僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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ロケット・ラクーン&グルート

ロケット・ラクーン&グルート (MARVEL)

ROCKET RACCOON & GROOT
著:ビル・マントロ、ダン・アブネット、
 アンディ・ラニング、スタン・リー、ラリー・リーバー(ライター)
 キース・グリフィン、サル・ビュッセマ、マイク・ミニョーラ
 ティモシー・グリーンII、ジャック・カービー(アーティスト)
刊:MARVEL ヴィレッジブックスアメコミ 2014年
収録:TALES TO ASTONISH #13(1960)
 MARVEL PREVIEW #7(1976)
 INCREDIBLE HULK #271(1982)
 ROCKET RACCOON #1-4(1985)
 ANNIHILATORS #1-4(2011)
 ANNIHILATORS : EARTHFALL #1-4(2011-12)
☆☆☆☆★

 

モフモフにしてやんよ!

映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で話題の宇宙アライグマ、ロケット・ラクーンが大活躍!

 

という事でロケット・ラクーン&グルートのオムニバス集。古い作品から割と近年の作品まで収録されてますが、割と絵柄が癖のあるものばかりで、アメコミ初心者にはちょっと入りにくいかも。ただ、ロケットの話が初出話のみでなく、ロケットに関する設定の大半が集約されてるので、ロケットを知りたければこの本一択しかないというもどかしさ。

 

私も最初はちょっと読みにくいし、話も絵柄も微妙かなぁと感じたのですがこれが読み進めていく内に、なんかこの話ヤバくね?実はとんでもないSFだった!とちょっと驚いてしまいました。しゃべるアライグマという一見表面的な可愛さを単純に狙ったキャラなのかと思いきや、そこにはちょっとビックリする、きちんとした理由がありました。

 

MCUの「GOTG3」ではロケットの過去を掘り下げるというような話もありますし、原作そのままをやる事は無いと思いますが、元ネタとして多少のネタバレになる可能性もありますので、その辺りはご了承ください。

 

 

■テールズ・トゥ・アストニッシュ#13(1960)
こちらは「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:プレリュード」にも収録されてるグルート初出話。

そっちにも書きましたが元々がマーベルユニバースが確立する以前のホラーオムニバス集の1編ですので単純に読み切りとして読めてとても面白い。


■マーベルプレビュー#7(1976)
ロケット・ラクーン初出話。
マーベルプレビューは毎回違う話が載るオムニバス誌のようで、スターロードもこの雑誌でデビューしてるようです。人気があれば再登場もありと言う事で、スターロードの話は雑誌終了の34号までで5回ほど登場してるそう。後にチームを組む二人が同じタイトルでデビューしていたというのも運命的で面白いです。

 

ロケットの初出のこの7号は「ソード・イン・ザ・スター」という作品の2話目にあたる。「続きが読みたければ編集部へお便りを出そう!」と締めてあるが、3話目が掲載される事はついに無かったと言う・・・。うむ。現実は非常である。

 

作品としてはガチガチのSFファンタジー物ですが、何とこれ「スターウォーズ」以前。おそらくは作者がスペースオペラ小説とかが大好きで、そこで読んで想像していた世界をビジュアル化したい!みたいな意図で描かれた作品なのかと思います。

 

主人公は亡国の王子で、たどり着いた星でしゃべるアライグマのロケットと出会う、というような感じになっております。可愛い容姿の割に毒舌というロケットのキャラクターはこの時点で確立されていてそこは面白い。

 


インクレディブル・ハルク #271(1982)
こちらも「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:プレリュード」にも収録。

 

ロケット2度目の登場ですが、前述の初出話「ソード・イン・ザ・スター」は既存のマーベルユニバースを想定して描かれた話では無いので、ロケットの実質的なデビュー作はこちらとも言える。

 

ただこれ、前述のロケット初出話と同じビル・マントロが脚本を書いてる。適当に古い作品からキャラを拾ってきたとかじゃなく、ロケットの生みの親がハルク誌に再登場させて、ロケットの出身惑星のハーフワールドの話を描いてます。しかも今後のハルク誌のストーリーラインに繋がるものではなくこの1話のみの単発で。

 

初登場からその後描かれる事が無かったロケットを5年後に無理矢理入れ込むというビル・マントロのロケットへの思い入れが伝わってきます。

 

そこから3年後・・・

 

■ロケット・ラクーン #1-4(1985)
そして遂に獲得した3度目の正直でロケット主役のミニシリーズ。作者は勿論ビル・マントロさん。

 

2度目の登場時に描かれたハーフワールドの真相が描かれてるのですが、これがちょっとビックリする。「ソード・イン・ザ・スター」で、この人SF好きなんだろうなと思いましたが、ストーリー・設定がものすご~くSFしてて、明かされた真相に素直に驚かされました。

 

しゃべる動物、無気力で人間味があまり感じられずに退化したように見える人間、自立したAIで独自の行動をするおもちゃと呼ばれる機械。

 

セイシンカイの残した記録にこの惑星の真実が隠されているとされているのだが・・・。
私はてっきり精神世界みたいなもので、ロケットとかも実は精神体なだけで実は普通の人間だったとかいうオチかな?とか思って読んでたのですが、なんとこれがセイシンカイ=精神科医だった。精神科医の残した記録がこの惑星の真実を物語ると。おいおい。

 

なるほど、人間がカッコーズとか呼ばれてたり(映画「カッコーの巣の上で」と同じだったか)城がサナトリウム(=療養所)とか呼ばれてたのはそれか。

 

実はこのハーフワールドと呼ばれる惑星は隔離された精神病院惑星で、精神科医はAIに治療を任せて逃げてしまった。動物は精神病患者を和ませ癒す効果がある為、可愛い動物を遺伝子改造して言葉を話せるようにして患者の世話をさせていると。AIロボットも表層上はおもちゃを装っているというとんでもない設定。なんだこのとんでもないSFは。

可愛い動物キャラかと思いきや、というオチにビックリしました。面白い。

 

因みに後に自作「ヘルボーイ」で有名になるマイク・ミニョーラが若手時代にアートを手掛けた作品でもあります。表紙みたいな陰影や太い線で独特の描き方はまだここでは見られませんが、人間よりもモンスターを描きたいミニョーラにとっては楽しく描けた思い入れのある作品だそうです。

 

ついでにこのハーフワールドで人間(精神病患者)が使ってる通貨が「どうぶつビスケット」だったりするのですが、どうぶつビスケッツと言えば誰がどう考えても「けものフレンズ」です。人間も「たーのしー」とか言ってるし、ああこれは翻訳者の御代しおり先生の遊び心だな、と微笑ましく読んでたのですが、ん?この邦訳本が出たのが2014年。けもフレアニメが2017年。元ネタのアプリゲーの時点でも2015年。どゆこと?

 

何か元ネタがあるんでしょうか?それかけもフレがこれを参考にしたの?謎は深まるばかりです。そうか、ジャパリパークは実はハーフワールドだったのか。


■アナイレーターズ #1-4(2011)
ここから先は残念ながらビル・マントロさんではなく、2008年の新生ガーディアンズでロケットを一躍人気者にしてくれたダン・アブネット&アンディ・ラニングが担当。

 

コズミック系のミニシリーズ「アナイアレーターズ」に収録されていたバックアップストーリーのロケット&グルートの話の部分のみの収録。本来は「ロケット・ラクーン&グルート」として単発で発行される予定だったミニシリーズを諸事情により同時収録という形になった、との事。結果的にこうして予定通りのタイトルで単行本として発売される事になったのでそれは良しとしましょう。

 

ガーディアンズを襲った悲劇によりチームは解散。生き残ったメンバーはそれぞれに元の生活に戻った、という流れで始まります。

 

自分は所詮ヒーローの器ではなかったとロケットは普通に会社務めを始めたものの、トラブルに巻き込まれてしまう。その背景にある陰謀に立ち向かう為、唯一無二の親友であるグルートと合流。そして舞台は故郷であるハーフワールドへ!


前述の「ロケット・ラクーン#1-4」(1985)で描かれた物語のその後、そしてさらに深い真相に立ち向かう!というクラクラするような話。26年も前、ハルク誌からだと30年も前のネタを拾ってくるというアメコミらしいぶっ飛び具合が凄い。「マーベル怪獣大進撃」もそうでしたが、歴史のあるアメコミらしい部分です。

 

キン肉マン」の今やってる新シリーズも昔のネタをガンガン拾ってきてて、そこが凄く面白いのですが、アメコミではそれが日常茶飯事。

 

帯に書いてある「モフモフなマーベル」って結構詐欺だなとか思ってたのですが、最後に出ました。かわいい着ぐるみを着せられるロケット。

故郷を後にし、スターロードの意思を継ぎガーディアンズの再建を誓うロケット&グルートと最後はカッコ良く決めてくれます。

 
■アナイレーターズ:アースフォール#1-4(2011-12)
こちらは1話4ページの普通のバックアップストーリー。あくまでギャグテイストのおまけっぽい感じ。

古参の日本語版アメコミファン的には懐かしいモジョーバースが登場。

 

という事で以上「ロケット・ラクーン&グルート」でした。初心者には素直にオススメしにくい感じですが、50年もの歴史を横断するアメコミの奥深さを味わえる一冊です。

 

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