SPIDER-MEN
著:ブライアン・マイケル・ベンディス(作) サラ・ビチェッリ(画)
刊:MARVEL 小学館集英社プロダクション ShoProBooks
アメコミ 2018年
収録:SPIDER-MEN #1-5(2012)
☆☆☆★
ピーター・パーカー×マイルス・モラレス
異なる次元(バース)のスパイダーマンたちが邂逅
2012年のミニシリーズで正史世界アース616のスパイダーマンとアルティメットユニバース版マイルススパイダーマンの共演作。
アニメ映画の「スパイダーバース」は勿論、原作の方で展開された「スパイダーバース」も2015年なので、それより先で、正史世界とアルティメット世界の初のクロスオーバー作。
2000年にスタートしたアルティメットユニバースですが、(「アルティメット・アベンジャーズ」の記事でも少し触れてますので参考までに)当初は他の世界とはクロスさせないと断言していたシリーズでしたが10年間は初志貫徹を守りながら、この作品でそれが解禁。
クロスオーバーは、それだからこその面白さはあるものの、初心者にはちょっとわかりにくい部分もありますし、完全に仕切り直して新しい読者に向けた過去を知らなくても楽しめる作品としてスタートしましたが、10年も経てば結局また初心者おいてけぼりになってしまう部分はあったのでしょう。
スパイダーマンも2代目としてマイルス・モラレス君がデビューを飾り、アルティメットユニバースとしても変化が必要になってきた時代だった、という感じでしょうかね。
結局は2015年のクロスオーバー作「シークレットウォーズ」において正史世界とアルティメット世界も統合、マイルス君も正史世界の住人となり、波乱万丈な人生を歩んでいく事になりますが、この作品の時点においては、アルティメット世界に正史世界のスパイダーマンが迷い込むという形でストーリー上はアルティメットユニバースの時間軸になります。
因みにこれ、解説書がものすごく充実してます。アルティメットユニバースの最初から最後までの基本的な流れとマイルス君の初登場から今に至るまでの流れがほぼ網羅されてて凄い。
解説書の濃さはヴィレッジブックスの方から出てる作品の方が基本的には充実してて、小プロは少し物足りなく感じる事が多いですが、今回のはとても良い。ちょっとした調べ物をする時にも役に立ちそうです。
で、お話の方ですが、映画版「スパイダーバース」に通じる部分もあって、本物では無いにせよ、決してまったくの別人とも言い切れない別世界における同じ存在。もう死別して二度と会えないと思っていた人との再会のシーンなんかがグッと来ます。
アルティメット版メイおばさん、グエンと正史ピーターが出会う。姿形は似ているけれど、だって本物ではないんでしょう?と最初は距離を置くし素直には受け止められないけれど、例え別世界だとしてもその本質みたいな所で、別の世界でも自分が愛した存在と同じ魂を持った存在なのだと、思わず涙してしまう姿にグッと来て泣きそうになりました。
メイ「ベンは今も…?」
ピーター「いえ、でも…全ては彼の為なんです。力があるのに僕はおじさんを救えなかった。僕がこの道を選んだのは、彼の教えを守るためです。大いなる力には…」
メイ「…大いなる責任が伴う」
ピーター「ええ」
メイ「あの子と同じね、ピーター」
失ってしまった存在と再び会えたら、ねぇ?
そこはモラレス君も同じで、意思を引き継ぐ決意をした当人に、自分の事を認めてくれるのかな?みたいな心配をしてる姿が可愛いし、ラストの別れもまたいいです。
逆に、別次元の自分はどんな奴だった?みたいなアルティメッツの面々が興味深々で聞いてくる辺りも面白い。特にトニーの反応がいちいち面白いです。基本的にアルティメットユニバースのキャラは性格がひねくれてる奴らがとても多いので(そこが正史世界との違いを生んで面白味の一つにもなっているんでしょうけど)結構新鮮に読めます。
映画版「スパイダーバース」は原作版「スパイダーバース」のタイトルやキャラを拾ってますが、ドラマの作り方は割とこれを参考にしてたりするのかも?ストーリーそのものは全部違いますけれど。
元凶のミステリオを捕まえて、とりあえずピーターは正史世界へ帰還。そういえば自分の世界にもマイルス君っているのかな?という所で、シークレットウォーズでの世界統合を経て、続編の「スパイダーメンII」に続く。
関連記事