THE UNSTOPPABLE WASP:UNLIMITED VOL.2: G.I.R.L. VS. A.I.M.
著:ジェレミー・ウィットリー(ライター)
グリヒル、アルティ・ファーマンシャ(アーティスト)
訳:ャスダ・シゲル 御代しおり
刊:MARVEL ヴィレッジブックス
アメコミ 2021年
収録:THE UNSTOPPABLE WASP Vol.2 #6-10(2019)
☆☆★
天才科学者ハンク・ピムの娘であるナディア・ヴァン・ダイン。
先進の研究機関「G.I.R.L.」の仲間と共に、科学による世界貢献に
立ち上がった彼女だったが、「相極性障害」という自身の病に加え、
仲間達もそれぞれがハンデや悩みを抱えていた。それでも共に
手を取り前に進んでいくナディア達に、最大の障害である7「A.I.M.」が
立ち塞がる。果たして彼女達の夢の行方は……。
アントマンの娘が主人公の新世代のガールズコミック完結編。
マーベルの若手ヒーローが総登場するパーティシーンは必見!
と言う事で「アンストッパブル・ワスプ」完結編。
確か当初は1巻の翌月に続けて出る予定になってたものの、コロナで1巻の発売もずれて、続刊もしばらく音沙汰無しでした。しかもその間に小プロの方がマーベルとの独占契約で今後は小プロからしかマーベル邦訳が出ないというアナウンスがなされてしまいました。が、その前に契約してた奴は大丈夫という事なのでしょう。この本の帯には「グウェンプール」第2シリーズの告知と、「スパイダーゲドン」の方には「スーペリアスパイダーマン」完訳の告知が。(後はネットで見たけどウルトラマンもヴィレッジから出るっぽい?)他に隠し玉があるのかは不明ですが、もうちょっとだけ続くんじゃよ、という事でしょうか。
そんなこんなでワスプの続き。
ジャネットの独断からすれ違いを生んでしまったGIRLでしたが、話し合いでなんとか和解。そしてジャネットの誕生日を祝うパーティが開催される事に。
ここのパート、グリヒルさんのアートじゃないのですが、なんとかグリヒルっぽい日本的な可愛い絵柄に合わせる努力がしてあって、そこそこ違和感なく読めるようになってます。「グウェンプール」の時はアートがグリヒルじゃない時は割とつらかったのでその時よりはまあ。あの時も頑張ってはいたけれども。
ナディアは出生が複雑なので、そもそも本当の誕生日は不明なものの、だったら自分で決めてしまえば良いという、たまに日本の漫画なんかでもある設定。で、帯にもある通り、色々な方面から色々な人がかけつけてくれると。
で、ビジョンの娘のヴィヴがナディアとの血縁関係とかを各自説明してくれるのですが、ここがもはやギャグの領域。
初代アントマンが生み出したのがウルトロンで、そのウルトロンがヴィジョンを作ったので、そう言う意味ではウルトロン系もヴィジョン系も血縁関係という事になるわけですが、更にはヴィジョンがスカーレットウィッチと結婚してトミーとビリーが生まれ、その転生がスピードとウィッカンなのでおじやらおばやら甥やら姪やらもうわけがわからん事になってる。今回は出て来ませんが、ビジョンもその精神はワンダーマン(サイモン・ウィリアムズ)のコピーなのでそんな所まで含めたらもはや相関図は複雑怪奇を極める。
奇妙な事だが、君は叔父だか姪だか・・・何だかわけがわからん。
そんな血縁関係もありつつ、ナディア(と友達のイン)はレッドルーム出身という事もあって、そちら絡みの話も同時進行。シークレット・エンパイア後の話なのでブラック・ウィドウは死亡中(その後復活するけど)、ウィンターソルジャーとモッキンバードがレッドルームのアジトに侵入。
そしてナディアらGIRLのメンバーは自分達のエキスポを開催。そこにAIMが乗り込んでくる、という話。何とか協力して撃退するも、若い自分達が世界を変えてやろうとあまりに大きい目標を掲げすぎていた事に反省し、これからはもう少し地に足のついた活動から再始動していこうと決意するのだった、というやや苦い勝利で幕。
AIMも対ジャネット用に雇ったワールウインド以外は基本女性なので、そこまで巻きこむ形でGIRLはますますメンバーが増えて行くも、一応の流れとしてはここで完結。
解説を読むと、あまり大きな支持は得られなかった様子です。まあでも設定としては面白いし、今後これが生かせるようにはなっていくのかな?マーベルユニバースに天才科学者は山ほど居ますけど、そこが使えない時に、このチームにも活躍の場が与えられそうな気がしないでもない。
前巻と同じように、実際に科学とかの分野で活躍する女性たちへのインタビューなんかも入ってて、そこでも挫折の経験は語られてますので、挫折なんてあって当たり前、そこから何度も立ちあがるのもまだ今の時代には必要な事なんだよ、的な纏め方にしたのかもしれません。
ディズニープラスで「マーベル616」ってドキュメンタリー番組をちょこちょこ見進めてますけど「ムーンガール」と「マイルズ版スパイダーマン」をフューチャーした回があって、そこでも挑戦が大事、でもそこには同じように失敗もあるものだ的な所があったりして、その辺がマーベルらしいなと思いましたが、今回のワスプもまたそんな感じがしました。
カマラちゃんの方の「Ms.マーベル」も話題になったのは最初だけで、その後の売れ行きは決して大成功というわけでもない、みたいな話もありましたし、それでもやっぱりこういう挑戦的な作品があって、それをこうして日本語でも読めるっていうのは素直にありがたいなと思います。
しかもね、「スーパーマン:スマッシュ・ザ・クラン」もそうですし、内容として人種問題とかを扱った作品だからこそ、日本人アーティストのグリヒルさんが起用されてるというのもあるのかもしれませんが、こういう意識高い系、テーマ性の強い挑戦作に起用されてるってやっぱり凄い。テレビでたまにある、「世界で活躍する日本人」みたいなのに取り上げられても全くおかしくないレベルです。
個人的にもとても好きな絵柄ですし、フリルのついた可愛いナディアの私服とか凄い好き。ヒーローコスチュームも丁度いろんな意味で今世間を賑わしてる「仮面ライダーブラック」っぽくないですか?おなかのベルトのとことか特に。
グリヒル作品、是非もっと読みたいので、小プロでも優先的に邦訳版をお願いしたい所です。
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