僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

見たもの読んだものなどの簡単な記録と感想のチラシ裏系ブログ

はりぼて


映画『はりぼて』予告編

監督:五百旗頭幸男、砂沢智史
ドキュメンタリー映画 日本 2020年
☆☆☆☆


<ストーリー>
2016年、チューリップテレビのスクープ報道により、「富山市議会のドン」といわれる自民党重鎮の不正が発覚した。これを皮切りに議員たちの不正が次々と判明し、半年間で14人もの議員が辞職する事態に。富山市議会はその反省をもとに厳しい条例を制定するが、3年半が経過した2020年には、議員たちは不正が発覚しても辞職せず居座るようになっていた。そんな議員たちを取材し、政治家の非常識な姿や滑稽さを目の当たりにしていく記者たちだったが……。

 

富山県、行った事無いな。山形からは新潟を挟んで長野とか富山に抜けられなくもないのですが、新潟がメチャメチャ長いので、実質東京行くよりも遠い。この辺りの事件の事も全く知りませんでしたが、予告でも面白そうでしたし、ドキュメンタリーは好きなジャンルなので見て来ました。

 

元はTVドキュメンタリーとして50分くらい纏めたものがあって、その後を40分くらい足して映画にしたもののようです。


「さよならTV」の東海テレビと違って、チューリップテレビドキュメンタリー映画はこれが初めての作品になるようです。昔からNHKのドキュメンタリーを長尺にして映画館でやるってたまにありましたけど、このスタイル面白いな。私はTVほぼ見ない人なので、こんな感じの物があればもっと見たいと思わせてくれます。

 

話題にならないと結局は消えちゃうんだろうけど、それでもTV放送よりは形として残りやすいですから。

 

で、その辺は映画の内容にも通じていて、TV番組として或いはニュース番組としては政治家の不正がニュースの取材で暴かれて、なし崩し的に14人も辞任、逮捕。そこまでは世論も盛り上がっていた。これぞジャーナリズムだと。

 

もう世の中って、人間って最低だなと思う。政治の腐敗に対して、ざまあみろと、正義の裁きが下って留飲を下げる。でもそれがここまでもう何人も続くと、それにすら飽きてしまう。それが当たり前になってしまう。こんなに多いと議会の面子は一新されて新しい風が吹く・・・かと思えば、また同じような流れが繰り返されてしまう。慣れと諦めと野次馬根性さえ風の如く流れてやがては興味を無くしてしまう市民。ここまで来ると議員も不正が発覚しても表面だけの謝罪で済ませて辞任さえしなくなってしまう。

 

市政のみにスポットライトが当たる作品ですが、これ、国政も全く同じですよね。もっと酷くて国政は謝罪すらしないか。適当にやってる感さえ出しておけば、例えスキャンダルがあったとしてもどうせ国民なんてすぐ忘れるし、芸能人のニュースとかで忘れちゃうでしょ?日本国民なんて政治の意味もわかって無いバカしかいない国なんだから、という意図を国会議員は隠す気も無い。だってそれでも騒ぐのなんか極一部で、それもすぐ風化しちゃうし、メディアは圧力かければ言いなりだしね。黒く塗りつぶされて何も分からない議事録で通ってしまう世の中。

 

う~ん、いいのかそれ?お役所もお役所なら、国民も国民じゃん。
何が「はりぼて」なのか?全部じゃん。

 

とある公園『カラスに餌を与えないで下さい』
「カラスは字読めないけどね、誰かが見てれば寄ってこなくなるから」

 

自分は違うよ、なんて言うつもりもない。この事件も知らなかったし、単純に映画だけ見てきっと知ったつもりになって、すぐに通り過ぎていってしまうのでしょう。お役人が頭をさげるのを見て、スカッとしてしまう自分の人間性を疑って、自分は最低な人間だな、なんて思うのはきっと一瞬だけ。

 

安部もトランプもザマ見ろとか思ってしまう自分。菅の最低な引き継ぎに苦言を呈しつつも、こうやって誰も読んで無いようなブログに今の気持ちだけを残して、忙しい日々に追われて生きる事だけで手いっぱいになってしまう明日の自分。

 


「さよならTV」の時も思ったんですけど、ドキュメンタリー映画でカメラを入れる時に、被写体から「何撮ってんだよ」って言われて、「TVの取材なので」って言えるのちょっと面白いですよね。そこはTVドキュメンタリーの強いとこだなぁと思いました。そこも含めてこの流れって結構可能性あるのでは。

 

で、後は何でもそうだけど、点で終わらせるだけじゃなく続けていく事だよね、と。昔からですけど、TVのニュースとかって、基本的に事件が起きた時に報道して、その後の顛末まで追う事なんてほとんどない。政治とかなら、その問題を受けて、その後どう変わったのか?の方が本当は大切なのに。

 

最後にこの作品の共同監督もされた片方の方が辞職して終わる。インタビューなんかを読むと、単純に報道が悪を裁いたみたいな作品にしちゃうのは違うと思ったから、的な事を言ってるんだけど、正直言えばそこの感情や葛藤はよくわからない。でも、そのわからなこそが本質であるのだとも思う。

 

人は単純化したものを求める。それはニュースも映画も同じ。わかったような気持ちになるから。本当はわからない事の方が重要なのに。もっとわかりやすくしろよ、じゃないと伝わらないだろう!

 

そうじゃない、わからないからこそ、これはどうなの?こういう事?違う?色々と想像や考えを張り巡らせる。正しさやわかりやすさだけが全てじゃ無い、そういう意味では映画としてとっても面白かった。

f:id:curez:20201004132142j:plain

 

関連記事

curez.hatenablog.com