MOBILE SUIT GUNDAM UNICORN episode EX2
ストーリー:福井晴敏 コミカライズ:玉越博幸
刊:角川書店 角川コミックス・エース 全1巻 2020年
☆☆
つーか「EX2」って事は「EX1」はどこ?
調べたらUC最終話が上映された時にやってた「百年の孤独」っていう宇宙世紀ダイジェスト映像がEX1なのか。
で、UCのBDコンプリートBOXが出た時に特典としてこちらのEX2のシナリオとドラマCDが付属されてて、そのコミカライズ版がこちらの作品。元作品の方には私は触れてません。
ガンダムUC本編のその後のリディと政治背景を描いたエクストラエピソード。一応、「ガンダムNT」との繋ぎのエピソード的に言われてますが、一部のキャラとかNT登場時のバナージは一体何やってたのか、みたいな部分はありますが、そんなに「NT」要素は無くて、あくまでUCのその後みたいな感じ。
メガラニカと共に、ミネバとバナージがジオン共和国に匿われていた中で、政治的にその辺りは非公認になっていて、連邦に帰還したリディは封印されたユニコーンと共に政治上のパワーバランスを保つ為の駒として扱われていたと。でもミネバやバナージの本心を知りたいが為にリディは単騎で突っ走って二人に会いに行く、というようなお話。
UC以降の宇宙世紀の歴史がもう先にある状態なので、ラプラスの箱を開けても結局は世の中がひっくりかえる事は無かったんだよ、というのはまあ仕方のない所ではありますし、実際にその歴史を変えられないのだとしても、その政治背景は面白いし、今回最後にリディが将来は連邦首相になるかもね?みたいな事が示唆されてて、そこは凄く面白い要素だとは思う。
将来ね、UC2とかよりももっと先の話でおじいちゃんになったリディとかが連邦のトップを張ってたらそれはそれで面白そうじゃないですか。若い頃にやんちゃやってたのに、いつのまのかこんな立場でこんな決断をするのか、とかそういうのは楽しそう。
富野は年齢的にもこの先の作品ってもう限られてくるし、例えやってももう宇宙世紀ガンダムなんてもう絶対やんないですよね。何かしらのトラブルでもなければ、この先の宇宙世紀は富野の後を継いで福井がけん引してやっていく、みたいな空気があるので、そういう時に若い主人公とは別でリディとかを政治家として使い続けて行く、とかになればね、それはそれでね、面白いんじゃないかと思います。
ここまでは褒める部分です。私は福井もUCも嫌いですけど、全部が全部をダメとか言ったってしゃあないと思ってますし。
で、こっから文句つけます。
今回の話もそうなんですけど、リディが政治の駒として使われてるのって、マーセナス家だからだけじゃないんですよね。ユニコーン(2号機バンシィ)のパイロットだったから。
で、そのユニコーンガンダムがシンギュラリティ・ワンとか言われてます。そう、福井がユニコーン終了後にやたら言い始めた、ニュータイプ能力とは時間干渉能力の事であり、そう考えればこれまでのガンダムのわけかわらん描写の全てを理論的に解釈できる、という超超超超超超珍説に基づいている。
UC本編だと、演出的にはそういう意図ではあったんだろうけど、それでもそこを言葉では説明してなかったんですよね。「NT能力とは時間操作能力の事である」事を公式的な作品世界の中で明確にしちゃった。これってヤバくないですか?
「ガンダムNT」でもね、そういう前提で話は作ってましたけど、あれが良かったのはそこをドラマの軸にはしていなかった事です。だから描写に首を傾げつつも、ドラマとして面白かったから見れた。
いやぁ、この珍説、さっさと忘れらされてほしいですね。そんな説もあったが、実際の所はよくわからなかったままで忘れられた、で処理してほしいです。というか「クロスボーンガンダム」をアニメ化して、ああやっぱりこういう事だよね、になってほしいと説に願います。この時代だけに流布したオカルト言説で処理してくれるならまあそれはそれでネタとして流しますので。
ついでに言っておくと、メカ的な所で、バナージのガンダムMk-2。
これ?なんでマークツーなんでしょう?たまたまあった、っていう機体では無いですよね?その後に乗り換えるシルヴァ・バレト・サブレッサーならともかく、何でここにマークツーがあるのか?っていう設定上の部分と、何故バナージをわざわざマークツーに乗せたのか?っていう作劇場の理由が知りたい。
メタ要素として何かしらの意図はあると思うんだけど、これがよく私にはわからん。多分このまま福井ガンダムがしばらく続くのならば、親殺しっていうテーマは必然になってきます。富野が作った宇宙世紀というものを福井が受け継いでそれをどう乗り越えて行くのか?っていうのが作家としての当然の壁になってくるわけですから。
ガンダムMk-2って「Z」での扱い自体がそうでしたが、あくまで中継ぎでしかなくて、決して作品の象徴的な存在・機体ではなかったはず。その機体をわざわざ持ってくるってどういう意図なのでしょう?その時代にたまたまあった量産機の改良型とかではないんですよ?じゃあそこに意味が無いはずがない。単純に今回の話も中継ぎでしかなかったから?って程には単純じゃ無い気がするんだけどなぁ。色々と謎です。あるはずが無いものがあるっていうのはそれなりにインパクトはありましたけどね。
とまあそんな感じで、良くも悪くもではありますが、外伝としては結構読み応えがあって面白くはありました。
今回のコミカライズ担当の玉越博幸って「BOYS BE…」の人ですよね。結構意外な人選。下手では無いし、MSの書き込みとかも結構頑張ってますが、戦闘シーンとかは何やってるかよくわからん。ただこの辺はこの人に関わらず、ガンダム漫画でまともに「面白い戦闘シーン」描ける人って、ほぼほぼ居なくて漫画でメカを面白くかつカッコ良く描くって相当に難しい事なんだな、と毎回思わされます。
アニメでも勿論戦闘シーンってセンスに左右される部分は大きいんですが(そこ考えるとUCの戦闘シーンはやっぱり凄いし面白かった)動いてる絵じゃないとガンダムみたいなビームの撃ち合いって、やっぱりなかなか面白くはならない。そういうのをどう描くかっていうのもまたガンダム漫画の見所ですが、難しい所です。
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