SECRET EMPIRE PRELUDE
著:リック・レメンダー、ニック・スペンサー(ライター)
ニック・クレイン、カルロス・バチェコ、スチュワート・インモネン
ヘスス・サイス、ダニエル・アクーナ、エンジェル・ウンズエタ、
マット・ヤッケイ、ポール・ルノー(アーティスト)
訳:秋友克也
刊:MARVEL ヴィレッジブックス
アメコミ 2020
収録:CAPTAIN AMERICA v7 #21 #25(2014)
AVENGERS STANDOFF:ASSAULT ON PLESANT HILL ALPHA #1(2016)
AVENGERS STANDOFF:ASSAULT ON PLESANT HILL OMEGA #1(2016)
CAPTAIN AMERICA:SAM WILSON #7-8(2016)
CAPTAIN AMERICA:STEVE ROGERS #1-2(2016)
☆☆☆☆
超人兵士血清を失い老人となったスティーブ・ロジャース
新たなキャプテン・アメリカを襲名するファルコン
ファルコンとウィンターソルジャーのコンビが誕生
平和な町「プレザント・ヒル」に隠された秘密とは
スティーブ・ロジャースの復活と…裏切り!?
ハイル・ハイドラ!
という事で「シークレット・エンパイア」編のプレリュードが出ました。
というか、「アベンジャース・スタンドオフ」編の前後にキャップが老化してしまう話と、復活した直後の話をセットでまとめた感じなので、次のシークレットエンパイア編の序章でありつつ、単品でも前々読める話でした。これだけでも十分に面白かった。
最初の2話だけ時系列的にちょっと前の話で、「アクシス」「シークレットウォーズ」ではちょこっと老化したキャップはとサムがキャプテンアメリカの名を引き継いだ姿ではもう出てましたので、その老化に至った話と引き継ぎが描かれた話が収録されてる感じです。
何だかんだと結局細かい所は解説書で読んだだけになりがちな邦訳アメコミですので、こうやってその話単体のみでも読めるのはとても嬉しい。アベンジャーズ新旧メンバー揃えた中での新キャプテン・アメリカのお披露目とかもなかなか感慨深いものがあります。バッキーの時もそうでしたけど、キャプテン・アメリカという存在は皆にとって必要なものなんだ、っていうのが良いです。
単純に個人の理由だけじゃ無く、象徴としてのキャプテンアメリカ。まあ、バッキーも以前に引き継いだ時は苦労したし、時間が飛んで次の話の時はスティーブとサムがもう微妙な距離を置くようになっちゃったっていうのも、間が無いと、え~っ?悲しいじゃんそれっていう感じではありますが。
で、その後の「アベンジャース・スタンドオフ」編が今回のメインの話で破壊されたコズミックキューブの破片が擬人化。何故かコービックという小さい女の子の姿で現れる。その現実改変能力をシールド長官マリア・ヒルが利用し、ヴィランを善良な市民の姿に変えてしまうと。
それは流石にあまりにも倫理を逸脱した行為だと、コマンダー・ロジャース、ウインターソルジャー、サムキャップがその行為を止めようと奔走する。
しかし、そのヒーロー側の軋轢の合間に、バロン・ジーモがヴィランを纏め上げ、反撃を開始。クロスボーンズと共に老人になったスティーブをボコボコに痛めつける姿は本当に痛々しいんだけど、ゴメン、ちょっとスカッとした。いや、私キャップ嫌いとかじゃなくて、思いっきりキャップ派の人なんだけど、ヴィラン側は今まで幾度となくボコボコにされてきた方ですしね、長年の恨み晴らしてやるぜ!っていう気持ちがちょっとわかる気がして、ちょっとだけ高揚してしまった。
ジーモの狡猾さ、老人でも決して手を抜かないラムロウと、ヴィランなりのカッコよさ(?)も描かれつつ、それでもやっぱり超人になる前からいくらやられても不屈の闘志で立ち上がってきたキャップとかをオーバーラップさせる演出が相まって、凄く良かった。
暗躍するレッドスカルもらしいし、キャップ系のヴィランじゃないけどクレイブンの優秀さとかも存分に生かされてて楽しい。スタンドオフ編の前の方の話にしか出てないけど、アーニム・ゾラも出てるし、「キャプテン・アメリカ」誌ならではの感じが凝縮されてる感じがして、物凄く面白かった。
面白いと言えば、今回、何故かギャグ描写(ユーモアセリフ)が多い。これ、MCUの影響とかなのかな?基本シリアスですが、何か本題に入る前にやたらと面白会話が入る。MCU関係で言えばセルヴィグ教授もMCUからコミックで逆輸入されて今回の話が初登場のようです。
何だかんだと事件は無事解決し、キャップも復活し、マリア・ヒルが更迭されつつ、最後の2話はエピローグ的な感じで、シールドからは距離を置いて独自のスタンスをとる事にしたスティーブ。フリースピリットとジャック・フラッグなるキャラと共に戦っていく事に。新キャラでは無いようですが、多分邦訳版では初登場。
星条旗コスチュームを身にまとい、なんかバットマンにおけるバットファミリーみたいな位置付けに見えます。バッキーとサム、シャロンもそうですし、前述の通り、キャプテン・アメリカ系列のアークヴィランも総登場な感じで、ただのプレリュードに留まらない、キャプテン・アメリカ誌ならではの面白さに溢れた一冊で、とても満足度は高いです。面白かった。
ああ、因みに「エンドゲーム」でも使われたキャップの「ハイル・ハイドラ」ですが、本国でもこれが刊行された時にリアルタイムで結構荒れたらしい事は耳にしてましたが、なんだこの時点でちゃんとコズミックキューブの影響でそういう風に改変された、というのは最初から明確にされてたのね。単純に実は元からこんな設定だったんだよ、みたいな後付け設定改変されたのかと思ってました。やっぱり実際に読んでみるもんですね。
あと、個人的に気になるのはカナの「ハイドラ」表記。今は公式に日本語統一されたのかな?「ファーストアベンジャー」の時はヒドラ党って言ってたような?RPGとかでも基本ヒドラかヒュドラの方で馴染みがあるので、読み的にはハイドラの方が本当は近いのかもしれませんが、「ハイルヒドラ」の方が良かったかも。
とりあえず次の「シークレットエンパイア」本編も楽しみです。
解説書がついに中閉じにまでなっちゃってるこの熱量がまた素晴らしい。
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