映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』日本版予告編
原題:Booksmart
監督:オリヴィア・ワイルド
アメリカ映画 2019年
☆☆☆☆★
<ストーリー>
明日は卒業式。親友同士のモリーとエイミーは、高校生活の全てを勉学に費やし輝かしい進路を勝ちとった。ところが、パーティー三昧だった同級生たちも同じくらいハイレベルな進路を歩むことを知り驚愕。2人は失った時間を取り戻すべく、卒業パーティーに乗り込むことを決意する。
最新の青春映画の傑作、くらいの情報しか無かったのですが、気にはなってたので「ブックスマート」見て来ました。
ああ、こういう奴だったのか。予告編にも遭遇しなかったので予想してたのとちょっと違ってビックリ。うん、これは凄いわ。
ライムスター宇多丸のムービーウォッチメンでほぼ完璧な解説やってるのでこれ以上私が語る事が無い。
宇多丸『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』監督オリヴィア・ワイルド。主演ビーニー・フェルドスタイン。ムービーウォッチメン2020 08 28(金)放送
最初のリスナー投稿さんと同じような感じで、いわゆるガリ勉タイプの女の子が実はあいつらの事ちょっとバカにしてたけど、ああいうはっちゃけてる人達にもああいう人達なりの悩みや葛藤があるんだな、みたいなのを知る、くらいの感じかなぁと、まあ「ブレックファストクラブ」の現代版くらいかなと思って観に行ったのですが、実際そういう要素はあったりはするんだけど、この今時の時代性って言うのが本当に現代的。
いわゆるLGBTQが当たり前にある世界。
ええと、まず自分のスタンスから言うと、私は男性で女性が好きです。(とは言え、基本的には人嫌いなので、もしかしたらそれも違ってたりするのかも)そこはいわゆるノーマルなのかな?ただそういう「普通」みたいな言い方も今は好ましく無かったりするんでしたっけ?その辺に関する社会活動をしてる人と話をした事はあったりしますが、特に近しい人でLGBTQの当事者とかが居るわけでもないので、深くはよくわかりません。
ただ、今の世の中はそういった人達の事も世の中には一定数居て、これからの社会は差別や偏見みたいなものを無くしていかなければならない方向に動いている、みたいな事をなんとなく頭や理屈では理解している、くらいなのかなと思います。
作中で言えばご両親と似たようなぐらいの理解度とスタンスに近いのでしょうか。そうね、こういうのは別におかしい事ではないのよね、でもよくはわからないわ、みたいな感じ?
なので、割と単純に、LGBTとかが当たり前にある世界ってこんな風になるのかって結構ビックリしました。人種、性、容姿とかそれはその人のパーソナルなもの、その中のどれが正しいとかじゃなくて、全員正しいんだよ、と言える世界。実際の所、現実はまだここまで行っていないと思うのですが、将来的にはこうなるよ、こうなるべきだよね、みたいな事を描いてるわけですよね。
タイトルの「ブックスマート」って、頭でっかちというか、本とかで読んで頭では理解してるけど実際は体験してないのでそれは知識だけしかない、みたいな感じらしいのですが、そこが言い得て妙というか、この映画を見た所でそれはやっぱり頭での理解でしか無いとは思うのですが、それでも結構なカルチャーショックではありました。
割と私も、自分は自分、他人がどうこう言おうと関係無いし勝手に言わせておけばいいや、というタイプではあるものの半ば無理矢理の自己肯定(でもないか?)で、いくら自己肯定しようが他人に認められなきゃそれって世の中的には意味無いでしょ?という風には思ってたりして、やっぱりどこかで他人に認められたい承認欲求はあるものです。
でなきゃブログなんてわざわざやんないでしょ?というのもありますしね。基本的には防備録としてだったり、書く事で何かしらの得るものもあったり実際とても自分の中では手間な半面、メリットも大きいなと実感してたりしますけど、読んでもらった人に、こいつ面白い事考えてんな、なるほどこれは自分の視点にはなかったなとか言ってほしい欲は当然ありますもの。
映画の冒頭、いきなり自己啓発みたいな所から始まったりしましたが、彼女らもナチュラルにではなく、頑張って自己肯定してるのかな?みたいに思う所もありますが、それでもエイミーとモリーのコンビが、あんた最高じゃね?と二人で言い合ったりしてる所は、なるほどこれは良いな、と結構新鮮に感じる部分でした。
青春映画と言えば先日見て最高に面白かった「アルプススタンドのはしのほう」なんかでもそうでしたが、所謂運動部とかクラスでの人気者のグループとかとは私も程遠いタイプでしたので、クラスの多数が「ドリカム」とか「ブルーハーツ」とかに心酔してる端の方で一人「筋肉少女帯」こそが自分をわかってくれるものなんだ、っていう系譜の私ですので、好きな青春映画もオタクの自意識過剰系を描いた「ドニー・ダーコ」とか「ゴーストワールド」が好きだったりします。といってもそこも大人になってから見た奴で、実際に学生の頃は映画とかそんなに見て無かった。
昔のオタク特有の、俺はお前らの知らないこんな凄い作品を沢山知ってるんだぞ、俗な奴らと一緒にされてたまるか!系の自意識暴走ムーブを未だに引きずってたりもする恥ずかしいおじさんなのですが、この作品くらい、新しい価値観の新しい世代に向けた青春映画になると、変に自分を投影するような感じでも無く、そうかこれが今の時代、そしてこれからの価値観か、こういう風に時代の変化とともにいわゆるイケて無い系青春映画も変わって行くんだな、ととにかく新鮮でした。
アニメとかだと割と若いオタク層って増えてるようなイメージですが、これが映画ってなると割合はグッと少なくなる印象(あくまで印象論でデータはありません)何かの切っ掛けで、こういう作品、今の子にも届いてくれたらいいなぁと思います。これだけでなく、面白い映画はいっぱいありますしね。
時代の最先端、最新版の青春映画としてこれは歴史に残る1作になってると思います。
関連記事