僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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不能犯

「不能犯」DVD豪華版

監督:白石晃士
原作:宮月新・神崎裕也
日本映画 2018年
☆☆☆☆

 

<ストーリー>
ある都市伝説が広まっていた。それは、殺したい相手の情報を書いた紙を電話ボックスの裏に貼りつけておくと、自分の代わりに何者かが殺してくれるというものだった。ただし、その殺意が純粋なものでなかったら、殺人を依頼した本人も殺されてしまうという。
最近、不可思議な事件が起こるようになっていた。原因不明の心臓発作による死亡事故が多発していたのだ。ある日、闇金融の社長がカフェで死亡した。死因は心臓発作だったが、社長の顔は蜂に刺されたような跡でいっぱいだった。事件を担当した多田友子が、店の防犯カメラを確認したところ、社長は死ぬ直前に、黒いスーツの男と会っていた。苦しみだす社長を前に、男はカメラを振り返り、薄気味悪い笑みを浮かべる。
社長の検視結果では、ただの心臓発作によるショック死だった。この黒スーツの男が事件に関係しているのは明らかだったが、彼が直接、手を下しているわけではない。この映像だけでは殺人者と断定することはできず、“不能犯”として扱われ、罪を問うことはできない。多田は鑑識官の河津から、そう説明を受けた。
MIHOシネマさんからの引用)

 


地獄少女」が思いのほか面白かったので、白石晃士監督作品をチョイス。こちらも原作付きのようで、それ私は知らないで見たのですが、ほぼほぼ「地獄少女」と同じような感じの話で、映画としては姉妹作と言っても良い感じ。

 

オムニバス的に、個人の都合で請け負う依頼で他人を殺してくれる、みたいな存在が居て、それに絡めて人間はこんなに汚くてクズなんだよ、的な話をやってるので、多少のルールや設定は違えど、「地獄少女」とそんなに差は無い。

 

明確に差があるのは不能犯殺人を請け負う宇相吹に対して、人間の性善説を信じたい感じの刑事の多田が主人公として、それに対峙する、みたいな部分でしょうか。原作だと男性のようですが、そこを女性に変更。そこは映画のバランスとしてかな?

 

その刑事を演じる沢尻エリカがなかなか良いです。一時期のマスコミに対するそっけない態度で一気にイメージダウンした人ですけど、逆にそういう演じる俳優の背景までメタ的に含めて、人は悪い事もしてしまう弱さはあるけど、それでも反省して変わる事は出来るんだっていうのを信じる役をやらせるっていうのは面白い部分。

 

地獄少女」でもそうでしたけど、それでもとにかく出てくる人間のクズっぷりがとにかく凄い。胸糞悪くなるけれど、こういう人って居るよね、所詮人間なんてこんなものかもね、とついつい思ってしまいたくなる感じのバランスがとにかく秀逸。

 

でもね、ガンダムUCじゃないけれど、「それでも」と言い続けろ!みたいに思わせてくれるのもね、主人公だって所詮は奇麗事ですよっていうただ捻くれた感じでは無く、つい応援したいと思わせてくれる感じなのがね、また面白い。

 

白石監督、本心としてはこっち側だけど、みたいな感じでは決してないと思うんですよね。愚かだね人間は、と思いつつも、それでも全部がそうじゃないはず、みたいな所もまた信じてるんじゃないかなぁ?と「不能犯」と「地獄少女」どちらを見ても感じます。この辺のバランス感覚がとても面白い。

 

作品の顔でもあり、狂言回しとも言える宇相吹を演じるのは松坂桃李。私的にはやっぱり「シンケンジャー」の人です。ご結婚おめでとう。

 

原作を知らないので、詳しい設定とか知らないですし、先日完結したらしい原作がどういった結末を迎えたのかは知る由もありませんが、映画単体で見ると、概念の擬人化っぽい感じで見れたので、人間の性悪説性善説の対立っていう感じでとても面白かった。

 

刑事に対して、自分を殺せばこの事件は解決しますよ、でもあなたも殺人犯になっちゃいますけどね、みたいに、どっちに転んでも自分の勝ちみたいな道筋を作っちゃってるけど、そんな手には乗らない、もっと違う道を自分で探すんだ、それは辛くて険しい道だけど、それでも絶対にそんな挑発には乗らない、それもまた人間なんだって言っているようで、古臭い例えかもしれないけど、よく漫画とかである自分の心の中の天使と悪魔が戦っているようなものをテーマとして描いたのがこの作品なんだろうと。

 

映画としては割と通俗的な表層を装いながらも、その表面だけに留まらないものをきちんと描いてあると思うし、白石晃士なかなか面白いのではないかと。

 

関係無いけどこれ「コードギアス」の次に見たので、目が赤く光ってマインドコントロールとか、いやこれギアス能力者じゃん!とかちょっと思ってしまいました。


映画『不能犯』本予告

 

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