僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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TENET テネット


映画『TENET テネット』本予告 2020年9月18日(金)公開

原題:TENET
監督・脚本・制作:クリストファー・ノーラン
アメリカ・イギリス合作映画 2020年
☆☆☆★

 

<ストーリー>
「その言葉の使い方次第で、未来が決まる」――主人公に課せられたミッションは、人類がずっと信じ続けてきた現在から未来に進む〈時間のルール〉から脱出すること。
時間に隠された衝撃の秘密を解き明かし、第三次世界大戦を止めるのだ。
ミッションのキーワードは〈TENET(テネット)〉。
突然、国家を揺るがす巨大な任務に巻き込まれた名もなき男(ジョン・デイビット・ワシントン)とその相棒(ロバート・パティンソン)は、任務を遂行する事が出来るのか!?


という事で話題の「テネット」見て来ました。
まず最初に言っておきますが、私はクリストファー・ノーランは「ダンケルク」だけ見てないかな?あとは確か全部見た気がしますが、あまり好きな監督じゃあありません。

 

理由は二つ。
まずは一つ目。「ダークナイト」確かに良かったけど、あの時散々言われたのが「アメコミの枠を超えた」みたいな言い方。アメコミとか子供っぽいしバカっぽいけど、「ダークナイト」だけは他のアメコミ映画と違うんだよ、的な空気が昔からアメコミ好きな私には最高に嫌でした。レンタル開始時はゲオだかツタヤだかのポップとかにもこれ書いてあって、ますますイラっと来ました。いや確かに「ダークナイト」は面白かったよ。アメコミ映画の中ではこれまでにないくらいの傑作だったのもわかる。

でも「アメコミ」の原作ってダークナイトより深くて凄い傑作なんていくらでもあるし、その面白さや良さをなかなか映画では表現しきれていないだけだったのに、ノーラン版「ダークナイト」だけが幼稚なアメコミをここまで面白い映画にしたんだよね的な空気が世にはびこっていて、それが最高に嫌でした。

 

うん、それノーランがどうこうじゃなく世間の反応や扱い方の問題。別にノーラン悪いわけじゃないのにとんだとばっちりです。ただの普段アメコミ読んでないくせにアメコミの枠とか語ってんじゃねえよって怒りです。

 

そして二つ目。実際は「インセプション」くらいしか当てはまらないのかな?「メメント」とか「インターステラー」はどうだったか忘れましたが、「インセプション」って夢の中の話で、あの映画の中のルールみたいなものが序盤で提示される。でも後半で、実はこんな事も出来るんだよね、的な所でオチをつけた作品だったはず。(劇場で1度しか見てないので間違ってたらゴメンなさい)そこで、ノーラン作品は私には合わないなって決定的に思ったのでした。

 

夢の中って何でもありですよ。でもそれを言ったら収拾のつけようが無くなるからこの映画の夢の中ではこういうルールなんだって提示してるのに、自分で後から実はこんな事も出来ましたって後付けルールみたいなのやっちゃうのは本末転倒だろうと。(確か「デスノート」の漫画でも詳しくは憶えてないけど、後付けルールみたいなのやってませんでしたっけ読んでてこりゃダメだなとそこで萎えた記憶が)


最初にルールが提示されるからこそ、見てる方はそのルールの中でどうやって困難を解決していくかを想像して見てるはずなのに、夢の中なら何でもありとか言っちゃうなら最初からルールとか言いわけじみた事提示すんなよ?と思えてしまってダメでした。

 

私も昔は自分の夢の中で、これは夢なんだと自覚する事が出来たので、その中でこれは夢の世界なんだから何やったって問題無いだろうと凄く自由に何でも出来たんですよね。それはもう他人に言えないような事まで含めて。そういう体験があったからこそ、「インセプション」は凄~~~く萎えた。

 

これ、ノーランの「俺ルール」やってるだけじゃん。そりゃあんたが考えたんだからそれがお前のルールなんだろうし、当人は面白いんだろうけど、他人から見たら共有できるルールではないんじゃないの?と思ったわけです。

 

そういう視点で見るとね、「インターステラー」もノーランの俺ルール映画としてしか見られなくなる。ノーランも恐らくそれは自覚しているからこそ、最新の科学考証とか持ってきて、ホラ今はこういう風に理屈も証明されていて、そこに合わせてやってるんだよ、ただの俺ルールだけじゃないってわかるでしょ?という事をやってる。

 

でも、あのヘンテコな4次元世界とか、ノーランの妄想世界でしかないよなぁと。それはそれで良いと思うし、科学考証とか無しでファンタジーなら笑って面白いビジュアルだしこれは良いなと思えるんだけど、何故かノーランはそこに必死にリアリズムを組み込もうとする。

 

いや、それお前の俺ルールでしょ、お前の頭の中の世界でしょ?と言うと、「違うんですちゃんと現実での最新の考証に基づいたものだから夢やファンタジーじゃないです」え~またまた~、みたいなの繰り返し。そこが私がノーラン合わないと思ってる要因です。

なんだよ現実主義って。なんとなくリアリティがあるように思えるくらいの設定で十分じゃん。どうせ作りものの話なんだし、というのが私です。

 

というのがクソ長い前置きでようやくここから映画「テネット」の感想です。

 

うん、凄く面白かったよ。でもやっぱりノーラン映画は俺ルールだよな?荒唐無稽な設定を無理矢理にリアルな設定とかで補強しようとしてるけど、あの不思議なビジュアルを思いついてやりたいだけだろうと。

 

タイムリープって、どうしてもその時点にタイムマシンなり何かしらの装置を使って一気に飛ぶというものしか無かったけど、逆回転でビデオの巻き戻しみたいになるとか(お前は「スーパーマン」1作目か!)面白いし、何よりそこを逆行していく姿が超絶に斬新。これは今まで見た事無いもので面白かった。

 

時間が前に進む中で、逆に進むってどういう事なのか?作中ではエントロピーの法則とか言ってたけど、リアルに考えたら空気の消費とかはどうなってんだろうね?に対して律儀に酸素マスク無いと息出来ないとかやっちゃうセンス。

 

大きいタイムパラドクスはこれまでのタイムリープ物とかでは色々な理由付けとかされてきましたが、酸素まで気を使うなんて多分誰も考えてこなかった部分ですよね?それを現実主義のノーランが気になって、息も吸えなくなるはずだとこういうビジュアルとして描いてきたのは凄く斬新。

 

どうでしょうねこれ?絶対この作品の理論をベースにしたフォロワー作品はこの先生まれてくると思うんですが(そういう作品を作っただけでも凄い)果たしてそれが主流になるのでしょうか?

 

基本的に今の主流のタイムリープ物って、過去に遡ると分岐する並行世界が生まれるっていうのがほとんどですよね。

 

例えば未来の核戦争みたいなものを防ぎたくて、過去に遡って原因となるものを変えてしまっても、本人がいた核戦争で破滅する未来は変えられないけど、核戦争に至らない別の世界が生まれる、みたいな感じ。(マーベルユニバースも基本これですし)

 

でもこのテネットはタイムマシンで「飛ぶ」のではなく、謎の回転ドアを使って地続きで戻るので、並列世界ではなくそのままの世界。そこが他の作品では見られない新しさ。

 

シュタインズゲート」だと主人公がリーディングシュタイナー能力を持つ「観測者」として特異点になってましたが、テネットのの設定だと誰でもその観測者になれる。(つってもシュタゲも劇場版のクリスの設定がちょっと曖昧でしたが)

 

あの回転ドアのシュールなビジュアルとか、(死にかけてるヒロインの致命傷は治るけど傷は残るってのはちょっと私には理解できなかった)そもそも未来からもたらされた技術なら、何年後から戻ってきたの?例えば30年後だとしたら、その人は30年分時間を逆走してきたの?とかよくわかんない部分はあるにせよ、面白い部分でした。

 

映画では主人公が観測者になる事で、あの世界を定着させているんだと思うんだけど、多分それは時間の流れ方が一人一人違うというか、「我思う、故に我あり」みたいな世界なわけですよね。

 

銃口に戻る弾丸とか、あれは弾丸に流れている時間のみを逆行させている(作中で言うとエントロピーの逆流)からああいう事が出来るのであって(ちょっと「ジョジョの奇妙な冒険」っぽかった)多分、人なり物なり全て別々の時間の流れなりエントロピーの流れがある。

 

終盤のアクションシーンの見せ場の10分進む班と10分戻る班のとことか、正直何がおきてるのかさっぱりわかんなかったし、そういうシチュエーションだからこその面白さが微妙に伝わってこなかった気がしますが(あのお守りでそれを見せてたんだろうとは思うけど、見てる間は頭の中で整理しきれなかった)それでも十分に面白いと思えたので、それなりに満足は出来たのでした。

 

タイムリープ物の映画だと、私いつも言ってる気がしますが、それでもやっぱり「シュタインズゲート」って凄かったんだなぁと毎回思う。凄いと言うだけでどこがは書いてなかった気がするんですけど、具体的に言うと、最後の確定事項のノルマを達成した上で未来を変えるって部分の事です。


この世界の定理そのもの、あるいは神という観測者さえも見抜けない盲点を突く、という所まで描いてあるのが凄いんだと。あれは今までのタイムリープのパラドクスを覆してしまう最も面白い部分だと思ってます。

 

そういう物に対して、また別の新しい理論を提示してきたな、っていうのが「テネット」だったと思うのですが、作中で途中ちょっと言ってるんですよね。タイムパラドクスは起きないのか?それは実際の所わからない。でもあいつらは起きないと信じてる、みたいなの。

 

なんかそれが結局ノーランだなぁと思いました。今回の映画で考え抜いた理屈ならタイムパラドクスは起きないし、間違ってないはず。え?それホント?少なくとも自分はそう思ってるよ、的な。う~ん、やっぱり「インターステラー」に続いて俺ルールだった気はします。面白かったけど、やっぱりそこはちょっとひっかかる。

 

ノーラン好きじゃないのに、なんでわざわざ映画館に観に行くかと言うと、やっぱりそこは話題性があるから。単純に話題に乗ろうっていうミーハーな奴じゃなくて、今の時代、こうして監督の名前で話題になる作品ってやっぱり少ないじゃないですか。

 

私はアメコミ好きだし、アメコミヒーロー映画ばっか観ててもそれはそれで幸せなのですが、同時に普通に映画ファンでもあるので、そればっかりになっちゃうのはどうなの?っていう危惧はやっぱりある。

 

レンタル店の棚のランキングみたいなの眺めてても、おお~ヒーロー映画いっぱい入ってて嬉しい!という気持ちもありつつ、いやジャンルの一つとして栄えてくれるのは本当にありがたいんだけど、他にも面白い映画いっぱいあるよね?そういうのが注目されないのはちょっと残念だなぁという気持ちもあるわけです。

 

そんな感覚で居るので「あのクリストファー・ノーランの新作映画!」みたいなクリエイターの名前で盛り上がってくれるのはとても良い事だと思う。

 

そう言う意味で、自分が好きな作家ではないにせよ、盛り上がってくれるのは嬉しいし、今後もノーランには頑張ってほしい所です。

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