僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

見たもの読んだものなどの簡単な記録と感想のチラシ裏系ブログ

怒りのロードショー3

怒りのロードショー 3

IKARI NO ROADSHOW 3
著:マクレー
刊:KADOKAWA Enterbrain
2021年
☆☆☆☆

 

いや~青春って…本当にいいもんですね~

映画バカどもの青春 完結


ということで「怒りのロードショー」3巻が出ました。今回で完結なのね。
これ最初は何で知ったんだったかな?たまたまネットで話題になってたから?本屋で何気なく手に取って見た?マクガイヤーゼミで取り上げられてたからだっけ?数年前なのによく覚えていない。

 

でもハマったのはプリキュアネタがあったからです。確か同時期に「スーパーヒロインBOY」って、ヤンキーがプリキュアっぽいアニメにハマる漫画があって、同じくらいの時期に読んだ気がするのですが、そっちは未完のまま止まってるっぽい。

 

シェリフ、ごんぞう、まさみ、ヒデキら映画好き高校生がひたすら映画談議をしてダベってる、いわゆる映画ネタ漫画なんだけど、まさみがアニオタでプリキュアネタがちょこちょこ入る。とゆーか1話そのネタの話もある。しかも相当に濃い。(1巻に収録)

 

プリオタで映画オタでもある私はとても面白く読めました。2巻はガルパン回もあるし、今回はガンダム回もあって、基本的に私はまさみ君を中心に読んでました。

 

2巻まではね、正直、ストーリーらしいストーリーがあるわけでもないのですが、今回の3巻で完結という事で、結構面白い纏め方をしてきました。そこは特に期待もしてなかったし、今回で完結って知らなかったのでちょっとビックリ。

 

今回も基本的には毎話のテーマに沿ったあるあるネタで構成されてはいるんですけど、シェリフが将来の夢を見て、青春の終わりみたいなものを予見するんですね。いつか自分が大人になった時に、今みたいに映画に情熱を注いでるかな?みたいなミドルエイジクライシス的な?

 

この漫画の面白い所は、「映画大好きポンポさん」みたいにクリエイティブな所には行かない所で、(いや私来週ポンポさん観に行くので内容知らないんですが)「桐島部活やめるってよ」みたいに映画を作りたいとかじゃないんですよね。将来社会に出て、なんとなく普通に働いてるけど、あくまで観る側の視点。映画ファン目線は外さないで描いてる。

 

みんなのあこがれビデオショップのナカトミお姉さんとか、ライバル的存在の村山君はまたちょっと違うけど、じゃあ4人で映画作ろうぜ、とかにはならない。

 

これね、意外と重要な気がする。映画好きで、その業界を目指すって人も居るとは思うし、そういう人達こそが今後を支えて行くんだろうけど、多分それ以上の多くの人が、基本的には観るだけの立場だと思う。だからこそ、これは俺たちの漫画だ、みたいな気分にもなれますしね。

 

その視点があるからこそ、映画好き同士で繋がってるだけでダメなの?外の世界とかとも繋がらないといけないの?今は子供って映画見ないよね?子供達に映画を好きになってもらうって何だろう?映画ファンじゃなくても面白いって思える映画は?そもそも面白さって何?とか、映画ファンなら色々と語りたくなるテーマを忍ばせてくる。あと数カ月先だったらきっと「ファスト映画」とかにも触れてきたはず。

 

そういう各話で取り上げられる作品名とか元ネタが凄くツボを突いてきて面白い。

 

ただ一つ気になるというか不思議なのは、方向性としては「映画秘宝」系が好きそうな作品が多いんだけど、あんまり町山系とかライムスター宇多丸系とか、あとは添野さんとか松嵜さんとか、あるいは春日さんとかそういう映画評論家(いやその辺は私が好きな人達ってだけですが)の影がほぼ見えない気がする。


多分、自分が好きな映画を評論家とかにボロクソ言われると、ムキーっ!ってなっちゃう経験があって、その辺を村山君に重ねて描いてきたと思うんだけど、その村山君もずっと描いてきてる内に、彼の事も段々と愛着が湧いてきて、ただの憎たらしい悪役にしたくなくなっちゃったんだろうなぁとか思えて、その辺もまた面白いなと。

 

物語の登場人物って、当然作者の分身なわけですよ。メイン4人は当然そうだろうし、店長なんかもね、将来こうなりたいな、みたいな願望で、トトちゃんとかナカトミおねえさんは、こんな子が居てくれたらいいなっていうある種の欲望みたいな感じかな。

 

1巻2巻はそんな自分の箱庭世界で面白おかしく遊ぶっていう感じだったんだけど、じゃあいざそれを物語として畳むってなった時に、自己アイデンティティの再確認と自分の好きな物に対しての憂いとか不安、そして所信表明をする、みたいな終わり方で、ネタ漫画ではあるんだけれど、作者が背後に透けて見えると言うか、自伝的エッセイっぽい要素もあって、そこがとても予想外の面白さでした。


いや~、真面目に漫画と向き合ってる感じがしてとても良かった。