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機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ弐

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ弐(1) (角川コミックス・エース)

MOBILE SUIT GUNDAM IRON-BLOOD ORPHANS

漫画:礒部一真
刊:角川書店 角川コミックス・エース 全4巻 2017-18年
☆☆☆☆★

 

鉄血のオルフェンズ」2期のコミカライズ版。
1期は半年分のTVシリーズの内容を1年かけて描いていましたが、そこは2期の開始をTVに合わせるという事情がありました。細かい部分は割と端折らざるを得ない分、話がどうしても急ぎ足の形になってましたが、2期はTVシリーズの終了後もコミカライズ版独自のペースで展開して、半年分を2年かけてやるという形です。

 

ペース的に余裕があるのと、先に映像で観た上でコミカライズに落とし込めるという理由もありますし、初めての連載作品からスタートして時間も経てば、画力や構成力も上がってくるという作者の成長や努力に恵まれ、TVシリーズとほぼ遜色が無いくらいにまで仕上がってきました。うん、これメチャメチャ良いです。

 

一期の時は、絵もちょっと自信無さげなカットがちょこちょこあって、読む時にも結構なノイズになってたのですが、2期まで来ると、ちゃんと自分の絵として物にしてる感じがメチャメチャ伝わってきました。作者が自身をもって堂々と描いているのが心地良い。逆に今度は気合い入りすぎて、ちょっとテンション上げすぎ、と思えるシーンがあったくらいです。

 

変に駆け足なペースになったりする事も無く、「ガンダムのコミカライズ版」としてはかなり上質なものになったんじゃないかと。後から言ったって仕方無いけど、こうなると1期の方が凄く勿体無い。

 

コミカライズとして元作品との差異を楽しむ、みたいなちょっと斜め読みをする必要も無いくらいに普通にオルフェンズを再見した感じで楽しめましたので、漫画版としてどうこうじゃなく、普通にオルフェンズ2期についてちょっと語っておきます。

 

まず「オルフェンズ」ってコンセプトが面白いんですよね。元になってるのが「仁義なき戦い」とかのヤクザ映画。

 

これはどっから出てきたんだっけかな?監督の長井さんなのか、脚本の岡田マリーさんなのか、それともプロデューサーが最初にそういうコンセプトを掲げたのか、その辺りはアニメの方のムック本を1冊読んだくらいなので忘れてしまいましたが、その部分だけでもオルフェンズは相当に特異な作品かと思われます。

 

だって、例えばですよ?もしあなたが(自分が)新しいガンダム作れって言われたら、まずどういう感じの戦争を描こうかな?なんて考えから始めたりしません?


「W」とか「種」とか「OO」なんかはそういう感じですよね。「AGE」もそういう要素はありつつも、あれは「ガンダムはファーストから逆シャアぐらいまでの歴史を積み重ねていく感じが面白いし魅力だから、1つの作品内でそれをやってしまおう。そうすれば今までのガンダム見て無い子供に絶対受けるから」みたいなコンセプトが露骨にありますよね?

 

「X」がちょっと変わってて、いつまでもガンダムばっか作らされてるけど、そもそもじゃあガンダムって何なのよ?作り手にとってガンダムって何?受け手にとってガンダムって何?というメタ構造をそのまま作品にしてしまうという面白いコンセプトでした。

 

「オルフェンズ」に一番近いのはやっぱり「Gガンダム」で、あれはスト2とか対戦格闘ゲーム流行ってるから、それをガンダムでやれと、そういう作品でした。違うジャンルのものをガンダムに落とし込むというコンセプトの作品。「オルフェンズは」ガンダムで「仁義なき戦い」をやってしまおうという、別ジャンルとのミックス作品ですし、そこが他の作品とは違う独自のカラーが出せた作品だと思います。

 

戦争っていう観点で考えると「仁義なき戦い」って、あれ戦後の話なんですよね。友達とも話した事があるのですが、広島の「呉」という所が舞台なので、「この世界の片隅に」と「仁義なき戦い」って、あれ直で繋がってて、そういうとこがやたら面白く観れるんだよね、みたいな話をした事があります。

 

戦後の混迷の時期をヤクザ達が伸し上がって行くも、内部抗争とかでやたら人が死んでいく映画でしたが、オルフェンズも2期になると、テイワズギャラルホルンの内部抗争が話の軸になって行きます。

 

オルフェンズ1期だとまだ「地球にクーデリアを連れていく」という明確なクエストみたいなものがあって、ある種の単純でわかりやすい旅物・冒険譚としても見れなくもなかったと思うのですが、2期になるとそういう物語の目的や終着点みたいなものが見えなくなる作りになってます。そうするとますます話が「仁義なき戦い」っぽくなってきて、その辺りが凄く面白く読める(見れる)。

 

私はヤクザ物とか苦手で、ああいうアウトローをカッコいい存在とかにしちゃうのは今でも嫌悪感があるくらいなので、「仁義なき戦い」とかも全然見た事が無かったのですが、マクガイヤーチャンネルでオルフェンズの元ネタとしてその辺りを解説してるのを見て、じゃあ有名な映画でもあるし一度見ておくかと、近年になってからオルフェンズよりも後に「仁義なき戦い」を見てみました(1と2しか見てないけど)。うん、これは確かにそのままだと。

 


マクガイヤーゼミ 第28回「実録SFヤクザ映画としての『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』」

 

バラエティーで使われすぎて、ギャグにしか見えなかったあの人が死ぬたびに出てくるジングルみたいな音楽とテロップみたいなのがあればますますそれっぽくなるでしょう。(そういうMADありそうだけど)


田中邦衛みたいな長いものに巻かれる嫌な奴を鉄華団に入れなかったのが岡田マリーかなぁとか思っちゃいますけども。(多分マクギリスについてたトドだったっけ?あのおっさんがそのポジションかなとは思うけど)

 

ただ勿論、そのままをやるのが正しいわけじゃなくて、ヤクザの仁義うんぬんをちゃんと今風のアニメ作品に落とし込んでいるのがオルフェンズの面白い所だなと私は思うんです。ヤクザを男達のホモソーシャル的な世界として見ている事が凄く面白いと言うか。

 

ストレートには表現してませんよ。シノとヤマギの関係みたいなのは、今の多様なジェンダー要素に合わせただけだと思いますし、男の友情とか関係性とか言うと、それも何か違うかなという気がしてしまうので、ブロマンス物と言うのがこういうのなのかな?上手い言い方がわかりませんが(スミマセン語彙足りてませんね)、クーデリアだったかな?アトラだったかどっちか定かではありませんが、劇中で三日月とオルガが二人で話してる所を遠目に見て、「あの二人の間には入れないな」っていうシーンがあって、岡田麿里が一番描きたかったのってそこだと思うんですよね。

 

そこをロジックでドラマにしてしまうとガエリオとマクギリスになるし(ここも面白かったですけどね)、同性のクーデリアとアトラになると、とたんに子供っぽい感じに描かざるをえなくなってしまう。

 

腐女子的視点っていうとまたそれともちょっと違うのかなと思いますが、ヤクザ映画を見て、男の世界ってこういうのなの?これ面白いよ的に感じて、そこをガンダム或いは、今時のアニメの文脈に持ってくるというセンス。そこが抜群に面白いと思うし、単純に実弾メインでビームは特例以外には出さないみたいな世界観の構築だけでなく、そういう違うジャンルの面白さを持ってきている所がオルフェンズの他の作品には無い個性なんじゃないかと私は思うのです。

 

これ、今の時代には結構有効で、例えばMCUで言えば「ウインターソルジャー」。昔あったポリティカルサスペンスの文脈を今流行りのスーパーヒーロー物の中でやってしまう、みたいな事で、新しさとジャンルの底上げをやったわけですよね。そういうのと通じるものがある。

 

そういう意味ではヒットしたとは言え無さそうなものの「ガンダム」と「オンラインゲーム」の面白さをミックスさせようとした「ビルドダイバーズ」なんかも、ジャンルミックスの面白さを狙った作品という意味では共通してますよね。その辺の話は間もなく最終回を迎える「リライズ」の時にでもやろうかな。

 

とまあ、漫画版ではなく、普通にオルフェンズそのものの話をしたくなってしまうくらい、良い感じに仕上がってる作品で、素直に凄く面白かった。

 

一つだけ難点を上げるとしたら、オルガの最後。
「止まるんじゃねぇぞ」をそんな決めゼリフみたいに言われても、そこは流石に違和感がメチャメチャありました。多分、ネットで散々ネタにされたのに乗ってしまったとかではなくて、描いてる内に作者としては気持ちが入りすぎてしまって、モノローグ的な処理ではなく、オルガが皆に伝えたかった事とか、意志みたいな形にしたくなっちゃったのかなぁ?という気はします。漫画だと「フリージア」重ねられないしね。

 

そこだけは、ん?となってしまいましたが、アニメとは違う形でオルフェンズを振りかえるのには、とても良いコミカライズ作品になってますので、好きな方は読んで損はしないと思います。

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ弐(4) (角川コミックス・エース)

 


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