映画『UFO真相検証ファイルPart1/戦慄!宇宙人拉致事件の真実』予告編
原題:BEYOND THE SPECTRUM: BEING TAKEN
監督・制作・撮影:ダーシー・ウィアー
アメリカ映画 2018年
☆★
近年、世界中でUFOの目撃事例が激増し、また数多くのUFOアブダクション(宇宙人拉致事件)が 報告されている。この映画は宇宙人による拉致事件の 歴史を辿りながら具体的な実例を紹介し、実際の体験者たちの証言をはじめ各専門家の分析や 懐疑論者の反論まで、あらゆる視点から真実を検証する 戦慄のドキュメンタリーである。
「鬼滅の刃」が映画館の救世主となった今、誰にも注目されずひっそりと公開になった本作。危うく見逃す所でした。以前から鬼滅もこれだけ話題になってましたので、一応見ようかなとは思ってたのですが、結局TV版1話のみしか見て無い状態です。TVで特番やってたやつも普段からTV見ないのもあって、終わってから知りました。まあそっちは何時の日にか。
そんな感じで鬼滅がスクリーンを占拠してるので、いつも通ってる映画館では見たい奴が無いなぁと、次に近い場所にあるあまりいかないイオンシネマの方のラインナップを見てみると、何だこれ?しかも今週いっぱいまで。
一応予告だけチェックしてみようと見てみたものの、う~ん、正直つまんなそう。興味はあるもののスルーでいいか・・・と思っていたら何故か映画館に足を運んでいた。
そう、私はスクリーンにアブダクションされたのだ。
先日のマクガイヤーゼミ&メルマガの黒沢清回で黒沢監督のこんな言葉が紹介されていた。映画館で映画を見るというのは世界における自分の立ち位置を確認する行為なのだと。流行の映画を観に行って、同じ場面で笑い・泣き、自分は世間とずれていない事を確認したり、人が少ないアート映画を見て、自分はこの作品を理解しているんだとほくそ笑む。映画館とは、この世界の中であなたが何者なのかを確認する場所であるのだと。
今回、意図せずアブダクションされた私は、当然の如く世界でたった一人だった。
・・・意図せず、というのは当然虚言である。こんなもん誰も見に来ないだろうと思ったからこそ足を運んだのだ。こんなつまらなそうな誰も見ないであろうアブダクションドキュメンタリーをわざわざ観に行く自分でありたいからこそ足を運んだしだい。そういう意味ではやはり黒沢清の言葉は正しい。
今はTVではほとんどやらなくなったUFO特番。子供のころから好きで食い入るように見ていた私。「エリア51」「マジェスティックトゥエルブ」とかいう単語を聞くだけで今でも心がときめいてしまう。今風に言うとキラヤバ~な感じだ。
いつのまにか肯定派否定派のバラエティに置き換わり、年末特番からネット配信くらいにまで追いやられてしまった。それはそれで面白いんだけど、やっぱりこういうのはバラエティでなくシリアスにやってほしいのが本音。
そういう意味で今回の映画は真面目に作ってあるのは合格。タイトルに「パート1」とあるように、続けて公開される2部作で、前半のこちらはアブダクションのみに絞った内容。
UFO研究家がアブダクションされた人達の証言を、改めて検証していく、という内容。なんと、あのバーニー・ヒルの肉声を聞く事が出来る!すげぇ!
バーニー・ヒルとは誰か?UFO好きなら知らぬ者の居ない有名なヒル夫婦拉致事件の被害者である。UFOマニアの大槻ケンヂが書籍で何度もその名を出し、アルバム「レティクル座妄想」収録「飼い犬が手を噛むので」の歌詞にも出てくる。
一緒に拉致された奥さんのベティがその宇宙人にどこから来たのか尋ねると、星図を見せられ、そこは当時は明らかになっていなかったレチクル座ゼータ1・2を指示していた。彼らはレティクル座星人であったのか?といった所。
なんと今回は催眠療法でその記憶を探った時の音声テープを聞く事が出来る。
おお!やべぇ。テンション上がる。
が!そこでテンションマックスが来てしまった。何故かこのUFO研究家、実際にそのアブダクションの検証というより、延々とウィキペディアの検証をしはじめるのだ。
何度も何度も何度も何度も英語wikiのアブダクションのページが画面に映し出され、ここの部分はおかしい、とかこの反論には証拠が無いとか延々と語り続ける。これではUFO検証とかアブダクション検証ではなく、ウィキペディア検証と言う方が正しい。実は何とも珍しいウィキペディア映画なのである。こんな映画は見た事が無い。
論文を書く時、ウィキは信憑性に欠けるから引用不可ですよ、とこの人は教えてもらってこなかったのだろうか?
いや、そうではないはずだ。体験者の記憶にのみ頼り、曖昧な証言の中でしか語る事の出来ないUFOやアブダクション体験の実証と同様に、それは真実が記されているとつい思われがちだが、実は誰でも自由に編集の出来るウィキペディアと構造が同じではないのか?という仮説に基づく意図した作りだとしたらどうだろうか?
根拠を追求する事も無く、ある意味での共同幻想としてのウィキペディアとUFOは実はとても近いものであったのだ。これは、ウィキに頼り、本当かどうか曖昧な存在にいつのまにか支配されてしまったネット社会への危険性を危惧した宇宙からの我々人類への警告メッセージではないだろうか。
・・・っていう映画では無いな。間違いなく。
まあ、ある意味この理解しがたい珍妙な映画体験こそがアブダクションの真実であったとは言えなくもないです。
いやそもそも何でこんな変なものを映画館でやってるのよ?という話だけど、どう考えても、コロナ禍で新作映画がことごとく延期になってる中で、おいおい上映する作品足りないぞってなって、その困ってる映画館に対してこれはチャンスとばかりにイオンシネマ系列に配給会社がドサクサまぎれに売り込んだものなんじゃないかと思われます。
配給のTOCANAってとこ、今まで見た事無いとこだなと思って調べたら、オカルト系ニュースを扱うポータルサイトのようです。ネット上の「ムー」みたいな奴なのか。
ソフト化されても、こんなの置くとこまず稀でしょうし、配信サイトとかも権利料とかは当然払わなきゃいけないんでしょうから、そんなに長くは置いておかないと思います。恐らくは数年後には幻と化すでしょう。
ん?あれ?っそれってまるでUFOみたいじゃん。
そう、やはりこの映画を映画館で見る事はアブダクション体験であり、UFOに遭遇するようなもの。だから私は冷たい世間に白い目で見られようと、堂々とここに宣言するのだ。
私はUFO(のようなもの)を見た!と。
ああっ、来週公開のパート2が楽しみだ。