僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

見たもの読んだものなどの簡単な記録と感想のチラシ裏系ブログ

映画 魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身!キュアモフルン!

映画魔法つかいプリキュア!奇跡の変身!キュアモフルン! DVD特装版

監督:田中裕太
脚本:田中仁
日本映画 2016年
☆☆☆☆

 

プリキュア映画21作目。
TVシリーズ13作目「魔法つかいプリキュア」秋の単独映画です。

 

監督はTVシリーズ前作「Go!プリンセスプリキュア」でシリーズディレクターを務めた田中裕太。準備期間を考えたら、ゴープリ終えてすぐこちらの方にとりかかったものと思われます。映画の方で監督を務めたのはこの作品が初監督で、後にTVシリーズ16作品目「スター☆トゥインクルプリキュア」の単独秋映画「星のうたに想いをこめて」も手掛ける事になるのですが、そこを系譜として見た時に見えてくるもの、というのがあって、個人的にはそこが面白い部分なので、その辺を軸に語ろうかな?

 

「まほプリ」全体の印象とか感想は例によってコンプリートブックに絡めて改めて語る事になると思います。

 

「ゴープリ」本編はプリキュアって何?というメタ構造が面白い部分でしたし、そこは「映画スタプリ」も引き継いでいて、映画スタプリは、プリキュアって何?映画って何?そもそも作品って何だろう?というのを描いた作品になっている。(と、いうのを語ってる人はほとんど見た事ありませんが)

 

じゃあその間にあるこの「映画まほプリ」もそういう流れがあるのかと言えば、映画って何だろう?っていうのは多分考えた上で作ってると思うのですが、似た系譜の先輩である大塚隆史(映画「プリキュアオールスターズDX」シリーズ、TV「スマイルプリキュア」監督)に習った部分なのかな?と思うのですが、まず映画と言うのは楽しい物であるべきだろう、みたいな感じが今回の作品からは見てとれる。

 

或いはTV「ゴープリ」が結構真面目な作りで、結果的にはであるものの、少々大人向けっぽくなってしまった反省を踏まえてなのか、まず子供達が楽しんでくれるものを、というのを意識してるのが凄く感じられる作品になってますよね。

 

田中監督ってツイッターとか見てる限りでは、決してシネフィルではなくて、多分名画とか100本1000本見てるとかいうタイプの人では無い感じ。なので映画とは何ぞや?みたいな事に関して持論を持ってるというよりは、実際に自分で映画の監督をやるにあたって、自己流に考えたのが今回の作品で、ここで1本作ったからこそ、次の「映画スタプリ」で次の段階に進めたんだろうな、というのがなんとなく見えてくる。

 

正確に言うと、映画スタプリの前にTV「HUGプリ」でTV版プリキュアオールスターズとかもやってるのですが、あれは正直プリキュアオタクがプリキュアファン向けに、本当に観たいクロスオーバーはこいうのだよね、っていう感じの作品になってました。(実際、俺たちの見たかったプリキュアオールスターズはこれだ!って感じになってました)

 

でも、真面目に映画と向き合ってるなぁと思うし、そんな気真面目さは「ゴープリ」から続いていて、そこは何でかっていうと、今回、敵キャラになるクマタをきちんと描いてある辺りからそこは見てとれる。

 

過去映画だと「フレッシュ」「ハートキャッチ」「スマイル」辺りはまだ描いてる方かな?ドラマって主人公と敵対する側の事情や感情をきちんと描かないとあんまり面白くならないものです。対比とか比較対象があって、逆にそれが主人公を引き立たせる役目にもなるから。

 

でもプリキュアは基本そこをあんまり描かない。描かないっていうより描けないというのが適切かな?プリキュアのメインターゲットはストーリーやドラマなんて理解して見てるわけじゃないし、そこの描写に時間を使うなら、プリキュアの姿を描かなきゃならないと。普通の映画なら変身バンクを2回も3回も流すなんてありえない描写なんですが、プリキュアはそれをやるような特殊なコンテンツです。

 

今回の映画、変身バンクは冒頭でいきなり流してしまう。そこはある意味では「つかみ」の部分かもしれないし、穿った見方をすればノルマ消化っぽく感じられて、「スーパー戦隊」でドラマ重視の回をやろうとした時に、冒頭からロボ戦を消化しちゃうのは今でもたまにありますが、ああいうのと近い印象。

 

勿論、そこは十分に気は使っていて、クマタの感情はドラマのクライマックスにもってきてはいるけど、その力の由来とかまでは描かずに、ちゃんと映画としてまともなドラマツルギーを成立させようとする部分と、プリキュア映画と言う特殊なコンテンツのあるべき姿のギリギリのバランスを保とうとしてるんだな、というのが凄くよくわかる。

 

そこはね、決して「俺は本当はプリキュア側では無く、敵側の主張を描きたいんだ!」とかそういうのじゃなく、映画として、ドラマとして最低限描くべき所を描かないと話が成立しないよね、っていう気真面目さだと思う。プリキュア映画だから仕方ないよね、的な妥協では無く、映画として筋は通したい、みたいな。

 

うん、多分そんなのわかんないよねって思うんだけど、私としてはそう言う所をちゃんとやってる所に面白味を感じる。で、それが次作の映画スタプリで別の形で昇華してくわけだし。

 

そんな少ないながらも頑張ったクマタの描写はともかくとして、今回はモフルンこそがメイン。モフルンは願いの石で叶えるべき願いが無い、そして同時にみらいも何を願ったら良いかわからない、というのが二人の関係性として面白い。

 

多分、みらいちゃんとしてはもう願いが叶ってるからなんだろうけど、ここはね、山ほどイチゴメロンパンが食べたいとかギャグ的にそっち方向に振る事も出来るキャラなんだけど、今回の映画ではそれをやらない、というのがまた面白味です。

 

多分、この時点ではTVのラストって知らされてない上で作ってると思うんだけど、そこ知ってると、結構面白くないですか?OPの歌詞の時点で示唆されてましたし、出会いがあればいずれ別れが訪れる事は話の流れで想像できる事ではあるけれど、みらいちゃんがね、何年も引きずったままになっちゃうというある意味重い話だったけど、それだけね、この瞬間が特別なものだったんだなぁと思うと、そりゃ叶えたい願いなんてないわなと。

 

リコ側の視点だと、魔法が当たり前にある世界だし、マホウ界側は、ナシマホウ界という世界がある事は元から認識されてるんですよね。けど、ナシマホウ界側のみらいにとってはそれこそ「今、魔法って言いました!?」っていう夢のような1年間だったわけで、確かにそんな経験したら、人生そこに引きづられるのはわかる気もする。

 

そしてモフルンはどうなのかな?元々のぬいぐるみ時代から魂が宿ってたのかはちょっと不明な部分はあるものの、子供の頃の思い出とかはモフルンも認識してたので、多分元からそこに魂みたいなものはあって、それが自由意思でしゃべれたり動けたりするようになったっていう感じでいいのかな。ずっとみらいを見てきたし、自分がぬいぐるみである事は認識しているので、みらいがしあわせならそれで自分は幸せ。

 

で、それがキュアモフルンになるんだけど、ここはモフルンもみらいたちみたいな人間になりたいと思っていた、とかじゃないんですよね。ずっと守られる立場だったモフルンが、大切なみらいやリコ達を守りたいという願いでキュアモフルンに変身する。ここがね、まごうことなき「プリキュア」だなぁと。

 

大切な誰かを守りたい、そんな気持ちがあれば誰だってプリキュアになれる。それがプリキュアシリーズで最初からずっと一貫して描かれてきた部分。

 

多分ね、映画の企画自体は目玉としてモフルンもプリキュア化させちゃおうか、ぐらいのネタだったとは思うんです。でもそれやるなら、ただの一発ネタとしてプリキュア化させるんじゃなく、ちゃんとプリキュアの本質を外さない形で描くべき、っていうこの生真面目さ。

 

1本の映画として筋の通ったきちんとしたものを作りたい。お祭り的な部分もあれど、プリキュアの本質もちゃんと外さないで描きたい。みたいなさ、作り手の真面目さがものすご~く見えてくる。ギャグシーンとかも、決してノリと勢いとかじゃなく、計算してこれ入れてるよね、と思ってしまうような、誠実かつ丁寧な作りになってる。

 

で、その上でモフルンの死というショッキングなシーンまで入れてくる。勿論、その後のフォローはあるけれど、楽しさだけが映画じゃないよ、って事ですよね。ここはTVシリーズの方のスタッフにちゃんと了承とって入れたそう。

 

そんな基本構造というか根っこみたいな部分の上に、プリキュアオタクらしい田中監督の、細かいデティールとか気配りが随所に散りばめられるのがまた面白い所。

 

まずTVシリーズのセミレギュラーだったマホウ界側のキャラが総出演。今回、そもそもがマホウ界での話なので、そこは普通に出てもおかしくはないのですが、レギュラーの校長先生はともかく、教頭先生、教頭先生、アイザックさん、魔法の水晶、リコのお姉さんのリズ、補修メイト3人に、フランソワさんまで登場。新井里美演じる魔法の水晶なんてセリフ1つだけですよ。映画版という特別な舞台にTVシリーズでサブとして関わってる人達もせっかくの機会なんだからと参加させてあげたかったんだろうな、と思う。

 

その証拠ではないですが、TVシリーズだとナシマホウ界側のサブキャラだった、まゆみちゃん、壮太君、ゆうと君も名前なしのモブながら映画に参加。勝木かなちゃん役の菊池美香のみ、クマタに声をかける小グマとちょっと目立つ役をもらえてます。田中監督、特撮(というかニチアサ枠)も好きな人なので「デカレン」優遇かも。

 

「まほプリ」の中でも映画と言う後々まで残るまさしくな記念作品なんだからTVのレギュラー陣も出してあげようっていう気の使い方。流石に敵側までとは行きませんでしたが、TVは前半後半で敵変わるし、制作期間を考えると流石にそこまではフォローしきれなかったのでしょう。

 

そしてオタクならではの気の使い方というか、まあファンが喜ぶ部分っていうのもあるんでしょうけど、まほプリならではの、フォームチェンジを全種類見せるという描き方。基本フォームのダイヤ、ルビー、サファイア、トパーズを全部出す、尚且つ、トパーズのオプション変形を使って同時に全フォーム出現させて「まほプリオールスターズ」を本家プリキュアオールスターズのカットに合わせて見せるサービス精神。

 

さらにキュアモフルンまでミラクル達に合わせてルビースタイル、トパーズスタイル、パワーアップしたアレキサンドライトまで。(正確には映画のはハートフルスタイルだそうだけど)モフルンのサファイアスタイルもちゃんと設定されてるものの、登場はコンマ1秒くらいなのでそこはこちらのアニメージュ増刊でフォローしておこう。

魔法つかいプリキュア! 2017年 01 月号 [雑誌]: アニメージュ 増刊

挿入歌4曲も監督のディレクションかと思ったら(TVシリーズで挿入歌回多くやってるし)そこはスポンサーからの要望だったそうで、「鮮烈!キュアモフルン」のみ監督が決めて、最初はコーラス入りの変身曲ぐらいだったものが、エスカレートして挿入歌になっちゃったそうな。

 

こういうサービス精神もまた田中監督らしい作風でしょう。ついで言えば、「ゴープリ」では基本、画面映えの為に使ってたレースの演出が、今回は魔法陣としてエフェクトに進化した感じなのも面白い所。まあゴープリでの最終決戦でもそんな感じでしたし、今回は魔法のほうきをファンネル扱いしてたりする辺りもマニアックで面白い部分でしょうか。

 

TVシリーズの初監督から、今度は映画の監督もやりたいとの事で、スケジュール的には厳しい中で、ここまで完成度の高い物を生みだして、じゃあ次はオールスターくらいしか無いじゃん、という流れで、先述の通りTVシリーズの中でではありましたが「HUG」でオールスターズ回も担当。ツイッターとかでは確か、もうプリキュアはやれること全部やったかも、的な発言もあったのですが、そこからよりテーマ性を掘り下げた「スタプリ秋映画」に繋がっていきます。

要はここで、スタプリの前に「映画って何だろう」っていうのをこのまほプリで一度きっちり考えているっていう事です。

 

当然、初監督作、いわば自分の作品とも言える「ゴープリ」には相当な思い入れがあるのはその後から今に至るまでのツイッターの発言とかで凄く良くわかります。春のクロスオーバー作でのレギュラー3年分も終えて、言ってしまえば過去の作品という形になっていく。その分、毎年新しいプリキュアシリーズが生まれて、その世代その世代の特別な作品にはなっていくし、それはシリーズとしてとても素敵な事ではあるものの、同時にどこか寂しさもある。

 

じゃあそれを作品のテーマにしてしまおう、というのが次の「映画スタプリ」なのです。作中のプリキュア達、いや登場人物の全ては、描かれた部分はきっと長い人生の中の一時でしか無い。彼女ら、彼等は人生と言う長い旅の途中であるのだと。

 

観ている人達は、いずれ忘れてしまうものかもしれない。いや、メインターゲットの子供達は、いずれプリキュアを卒業して、忘れて行くのが当たり前。逆にいつまでも卒業しないでそこにしがみついている方がむしろ不自然。(自分も含めてオタクはやっぱりちょっと不自然な生き物ですよ)なのでそれでいい、けれど、心の奥底にしまってある大切な宝物、ふと思い出してたまに聴きたくなるオルゴールのようなものになっていてくれたら。プリキュアがそんな存在でいてくれたらいいな、という作品に結実する。映画スタプリとはそういう作品です。

 

とまあ、ここら辺の流れをね、踏まえた上で、この映画まほプリを考えるというのもまた面白い観方なんじゃないかなぁと思います。

次はドラマCD・・・の前にせっかくだから映画シングルについてちょこっとだけ書こうかな。


www.youtube.com

ああ、そう言えば今回も冒頭にCG短編映画もつくのですが、ディズニーピクサーにひけをとらないくらいビジュアルになってます。ただこれで全編CGの長編を作るとなると、制作期間的に1年では無理なんだと思われます。プリキュアは1年で次の作品になっちゃいますしね。

 

関連記事

curez.hatenablog.com

curez.hatenablog.com

curez.hatenablog.com

curez.hatenablog.com

 

curez.hatenablog.com

curez.hatenablog.com