォッチメン)で唯一ハスリングしたプリキュア映画。プリキュアを知らない人が見るプリキュア映画という視点がとても面白いので、是非ごらんになっていただければ。


宇多丸が「映画 スイートプリキュア♪ とりもどせ! 心がつなぐ奇跡のメロディ♪」を徹底批評

そこでも言ってますが、重度のプリオタ的には、こいつ何言ってんだ?っていう所も含めてとっても面白い。

いつもブログを読んでいただいてる人にはわかるかと思いますが、私はプリオタでありつつ、それなりの映画オタでもあるのですが、基本的にアニメオタクはあまり映画を見ない印象はやっぱりある。(話題性のある娯楽大作的なのは見る人も多いでしょうし、そもそもの日本人の劇場での平均映画鑑賞本数は年間1.2本なのでそっちの方が普通と言えば普通なのですが)「アニメ監督が語る映画」みたいな映画秘宝のムック本なんかもありましたし、オタクならもうちょっと違う視点も持ってほしいなとは常々思ってます。

 

そもそも私が映画を沢山見るきっかけになったのって、アメコミが好きで映画「X-MEN」が面白かったんだけど、それは単純に映画として優れたものなのかそうでないのかが気になったから、なんてのも理由の一つとしてあります。客観的な視点で見るとどうなんだろう?という疑問。

元からアメコミが好きだからX-MENの映画が楽しかったのであって、好き=良い物では決してない。好きだけど客観的に見て駄作もあれば、嫌いな作品だけど質としてはとても高いとかいくらでもありますから。好き・嫌いの縦軸と、良い・悪いの横軸は常に考えていて、自分の「好き」と「良い」を一緒にしないようには気をつけています。

 

そんな評価軸で考えると、この映画はとても好きです。でも良い作品とは言い難い。なので上記のシネマハスラーなんかを見ていても、自分の好きな作品を貶すなんて絶対に許さない!なんて事は思わず、なるほどプリキュアを知らない人で映画批評の第一人者である宇多丸が見るプリキュア映画はこうなのか!っていうのがメチャメチャ面白い。

 

実際この映画は好きでもう繰り返し何度も見てますが、見る度に必ず気になるすずちゃんの扱い。うん、あれはひどい。序盤でアコとかつては親友だったんだけど、仲違いをしてしまうと。で、それが作中ではその後回収されないんですよね。

 

プリオタとしては、友情に亀裂が入ってしまうというテーマを響と奏の方で回収してるので、きっとアコとスズちゃんもその後は大丈夫だろうとは思うのです。でも映画オリジナルキャラとしてスズちゃんを出しておいて、それで放置はいかがなものか。


もう一つ、序盤でアコが自分の国に戻るって言った時に、その別れに対して奏太が「アコは寂しくないのかよ」っていうシーンがあるんですよね。ここも一見映画内では回収されないドラマなのかと思いきや、スタッフロールの声無しの絵だけのとこでちゃんと回収してます。あそこがとても良い。言葉で語らないというのが実に映画的だし、TVシリーズを知ってる人なら、きっとこんな会話が交わされてるんだろうってのが手に取るようにわかる。

 

物語を作る時のテクニック、ルールとして「チェーホフの銃」というのがあります。ざっくりとですがそれは何かと説明すると、第一幕目(序盤)で例えば壁に銃がかかっているとします。だったら第2幕第3幕(中盤・終盤)でその銃を使わなければならない。もし使わないのだとしたら、そもそも銃は画面に出すべきではない、という奴です。本来はそういう小道具の扱い方なんかを主に指しているのですが、ようは伏線を回収しないなら、そんなに気になっちゃう思わせぶりなものは入れるなと。見てる方は集中して物語に入れないでしょ?っていう物語のテクニックです。

 

この辺りが考えられていない辺りで、作品としてはこれどうなの?ってなってしまう。例えばアコとかスズちゃんと同世代の子が、「あ!この子達喧嘩しちゃった。この後どうなっちゃうんだろう」ってそこに少しでもひっかかっちゃうと、映画見終わってもその和解とかが描かれてないと、モヤモヤが残っちゃうんですよね。或いは子供を持つ親が見たら?こういうすれ違いって実際あるよね?この作品はそこに対してどういう答えを出してくれるんだろう?え?何も無いの?ってなってしまう。例え他の部分が良くても印象が悪くなっちゃいますよね。

 

これ、連載が完結して無い漫画原作の映画とかにも良くあるんですけど、原作の展開をそのまま使っちゃって、原作を知ってれば理解できるけど、知らないで映画単体で見た人には何も回収されない映画の無駄なカットでしかない。あるいはあわよくばヒットしたら次回作もと見込んで伏線だけ入れといて結局続編は無いとか、すごくありがちです。私も原作知らずに映画とりあえず見てみよう、みたいなケースが割と多いので、そこはすごく気になる。ファン向けなのかもしれないけど、もう少し映画として気を使ってほしいな~と思う事はよくあります。

 

なのでプリキュアを全く知らない一映画評論者として、当然そういうとこは気になるよね、と思うし、そもそも何故すずちゃん一人だけ助かってるのかがわかんないとか、音楽が無くなった世界でそもそもBGMがあるって変じゃね?とか、とても真っ当な感じ方をしていてとても面白い。

 

あと、映画版のみに限らず、スイートプリキュアという作品に対してよく言われる事ですが「音楽のプリキュア」なのにあんまり音楽重視してなくね?というのがあります。

 

これ、TVシリーズ最後まで見た人ならわかるんですけど、変な話音楽はモチーフであって、テーマじゃないんですよね。いやテーマじゃないって言うと語弊があるか。9.11の事もあってラストは当初の構想から別のものに変えた、と作り手側が言ってたりもしつつ、具体的にどう変わったかまでは明かされて無いのですが、単純に「音」じゃなくて、多種多様な人々が生きているこの世界こそが音楽で言う所の組曲(=スイート)なんだ、っていう結末に向かうんですよね。

 

命の鼓動こそが音楽の原点みたいなもので、雑音=ノイズでさえこの世界を形成する組曲の一つであるのだと。悲しみの集合体であり、そこから生まれた存在であるラスボスのノイズ。生きていれば辛い事だってある、悲しみはこの世から決してなくならない、でもそんな悲しみさえも受け入れて、私達は生きていく、という展開になる。(気になる人は是非スイート本編を見よう)

 

9.11を受けての事なのか、音楽がどうのというレベルを通り越してそういうテーマを描いている作品なので、「音楽のプリキュア」じゃねーじゃん!みたいなのはご容赦願いたい所。

 

映画OPにも使われてる後期OPテーマ「ラ♪ラ♪ラ♪スイートプリキュア♪~∞UNLIMITED∞ ver~」が前期から歌詞が変わって、明言こそされてませんが、歌詞を見ると明らかに震災復興応援ソングという趣になってて、これがまた泣ける。

www.youtube.com

 

作品からの応援メッセージなんかもありました。


プリキュアからみんなへ

 

 


そして後のムック本でメロディ役の小清水亜美さんが語っていた部分。以下2018年の「フェブリ特別号 プリキュア15周年アニバーサリーブック」からの引用。

 

スイートプリキュア♪』が放送されたのは、大きな地震があった年でした。そのため、内容の変更がありました。その頃、私たちも皆様も、この先どうなってしまうのか、そしてどうするべきなのか、答えをみつけられなかったと思います。そんなとき、盛岡に住んでいる友人の娘ちゃんと、混乱のただ中、メロディとして電話で会話をしました。「怖かったけどネガトーンのせいだよね?私はママを守るから、メロディとリズムはみんなを守って。応援してるよ。だから、私も頑張るね」。励ますつもりが励まされ、と同時に子供たちの心にプリキュアがどれだけ必要なのかということ、そして小さなお友達みんながプリキュアなんだと気付かされました。そのとき、自分にできることは寄付などだけではなく、今まで以上に全力でプリキュアを演じて子供たちに届けることだと思いました。メロディがメロディとして絶対負けない、絶対折れない希望になると決意したとき。(引用終わり)


私これ最初に読んだ時に泣いてしまった。単純に「子供向けアニメ」と言葉で言ってしまえば簡単だけど、こういう所も含めて特別な、特異なコンテンツなんだな、というのを改めて実感させられます。

 

勿論、それは何もプリキュアだけに限られた話じゃ無くて一つ一つのコンテンツを掘り下げていけばその作品なりのものというのはきっとあるはずで、ただ消費するだけでなく、そういう所まで見ていく面白さや、一つの視点だけでなく多角的な視点から捉えて、より立体的に捉える事で、もっともっと面白さが増すというものです。

 

なので、最初に例に出したようなプリキュアを知らない一映画評論家から見たプリキュアも面白いし、震災という現実の問題に対してプリキュアはどう向き合ったのか、というのも言葉として正しいかどうかは別として、面白いなと思います。

 

逆にもう少しファン目線でこの作品を見た時に毎回気になる部分。クレッシェンドキュアメロディになって必殺技のパッショナートハーモニーを放つ際にエフェクトのト音記号がメロディ側の方が大きくて、時間差でリズム側が大きくなるっていうシーン。

クレッシェンドフォームの力の大きさを演出してるわけですが、リズムがそこに気合いで合わせたのか、足りない分をメロディがさらに上乗せしたのか、どちらにもとれるように見える。で、どっちの解釈をしてもアリだなと思えるのがとても好き。

 

好きと言えば、特装版に入ってる舞台挨拶で、キュアビート/エレン役の豊口めぐみがエンディングダンスをフルで踊れて凄いって言われて、だって私プリキュアですから!とドヤ顔するのも最高。なんならそれが見たいが為に本編もセットで見返したりした事もあるくらい。

 

映画としてそんなに出来が良いと言える作品では無い。けど、プリキュアという作品コンテンツの特異さも感じる事が出来れば、TVシリーズの流れの特別な1話としても見る事が出来るし、単純にプリキュアの可愛さやカッコよさや楽しさも味わえるし、特典映像の舞台挨拶まで見返してしまいたくなる魅力。そして何より見る度に思うのです。スイートっていいな、プリキュアっていいいな、って。


別に出来が良く無くたって好きな物は好き。プリキュアってこんなに素晴らしいコンテンツなんだよ!ってますます伝えたくなる好きな作品です。

 

次はやっと「オールスターズNS」・・・の前にソフトも出てるのでイベントムービーだったダンスステージに行こうかな。


スイートプリキュア映画予告

 

 

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