僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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シン・エヴァンゲリオン劇場版:||

 


『シン・エヴァンゲリオン劇場版』本予告・改2【公式】

EVANGELION:3.0+1.0 THRICE UPON A TIME
総監督・原作・脚本・製作総指揮:庵野秀明
日本映画 2021年
☆☆☆☆☆

 

エヴァ完結編、見て来ました。凄い物を見た!とかはないけど面白かった。正直な所、終わらないと思ってたし、どうせまた自己満足の下らないものになるんでしょう?みたいにたかを括ってました。が!普通に終わったのでちょっとビックリ。

 

まず最初に私にとってのエヴァですけども、そもそもがエヴァに思い入れも無いし特に好きなタイトルではありません。勿論、庵野監督にも特に興味も無し。

 

旧TVシリーズがあれだけ世間的に話題になったので、旧劇場版まで全部完結してからまとめて見ました。まあつまんなくはなかったけど、私が見るべき作品ではなかったかな、という印象でした。


やっぱりシンジ君を始め、キャラクターに全く感情移入出来なくて、あれだけ同世代の皆が自分の事のように語ってたのを物凄く醒めた目線で見つつ、それを否定したって仕方無いので、ああこれは自分がハマるような物語とかではないんだな、これは若い人たちが自分達の物語として消費するものなんだろうと。

 

というのは当時の私は富野信者だったから、というのも大きいと思う。「イデオン」とか普通に先に見てたのもあって、こんなの富野はずっと前に通り過ぎたやつじゃん、それのコピーみたいなのを見せられても富野ファンなら食いつかないよ、とかずっと思ってました。

 

TV版の最終回もね、あれはあれで面白いと思ったし、「ナディア」とか「トップ」は普通に先に見てたので、庵野自身の葛藤みたいなものをね、TVではやってて、あれでエヴァンゲリオンは終わりなんですよ、と言い張っていればナディアやトップと同じくオタクが持ちあげるカルト監督で終わっててそれで良かったのに、変に社会現象レベルに受けちゃったものだから、もっと世の中が納得するようなラストを、と要求されちゃって、庵野もおかしくなりながら世間への恨み節を映画でやっちゃったというのが
私の旧シリーズの感覚。

 

で、新劇場版は映画一本見るのなら楽だし、一応見ておくか、みたいな感覚で数ある映画館でやる映画の中の一本、程度で見てました。序・破はまだ普通ですが、Qで「あ~あ、また庵野やっちゃった」ぐらいの感覚でした。普通に作ればいいのに、と正直思ったまま、今回の完結編です。

 

今回の完結編を見るにあたって特に過去作見返したりはしていません。なので私にとっては9年ぶりのエヴァになるのかな?

 

序盤の農業シーンは「おおきなカブ(株)」


よい子のれきしアニメ おおきなカブ(株)

の劇場版かよ!とは思いつつ、まあエヴァって庵野私小説だし、どう見てもマリ=庵野モヨコなのでラストも含めてこういう作品になるのは仕方ない部分。

 

だからこそ、どうせ今回も終わらないんでしょ?と思ってたわけですが、これが意外な事に、どんどん畳んで行く。あれ?「Q」の時のトンデモ設定もきちんとここまで仕込んでた上でやってたのか?と思ってしまったくらい。

 

エヴァのATフィールドは心の壁っていうのは有名ですけど、私がエヴァの何が嫌だったかというと、そのディスコミュニケーション部分なんですね。それは新劇になってからも思ってて、もっとちゃんと話すればいいのに!といつも思って見てました。

 

そしたら今回なんとシンジ君はお父さんとちゃんと向き合おうとするし、逆にお父さん側の方もその内面とかが掘り下げられてて、そこが本当に良かった。アスカとシンジの、あの時は好きだったかもね、みたいなやり取りも含めて、いやぁみんな大人になったな、と。

 

初めてエヴァを、面白いなと思えました。今思えば、何でエヴァが嫌いだったかと言えば、みんな大人にならなかったから私はそういう所に乗れて無かったんだと、改めて確認出来ました。

 

少年の心の尖った部分とか、素直になれない気持ちを代弁してくれてるようで、そこに共感するっていうのも、それはそれで話としてはわかるんです。そういう気持ちがあるっていうのも否定はしたくない。でも私はそれ良い歳した大人になってまで見たいとは思わないし、あんまり乗れはしない部分。

 

ああ、丁度今流行ってる「うっせえわ」でしたっけ?ツイッターでたまたま見ただけなんですけど、正直、うわ何このダセぇ歌詞。感情的な一言だけで自分を表現してるとか思っちゃってるのは子供の特権だわな。その感情を理路整然と分解してもっとちゃんと自分の言葉で語りなさいよ、そうしないといつまでもガキの戯言としてまともに相手にすらされないってちゃんとわかってるの?と思いつつ、こういうのは昔からどの世代にも似たような物がある定番路線ですので、まあこういうのが若さだよね、早くこういうのが恥ずかしいって気付いてもっと大人になってほしいな、と思ったりしたのでした。

 

エヴァも昔はそんな感じでしたけど、今回ようやっと大人になれて、ああそうそう私はこういうのが見たかったんだ、という感じです。

 

素直に「ごめんなさい」だとか「ありがとう」だとか、何なら「おはようございます」って挨拶するだけでも全然違うものなのに、なんか勝手に壁作ったりして、プライドか何か知らないけど、そんな当たり前の事に今更庵野は気付いたのか?と思うくらいに、凄く普通の事を当たり前にやる、が今回出来ていて、そこがとても良かった。

 

勿論、そこに行けないのが所謂「セカイ系」って奴ですので、その草分けとも言えるエヴァがようやくそこから一歩踏み出せたのは本当に良かったなぁと思いました。私は良い歳した大人ならもっとちゃんと社会と向き合おうよ、と思ってる人なので、セカイ系は苦手なのです。

 

一応言っておきたいのはそういう人達をバカにしてるわけじゃなくて、歩みの速度や成長の仕方はその人によってやっぱり違ってくる。変な話、おじいちゃんおばあちゃんになっても自分の非や過ちを認めて「ごめんなさい間違ってました」って素直に言えない人の多い事多い事。しかも日本を動かす政治家だってそれ出来て無いわけですからね。

 

そんな、人として当たり前の事にようやく気付いてくれたか庵野!って感じで、いや今まで本当に苦労してきたね、でもようやく次に進めて良かったね!と、まさしく「おめでとう」を言ってあげたい気分です。

 

私はね、庵野の「シンゴジラ」も嫌いなんですけど、あれの何が嫌かつったら、前半のリアリズムはとても良いのに、後半は急遽フィクション路線に行っちゃうし、そのメッセージも日本人が力を合わせればどんな困難も克服できる!みたいな嘘臭いメッセージが大嫌いだからなんです。そんなの今の日本に出来るわけないじゃん。前半はリアル志向で、政治批判とかも入ってるのに、後半でそんなとってつけた現実感の無いメッセージを出されても、っていうね。またそこに逃げるのか?「現実VS虚構」で結局また虚構?っていう。

 

ただ、そういった失敗や恥を重ねてきてもね、今回のエヴァでやっと普通な事を言えたっていうのは本当に嬉しいし、それも過去の積み重ねがあってこそです。

 

誰だって上手く生きていける人ばかりじゃないし、それは私だってそうだ。でもいくつになったって、歳を重ねたって、例え遠回りだったとしても、やっと変われたならそれでいいじゃん。そこは祝福してあげようよ、と言いたい。

 


出来るならね、こんなに時間をかけないで「序」から1~2年ペースくらいでこれを作ってほしかったとは思うんだけど、(そうすれば残り時間ももっと有効的に使えてより先に進めるし)逆に時間をかけて苦労してきたからこういう所に辿りつけたっていうのもまた実際にそうで、庵野モヨコと結婚したから綾波やアスカとはまた違う存在もあるんだなと思えたわけで、それがマリになってるんだから、こうして何十年もかけて変化を見せる事が出来た事こそエヴァンゲリオンっていう作品の本質かなとも思うし、ようやく私も好きになれました。

 

思えばね、「Zガンダム」で「人の心を大事にしない世界を作って何になるんだ!」って世界と向き合おうとした少年が最後に心を壊してしまって、そこに対しては私はとても感情移入出来ました。でもそれも10数年後に劇場版でとってつけたような救済ルート作ってさ、いやそれ単純に最後かえただけでしょ?って私は全く評価しなかったのですが、そこ考えるとエヴァ完結編は本当に納得が出来るものになってた。

 

ようやく私の中でもただの富野のコピーでしかなかった庵野がちゃんと自分の作品を作って自立してくれたように思えます。

 

個人的に「おっ!」と思えたのは新世紀(ネオンジェネシス)の解釈ですよ。旧シリーズの時はね、これが俺達の時代の、新時代の幕開けなんだって意味でのある意味いきがってつけた「新世紀」だったと思うんです。富野的な所でのニュータイプみたいなね。そこで庵野なりにいや自分達の世代はこうなんだよっていう意味での新世紀。


そこで実際に新しいムーブメント、新しい時代の象徴にはなったのでしょう。それが今回は、もう古い時代はここで終わり。それはエヴァが作った時代だったのかもしれないけど、もう次の時代へ進めようよ、という意味での新世紀の使われ方でした。まさに自分で自分のケツを拭いたと言うか、旧劇の時には自分が蒔いた種のくせして世間に恨みをぶつけていた庵野がですよ?いやぁ、大人になりました。

 

オタクな事を言えばもう一人のシンジ君である高松信司が旧エヴァと同年の95年に「機動新世紀ガンダムX」でもう同じ事やちゃってるんですけどね。

 

ただ、何度も言うけど、歩みや成長の幅・速度はその人によってやっぱり違ってくるものだし、そこをバカにするのは良くない。ここは素直に庵野を褒めてあげたいです。よくやった、よく頑張った。

 

次の「シンウルトラマン」が素直に楽しみになってきました。そしてそれ以降の作品もです。もしかしたらエヴァの血を引き継ぐものなのかそれはどうかはわかりませんが、もしエヴァの系譜のようなものだったとしても、過去に縛られる事無くきちんとニュージェネレーションとして次の作品になっている事でしょう。

 

まさかこんなに上手く憑き物が浄化されるような作品になってるとは思ってもみなかったですし、ある意味、こんな呪縛と怨念が背景にあるようなシリーズは他にも無いわけですから、今更ながらこうしたきちんとした完結編作られて、一つの立派な面白いコンテンツになったなと。まさしくこれまでの全てのエヴァンゲリオンにサヨナラと言える作品になってました。

 

そして心からおめでとうを言ってあげたくなる作品でした。

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