僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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前田建設ファンタジー営業部

前田建設ファンタジー営業部 (特装限定版) [Blu-ray]

監督:英勉
原作:前田建設工業株式会社
  『前田建設ファンタジー営業部1 「マジンガーZ」地下格納庫編』
   永井豪 『マジンガーZ
日本映画 2020年
☆☆☆☆★

 

<ストーリー>
ことの始まりは、とある会議室。高度成長期のころ、ダム、トンネル、発電所など、数々の大プロジェクトに携わってきた前田建設工業株式会社の一室で、上司アサガワが言い放った一言から始まった。「うちの技術で、マジンガーの格納庫を作ろう!」それまで何気なく仕事をしてきた若手サラリーマンのドイと部員達が、上司のムチャぶりに巻き込まれ「マジンガーZの地下格納庫」の建設に挑む物語だ。ただし、実物としては作らない―。彼らに課されたミッションは、実物を作るのと全く同じように取り組むこと。そう、これは心の中に建設するという、日本の技術の底力を駆使したとんでもない無謀なプロジェクトだった!しかし、あまりに突拍子もないプロジェクトのため、なかなか社内の協力を得られない。 加えて、現実世界の常識では到底理解できないアニメ世界の途方も無い設定や、あいまいで辻褄の合わない設定に翻弄されるばかり…。 果たしてファンタジー営業部は、無事に「地下格納庫」の設計図と見積もり書を完成させ、プロジェクトを成功させることができるのか―。

 

ヤバい、メチャメチャ面白いぞこれ。
実話物ですが、実際の企画の方は私は知りませんでした。予告編で見て、割と面白そうだなとは思いつつ、大衆向けのベタな路線で、あくまで一般人視点から見るオタクの面白さやある意味での滑稽な姿みたいなのを描いてるんだろうなという感じもして、私みたいなガチオタな人間が見ても、ああはいはい大衆から見るオタクってこういうイメージなのね、ぐらいで終わる作品なのかと正直タカをくくってる部分はありました。なので結局映画館ではスルーしちゃったんですけど、実際見てみたらこれが異常に面白かった。

 

全体的な人物造形や、序盤の展開はやっぱりちょっとベタかなぁとは思うのですが、マジンガーZオタク=アニメオタクだけを描いてるんじゃなくて、掘削オタクのヤマダさんとか、ダムオタクのフワさんとかが出てきた辺りからグッと面白くなる。

 

いわゆるアニメとかに出てくるものを現実的に考えたらどうなるか?みたいなのって「空想科学読本」とかでやってますよね。私は読んだ事ありませんし、空想科学読本の方向性がいかなるものかはよくわかってませんが、その辺りを足がかりにして、アニメの表現なんて嘘っぱちなんだぜ、現実では不可能で、実際にやったらこんな無残な結果になるんだよ、的な論調って結構ネットだと見かける事が多い。

 

ガンダムでもプリキュアでもヒーロー物でも何でもいいんですが、現実を盾にしてフィクション作品をバカにするような論調が私は嫌いなのです。(逆に言えば、フィクションをフィクションと割り切った上で、それがいかに現実に影響を与えるのか、みたいな方向だとむしろツボ)

 

その辺りの心配がこの作品にもあったのですが、そこは杞憂に終わりました。フィクションの中の出来事を実際に考えたらどう実現できるのか、を真剣に考えるんですね、この作品。

 

そこで先に挙げた掘削マニアとかダムマニアとか、違うジャンルのオタクが、過去にこんな事例があるけど、そこは参考になるのでは?とか真剣に向き合ってくれるし、違うジャンルのオタクなりの面白さやカッコ良さとかが随所に出てくる。おお!ジャンルは違えどこれがオタクだよな、と私は嬉しくなってしまいました。

 

私は浅く広くの人ではありません。好きな物は徹底的に極めたいタイプ。すげぇ変な話ですが、私よく普段から思ってる事があるんですよ。自分が世界一だとか日本一だとかは思わないし、そんなレベルに達するのはおこがましいとは思うので、全国大会とまでは言わないものの、せめて県大会で一位をとれるくらいは極めたいというか、町で一位とか学校で一位、少なくともそのジャンルの中の100人の中のトップをとれるくらいのものは極めていたいと思うし、そのくらいなら誰でも自分が自信もってるもの、極めてるものってあるでしょ?と常々思ってたりする。

 

だから私は結構人に聞くんですよ。これを語らせたら自分の右に出るものはなかなかいないよっていうもの何ですか?って。いや実際それ聞くと、9割はいや~そこまではっていう答えしか返ってこないんだけどさ、別に全国1位でなくても町内会1位でもいいからさ、あるでしょ?って思うんだけど、これを読んでるあなたはいかがでしょうか。

 

私は何かを極めてる人が好きですし、極めてる人の話って面白いんですよやっぱ。まあ極めてるっていうと大袈裟かもしれませんし、ただの自分のこだわりとかでも良いんですが、ちょっとこれは他人には負けない自信があるよっていうものくらいなら、誰でも持ってるんじゃないかと私は思うんだけどなぁ。なんなら専門家のご意見くらいでも別に良いし。

 

逆にこれは自分の悪い部分でもあるんだろうなとは自覚してるけど、普通とか人並みとか、みんなと同じっていうのが大嫌い。そういうのが無い人に対して薄っぺらくてつまんねえな、とかすぐ思ってしまうのが悪い癖です。まあだからこうやってネット内でも自分のブログって城を作って内弁慶になっちゃったりしてるわけですが。

そりゃあ古くは2ちゃんねるは便所のらくがき、ってのと同じで、ネットとかSNSなんてね、つまんないものに溢れすぎててその中で光るものなんてほんの一部しかないじゃないですか。ゼロとは言わないけどノイズが多すぎてその中からこれはって思えるものを探すのって大変じゃないですか?それみんなよく出来るなぁって感心もしてます。しかも私だってそのノイズの一つでしかないんだよっていう自覚もありますし。

でもさ、世の中には自分と全く同じ人間なんか誰一人居ないわけですよ。そこ考えたら絶対誰もがその人しか持ってないものってあると思うんだけどなぁ。

 

って、話がずれた。
映画に話を戻すと、そのプロフェッショナルな部分が抜群に面白くて、いわゆる「お仕事物」という感じで見れるのが非常に面白かった。

人が真面目に働いてるのに、ファンタジー営業部とか何やってんだ?ふざけるのもいいかげんにしろよ、っていう外野の冷たい視線もすごくわかるし、それはそれでね、やっぱり現実の仕事と向き合ってる人にとってはまずそこを大事にしないとっていうのは実際そうだと思います。

 

と同時に、私も管理職とかやってると、優秀な人と残念ながらそうでは無い人の違いみたいなのも結構見えてきたりするものです。凄くありがちですが、やらない理由を探す人と、やる理由を探す人の違いってやっぱありますよね。これだけの理由があるからこの仕事は引き受けられません、それを探すのは簡単なんですよ。でも、大変だけど、やる事で得られるメリットとかを探してやる人の方がさ、悪いけど使える人だわな、というのは実感として凄くある。

 

人は誰でも簡単な道を選びたいです。そこは私も思いっきり同意します。でも、そうじゃない道も選択肢としては常にあって、少なくともそれを視野に入れておくくらいの事はしておかないとまずいよな、ぐらいの感覚は持っていたいよなぁとは思う。

 

ミケーネ帝国が、機怪獣が、あしゅら男爵が、Drヘルが攻めてくるんだろ?だったらやるしかねーじゃん!
私もそう言えるような人間になりたいですわ。

 

うん、ていうか、そういうマジンガーZへのアプローチもまた面白いなと思った次第。

私は作品内の事だけしか見ないっていうのは凄く勿体無いと思ってる人ですし、作品内も見るし、その作品から見える現実の部分、メタ要素なんていかにもな部分まで行かなくとも、作者や時代背景、そういうバックボーンまで含めた視点が一つの作品を見る上で最も面白い部分だと思う方だし、今回の映画はあくまで「前田建設ファンタジー営業部」の映画化企画だとは思うんですが、同じく原作にクレジットされてる「マジンガーZ」の映画化がこれでも別に良いと思うんですよね。

 

というか例えばマジンガーZを映画化しましょうって企画の始まりがあったとして、いきなり今回の話みたいな脚本を持ってきても良いと思うんでしょね。お前変わってるけど面白い考え方を持ってる奴だな、ってなりません?

比べたって仕方ないとは思うけど、「マジンガーZインフィニティ」と、もし比べたら、私はこっちの方がずっと面白いと思うし、これはこれできちんとマジンガーの魂みたいなものが十分に感じられる作品だと思った。

 

しかもね、建設業って大きい所は今でも勿論成長を続けていってる所はあるんでしょうけど、土地開発みたいなものって、やっぱり成長経済の時代が最も発展の度合いが大きかったはずですよね。

 

だって日本の侵略戦争だって、あれってもう日本は開拓しつくしたから中国とかアジア全域を侵略して俺たちの国にしてしまえっていう話じゃないですか。満蒙開拓団とかああいう奴ね。で、日本はその侵略戦争に負けて、日本国内で開拓していくしかなくなったから、じゃあ高層ビルを立てて上に開拓していこうってなったわけでしょう?そんな歴史を踏まえると、じゃあ空想の中で開拓・開発していくんだっていう次の段階を選んだって、メチャメチャ面白い流れじゃないですか?

 

単純に一つの企業だけの話でもなければ、マジンガーの斜めアプローチだけでもない、そういうのを含みつつ、ちゃんと時代や社会の変化みたいなものも作品に落とし込んである。何気にそこ凄くないですが?仕事から社会がちゃんと見えるような作りにしてある所に一番感心しました。ただのオタクいじりだけの映画じゃ無いじゃんこれ、っていう。メチャメチャ面白かった。

 

それでもキャストが仮面ライダー龍玄のミッチーじゃんか!とか、結局最後は超合金Zだよりかい!雑だなおい、でもそれがマジンガーテイストで笑えるじゃんか、と結局はオタクっぽいところに反応しちゃう私でした。


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