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インフィニティ・ガントレット

インフィニティ・ガントレット (ShoPro Books)

INFINITY GAUNTLET
著:ジム・スターリン(作)
 ジョージ・ペレス、ロン・リム(画)
訳:堺三保
刊:MARVEL 小学館集英社プロダクション ShoProBooks
アメコミ 2017年
収録:INFINITY GAUNTLET #1-6(1991)
☆☆☆☆

土星の衛星タイタンで生まれた魔人サノスは、
ついに6つのインフィニティ・ジェムを手中に収め、
所有者に無限の力を与える
インフィニティ・ガントレットを作り上げた……。
多元宇宙における最強の存在と化した彼は、愛する”デス”の心を射止めるため、
全宇宙に死と破壊をもたらし始める。その暴挙を止めるため、
すべてのマーベル・ヒーローたちがその力を集結、サノスに立ち向かう!


という事で「アベンジャーズ/インフィニティウォー」の元ネタのこちら。
オールドファンにはカプコン対戦格闘ゲームマーヴルスーパーヒーローズ」の元ネタとしても馴染み深く、そこに合わせて当時刊行されていた日本語版アメコミ雑誌形式の「マーヴルクロス」でも全6回掲載されてました。今回読んだ本は映画に合わせて単行本で出た奴ですが、私はマーヴルクロスで読んでたので、それ以来ぶりです。

 

解説用紙がペラ1枚で、作品概要の説明のみで、キャラ解説とか一切無いのがなんとも残念。作品の内容が実はちょっと人を選ぶ感じで、誰が読んでも面白いっていう感じでは無いので、登場する膨大なキャラ解説が入ってるだけでも資料価値が出そうなものだけに、そこはとても惜しい。

 

実は最初に読んだ時も思ったのですが、地球側のメジャーなヒーロー、健闘むなしく途中で全滅しちゃうんですよねこれ。主人公的な立ち位置で仕切ってるのがアダム・ウォーロックというのも、当時は誰だこいつ?感じで、宇宙的存在のキャラとか出されても、え~こっちはウルヴァリンの活躍とか見たいんだけど、と当時は正直とても微妙な作品に思えました。

 

ヒーロー全滅とか、宇宙系の壮大な設定とかはアメコミって凄いなとは思ったものの、話はなぁ、という感じでしたけど、今読むとこれはこれで面白いです。

 

昔よりはアメコミ知識増えたのと、「インフィニティウォー」とは全然違う話ながら、その違う部分なんかを比較して逆に面白かったりと、普通に楽しめたりはしました。

 

サノスのキャラが映画とは全然違うんですよねこれ。映画だとサノスが世界を救う為に全ての人口を平等に半分減らすっていう所がヴィランの信念として評価されてましたけど、こっちのサノスは死そのもの擬人化的概念のデスの気を引きたいから、という変な理由。

 

サノス自身もタナトスとエロスという概念からサノスという名前になってたりするので(なのでエロスという兄弟も出てくる)インフィニティガントレットで無限の力を手に入れると、自分も死の象徴となったとして、死の女神デスを妃に迎えたい。

 

が!デスの方はガン無視。メフィストに唆されて、これくらいやればデスも振り向いてくれんじゃね?と生物の半分を消してしまうと。なんでデスは自分を愛してくれないのぉ?俺が欲しいのは愛なんだよ!と、傍から見たらなんだこいつっていうキャラです。しまいには、じゃあもういいわ無限の力があるんだから自分の理想の嫁を創造してしまえ!というサノスに似た容姿のテラクシアを作りだす。これがなかなかシュールです。

 

MCU「インフィニティウォー」だと、ソウルストーンを手に入れるとこで、娘のガモーラに、超ダセー!お前誰も愛して無いじゃん、これ積みってやつじゃね?ザマミロ!(意訳)って言われるとこが最高に良くって、結局はガモーラを本当に愛してた事がわかって悲劇になってしまいますけど、今回見直してて、あそこのシーンは凄く好きでした。原作サノスとは天と地ほど差があって、逆にこっちはこっちで比較として面白い。

 

そんなサノスはさておき、蹂躙される側にとってはとんでもない話で、なんとか地球のヒーローは消された半分でも集結してサノスに立ち向かうのですが、全能の力を手に入れたサノスの相手になるはずもなく、もはやこの世界の危機だと、世界各国の神々、そして永遠の存在であるエターナルズ、さらにその上位概念である天上人セレスティアルズまでもがサノスを止める為に動き出すも、無限の力を手に入れたサノスはそれ以上の存在になっていた、というインフレ感が凄い。

 

え?これもう倒せないんじゃないの?という絶望感はインフィニティウォーにも通じる部分があります。

 

で、面白いのが、過去のサノスの敗北も、実はサノス自身も無意識下で、自分が負ける要素を実はあえて残していた、というような部分。全能の神になろうとしたけど、実はどこかで自分はその器では無い事を知っていたのではないか?みたいになる。

 

「権力
 それは儚い。得るのは難しく、
 失うのは容易い。
 自分はそれを理解していると
 思っているときもあった。
 なんといううぬぼれか」

 

というラストにもっていくセンスが凄い。

 

全能の力を得ても結局は満たされなかった自分の心。畑を耕し、質素な暮らしを営む中で、どこか満足げな表情のサノスで締めくくり。

 

う~ん、何だこれ。これは名作!とかいうと違う感じだけどなんか凄い快作。大分上級者向けだなぁとは思うけど、結局は面白かった。

 

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