監督:小川孝治 脚本:成田良美
日本映画 2014年
☆☆☆☆☆
プリキュア映画16作目。オールスターズとしては6作目。プリキュアシリーズ10周年記念作品として放送されたTVシリーズ11作目「ハピネスチャージプリキュア」春の新人研修映画。「プリキュアオールスターズNS」3部作として一区切りでNS締めの作品にあたります。
NS1・2とニューステージへの思い入れを語ってきましたが、こちらも3部作の最後も負けず劣らず大好きな作品です。NSシリーズは1作1作ちゃんとテーマのある映画になってるので、そこが大好きで何度繰り返し見たかわからないくらいです。確か劇場でもNS3は2回見たんだったかな?
あくまで「お祭り」として始まったプリキュアオールスターズの「DX」シリーズですが、最初はイベント映画でしか無かったものが、回を重ねるごとに定番化してただのお祭り映画じゃないものを、という形に変化したのが「NS」で、もう少し「作品」として良い物が作れるんじゃないか?という試行錯誤が感じられるのが本当に好き。
お祭り映画だって映画の一つの形、一つのジャンルではあるし、そこを批判するものではないですが、やっぱり「作品」と言うよりは「商品」の面が強いように思います。そもそもプリキュアという作品自体が、おもちゃを売る為の商業作品ですから、そこを否定しちゃったら的外れな見方しか出来なくなる。
でも、それだけでもないだろう、まさしく次のニューステージに進もうとしたのがこのNSシリーズ。ただ好きなキャラクターを愛でるのが楽しみ方のメインではなく、ちゃんとテーマなりを作品に籠めよう、映画として良いものを作ろうっていうのが凄く伝わってくるのが本当に素晴らしい。
脚本はプリキュアライターとしては定番の成田良美でTVシリーズも映画ももう何本もやってる。それでも過去の作品と違って見えるのはやっぱり監督が何を目的に作るのかによって作品って全然変わってくるんだなぁと改めて思います。監督の小川孝治は昨年までやってた「ゲゲゲの鬼太郎」第6期のシリーズディレクターなんかをやってた人で、結構話題になってましたね。元の鬼太郎が持ってるものとは言え、社会性とかテーマ性とか強めの作品でしたので(ゴメン、私ちゃんとは見て無い)その辺は監督のカラーなのかと思います。
「NS1」はプリキュアあこがれる普通の女の子。「NS2」はプリキュアの隣に居たい妖精の男の子(を通して男性ファンの見立てとしての解釈も可能)が描かれました。じゃあその次のこれ、「NS3」は何を描くのかと思ったら、今度は親です。
うん、この流れだけでももう凄い。流石に親を主人公的な存在として描くのは色々難しいと思ったのか、前作のエンエンと近いキャラとして妖精のユメタをメインに置いて、そのお母さんのマァムが何と敵。勿論、ストレートに悪さをする悪役では無く、親の愛情をきちんと描いた上で、過保護になりすぎていないか?それは子供の夢じゃ無く、あなたの夢だったりしないか?と見ていてドキッとする所があったりして、メチャメチャ面白い。
キモオタな私は普通に一人でプリキュア映画を観に行きますが、田舎では同類はほとんど見かけたことありません。お子さんが一人で映画館に来るはずもなく、周りに居るのは全員親子です。これ、親御さんはどんな気持ちで見てるんだろうか?とか思ってしまいます。多分、子供が喜んでくれてるのならそれ以上何も無いよ、くらいなのかなとは思うのですけども。
で、NS3としてはそこが軸なんですが、3部作の締めとして、NS1のあゆみちゃん(キュアエコー)、NS2のエンエンとグレルも出てきて、私にはパートナーの妖精が居ないの、私のパートナーになってくれる?ですよ?何これ1億点。
NS2の時に散々語りましたけど、私はエンエンに思いっきり自分を重ねて見ました。エンエンは俺なんだと。で、そのエンエン(とグレルも)がキュアエコーのパートナーになる。何これ最高じゃん。うん、私はプリキュアにもなりたいけど、プリキュアのパートナーにもなりたい。夢のような展開です。
この後のオールスターズ映画にも何度かキュアエコー出てますが、「NS」3部作という感じできっちりまとめてくれたのは本当に良い作りだったなとしみじみ感じます。
過去キュアも全員にセリフがあるわけではないのですが、世代問わず上手い具合にフィーチャーしてあって、その点でも満足度は高い。
「夢」の世界に閉じ込められたプリキュアの中で、最初にこれは夢の世界だって気づくのもキュアドリームこと夢原のぞみさん。「夢はね、ただ叶えばいいってものじゃないよ。夢が叶うって言うのはなりたい自分になる事だから、自分の力で叶えなきゃ」と。
毎度おなじみコメディリリーフとしてのキュアマリンもそうですが、個人的にはこっからキュアハッピーも別枠でコメディキャラになってくのもハッピーに特別な思い入れがある私はとっても嬉しい。
ハッピーと言えば特典映像の声優舞台挨拶も今回華やかで良いのですが、今回に限らず毎回なんですけど、福圓さん他の人が話してる時に見切れたりしてるの映ってると、すごく独特の表情をされていて実はそこも凄くツボ。笑顔でにこやかに、じゃなく変(に見える)な視線がちょっと面白いので、見る機会があったらその辺にも注目してあげて下さい。
とまあこれだけ語ってきて、当の現役世代の「ハピネスチャージ」にまだ触れてませんね。作中でも「お待たせしました」ってギャグにして使ってますけど、これがなかなか変身しない。プリキュア映画にしてはこの展開、ちょっと珍しいです。
やっぱりメインの客層は子供達ですし、現行プリキュアをまず見せるのが作品としては本来は正しい。大概の映画では始まってすぐに変身シーンがあって軽くアクションとか普通やってからその後にお話を進めるのが大半。まず子供達の心を掴むのが基本ですから。
そういう意味では、実はあまりよろしくは無い事を今回はやってるのですけど、大人目線で見る分にはその辺の溜めて溜めてから変身っていうの楽しくって好きです。そう言う所も、実は映画としてちゃんとしたものを作ろうっていうのが垣間見える部分ですよね。
で、そういう大人と子供の視点・受け取り方の違いと言えばキュアハニーです。TV放送より先にこっちで登場。セリフは無しですが、ピンチの時にちょっとだけ駆けつける、という形になってます。
この作品は「オールスターズ」ですから、本来であれば新人がピンチの時にかけつけるのは先輩プリキュアで良いはずなんですよね。じゃないと役割がかぶっちゃうから。
確かスポンサーの意向でハニーも映画に出してほしい、という意見をくみ取った形だったんじゃなかったかと記憶しております。(そういう意味じゃNS2に絡めてソードの加入が早まった前作と似てますね)
キャラクターとしては番組中盤から入る所謂「追加戦士枠」はキュアフォーチュンが担当ですので、(TVシリーズだと1話から出てはいるものの、仲間になるのが中盤でフォーチュンは映画に出て無い)その前に加わるハニーは丁度児童誌とかではキャラの存在だけは先に明かされてた状態。なのでTVではまだ出てないけど、情報だけは知っているという時期での映画公開です。
でね、映画館で私2回見ましたけど、どっちの時も、観ているお子さんが「キュアハニーだ」って声を上げてました。これがちょっと面白かった。
私はどちらかと言えば、前情報はあまり入れないで作品を見たいタイプです。特に好きな作品なら尚更情報はあえてネットとか触れないようにしてネタバレとかは避けたい方。その方がより楽しめると思うから。
プリキュアは結構普通にTVだけ見ててもCMとかで玩具バレとか多めなのがちょっと困りどころ。何だよこっちは純粋に作品を楽しみたいのに情報の出し方考えろよ、とか最初の内は思ってました。
でもこの映画における幼女の「キュアハニーだ!」で気づいたんですね。プリキュアのメインターゲットは未就学児ですから、正直言ってきちんと話を理解して見ているわけではありません。(でもそこで手を抜いたりしないのがプリキュアの凄い所でもある)ライダーや戦隊でもそうなのですが、児童誌が情報公開として一番先に出たりするケースは割と多い。これ、何だろうって思ってたけど、
子供達はストーリーとかを見てるわけではないので、そういう新しいキャラとか、新しいアイテムにわくわくするんですね。先に児童誌とかで見て、これTVでいつ出てくるんだろう?みたいな感じでいるわけ。なので今回劇場で聞こえてきた「キュアハニーだ!」の声は、やっとアニメの画面の中にも出てきた、っていう部分と、お母さんなり劇場の周りにいる人達への「私この子知ってるよ」という、優越感だったりアピールだったりするわけです。そこ、面白かったりしません?
大人なら前情報が無いと「謎の知らないキャラが出てきた」というサプライズの面白味になりますが、子供達にっては「知ってるキャラが画面にも出てきた」面白さになるわけです。おお~プリキュア(というか子供向け作品)はそういう所も奥深い。
なので、情報解禁前にスクープとか出したり見たがる人は、幼稚園児と同じ目線で見てるんだなって、思うようになりました。あんまりそういうのには関わりたくないものです。
で、ハピネスチャージとしては、今回敵が一応マァムとそれが出す悪夢という形で、他の映画と比べるとボスキャラとしての強さはあまりない。(それは前作のNS2も同じ)その分、物凄く苦戦してボロボロにされる新人っていうのがあまりないから、結構わちゃわちゃした感じの作品になってて、そこも好きなんですよね。
私は「ドラゴンボール」的な、ただ強さのインフレ起こしてくだけのボスキャラとかあんまり好きじゃない。荒木飛呂彦じゃないけど、強い敵を倒したら次のもっと強い敵が出てくる、それって終わりが無くないか?と思っちゃう方。
プリキュアだとまさしく「オールスターズDX」がそのインフレを繰り返してて、その先に収拾がつけられなくなっていったのと同じで、そうじゃないものを作ろうと言う「NS」らしさがそこにも実は現れてたりする。
ここまで語ってきたようなそんな工夫が随所に溢れていて、NSシリーズ、ホントに良い3部作になったなぁと思います。私はとっても好きな作品です。
そしてそのエンディングに流れる「プリキュア・メモリ NewStage3 Version」
映画 プリキュアオールスターズNewStage3 永遠のともだち ED
もうプリキュアCGムービーここに極まるというくらいに圧倒的に凄い絵。そして歴代タイトルの歌詞が入って、それを歴代のピンクキュア声優が歌う。
もうこれだけでもまた1億点です。うん、本編1億点のEDで1億点だからNS3は2億点の映画と言う事になりますね。
最後の最後に聞こえる、野太い男の声で「ありがとぉ~っ!」はきっと私の心の声です。
予告「映画プリキュアオールスターズ NewStage3 永遠のともだち」 2014年3月15日(土)より全国ロードショー
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