THANOS RISING
著:ジェイソン・アーロン(作) シモーヌ・ビアンキ(画)
訳:光岡三ツ子
刊:MARVEL 小学館集英社プロダクション ShoProBooks
アメコミ 2016年
収録:THANOS RISING #1-5(2013)
☆☆☆★
比類なき、ヴィラン
サノス。
ここに明かされる、悲しき過去と波乱に満ちた運命……。
「インフィニティ・ウォー」まで来たのでついでにこちらも。
ただ、「インフィニティガントレット」でも触れましたが原作版のサノスはMCU版とは結構違ってます。
MCUだと宇宙の均衡を保つために、みたいにサノスなりの倫理観で自分の目的を達成しようとする、みたいな所がヴィランだけど魅力がある的に好評を受けた感じですが、原作の方は基本的には死の象徴という感じ。サノスの名前も死のタナトスから来ているとされています。
デビューは1973年ですが(「ガーディアンズオブギャラクシー:プレリュード」収録)サノスの誕生から生い立ちみたいな所を現代的な解釈でアップデートしたのがこちらの作品。
赤ん坊のサノス、少年時代のサノスとか、ぶっちゃけそんなの誰得?読みたいのかそれ?という気がしなくもないですがこれが意外と面白い。
MCU「ブラック・ウィドウ」の次に公開される予定の「エターナルズ」ですが、サノスも種族的にはそのエターナルズに属する存在。太古の神々的な存在であるセレスティアルズが人間の神的な存在を作ったのがエターナルズと呼ばれる種族で、容姿端麗で聡明。次にセレスティアルズが作ったのがディヴィアンツと呼ばれる種族で、こちらは多様な実験の結果で、いびつで醜悪な容姿であったと。
サノスもエターナルズでありながら、突然変異的にディヴィアンツの遺伝子?も持つのであんな紫ゴリラの容姿になってると。エターナルズの中でも超天才児で優秀な存在ながら、では自分の存在は何の為にあるのか?と自問し、「死」の概念を追求していく、というキャラになってると。
その辺は「インフィニティガントレット」で描かれた、死の女神デスを妃に迎えようと、ひたすらデスの為に死を積み重ねていきつつ、当のデスからはガン無視され続ける、というある意味での面白描写を、凄くシリアスにそして尤もらしく丁寧に描いてあるのが結構凄い。
あの元ネタをこう解釈していくのか、という所が面白味。デスの正体とか、決して目新しいオチでは無いですし、読める人は序盤でもしかしてと思ってしまう人も多いかなという気がしますが、決してオチだけが全てみたいな作品になってるわけではない。
今風に解釈すると、やっぱりソシオパス?サイコパス?的に描くのが自然なんだろなとは思いつつ、それでもサノスが「死」をどう受け入れていくか、世の中に対する恨みなのかもしれないし、単純にそこに自分のアイデンティティを見出そうとしているのか、デスも単なるイマジナリーフレンドであるのかもしれないし、自分の心の中の葛藤や決意みたいなものを、あえて具現化させたものかもしれないし、死と言う概念に取りつかれてしまったのかもしれないしと、読み方・解釈しだいで色々と想像できるのが面白味かなと思います。
単純に、これがサノスのオリジンだっていう設定話として読むよりも、サノスをこういう解釈で捉えるのかっていう、ややメタ視点ありきで読むと面白いのではないかと。
関連記事
サノス初出
ジェイソン・アーロン作