僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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ワスプ 1

ワスプ 1

THE UNSTOPPABLE WASP:UNLIMITED: FIX EVERYTHING
著:ジェレミー・ウィットリー(ライター)グリヒル(アーティスト)
刊:MARVEL ヴィレッジブックス
アメコミ 2020年
収録:THE UNSTOPPABLE WASP Vol.2 #1-5(2018-19)
☆☆☆☆

 

ハンク・ピムの娘ナディア登場!
マーベル×理系女子
天才少女達が科学の力で明日を掴む新感覚コミック!

 

マーベル新刊。「アンストッパブル・ワスプ」の第2シリーズ。ストーリー的には全8話で完結している第1シリーズから読みたかった所ですが、今回はアートが日本人アーティストのグリヒルですので、その辺りの入りやすさから、というのが理由でしょうか。装丁がパステルカラーで「ミズ・マーベル」「グエンプール」「スクイレルガール」辺りのマーベル新世代ヒロインシリーズと合わせた感じ。

 

作中でも2話目で出ますが、チャンピオンズのアイアンハート、ヴィヴ・ビジョン辺りも含め、新世代のガールズヒーロー率の高さ。このワスプでも女性の地位向上を目的としてG.I.R.Lという女性科学者を集めたラボを設立。

 

この辺が近年のポリティカル・コレクトネス、LGBT、ガールズエンパワーメントとかに気を使って「今の時代はこういうの必要なんでしょ?」みたいな気の使い方ではなく、もしかしたら切っ掛けはそこかもしれないけど、そこに本気で取り組むセンスが、ものすご~~くマーベルっぽい。


巻末に、実際に社会で活躍している女性の科学者とか数人にインタビューしてある辺りが本気度を感じるし、内容的にもこういうコミックがきっかけで科学に興味を持ってその道に進んでくれる女性が増えてほしい的な事を皆言ってるのは凄くマーベル的だなあと思う。

 

「ミズ・マーベル」の時も、9.11以降迫害され誤解されがちなムスリムの文化をもっと理解してほしいと、その文化背景を持つ人を原作者に持ってきて、ムスリムの女の子を新世代ヒーローとして描く、という事をやっていましたが、そういう挑戦こそがマーベルらしさ、と私は思う。

 

で、2代目ワスプとなるナディア・ヴァン・ダインの登場背景もまた面白くって、MCU映画でホープとして登場するハンク・ピムの娘をアレンジして逆輸入。
元々あったあまり拾われなかったマイナー設定を掘り起こしてきて、原作にもハンク・ピムには実は娘が居た、ナディアはロシア語で希望の意味なので、MCUにおけるホープは原作ではこのナディアですよ、という配置。

ブラック・ウィドウと同じくレッドルーム出身というのも面白い上に、単純に普通にハンク(初代アントマン)とジャネット(初代ワスプ)との間の娘ですよ、とはしない所でそれぞれの関係性として新しいドラマも作れると。

 

更に面白いのは、ハンク・ピムが長い歴史の中で精神的に不安定というのがキャラクター付けされていったものをナディアも受け継いでいるという点。しかもその不安定な精神状態を描くのに、実際に精神科医の監修を付けてリアルに描くと言う気合いの入れよう。

 

読む前は、単純に新世代ガールズヒーローが増えたから今度は理系とかの色づけしようか程度なのかな、と思ってたらそれをここまでガッツリ掘り下げて描いてあるとは思いもしませんでした。前髪パッツンがかわいいな、グリヒルの絵も可愛いし、これは好きになりそうなキャラ!とか思って読んだら結構どんより、みたいな感じでしたけど。でもそこが凄くマーベルっぽいし、素直に次巻も楽しみ。

 

徹底的に女性キャラが中心で、保護者のジャネットは勿論、モッキンバードも似た立場で登場するし、警備員の女子プロレスラーのコンビ、敵にもタスクマスターの娘とか居て面白いし、やっぱりグリヒルのアートは日本人的には物凄く読みやすいのも凄く大きい。ナディアがモコモコのスリッパ履いてたり、私服もフリルのついた可愛い感じだったりと、その辺はグリヒルのセンスだろうし、そんな見た目の可愛さがありつつ、ドラマが結構複雑で、アメコミらしくもある。


今のアメコミを存分に感じられるマーベルらしい一冊でした。

 

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