HEARTCATCH PRECURE!
シリーズディレクター:長峯達也
TVアニメ 全49話 2010-11
☆☆☆☆
『映画トロピカル~ジュ!プリキュア 雪のプリンセスと奇跡の指輪!』でのハートキャッチ組の登場に伴って、TVシリーズ無料配信。
映画単発と違ってこういう機会でもないとなかなかTVシリーズは見返すタイミングも無いので、せっかくだし観ておこうかなと。
という事でハートキャッチプリキュア、TVシリーズの7作目で、ひとつ前の「フレッシュ」からプロデューサーが2代目になって、色々とシリーズの変化が垣間見える時期の作品。
ミュージカルショーの記事でも少し触れましたが、私がプリキュアに興味を持つ切っ掛けになった作品でもあります。たまたまTVつけて流れてたのをなんとなく観てたんですけど、目に入ったダークプリキュアとムーンライトの戦いがやたらとカッコ良くて、凄くインパクトがあったんですよね。(正確にはわかりいませんがサンシャインが出る前だったので、状況的に多分あれは13話だったのかな?)そこから毎週では無いにせよ、飛び飛びで観るようになって、女の子向けアニメだけど、意外と面白い物なんだなぁと思って、そこから一度きちんと観てみようかな?と、次の次のスマイルで沼にハマる、という感じです。
翌年のスイートから挑戦しようかと思ったけど、序盤で離脱しました。勿論、ガッツリとプリキュアにハマってからハトもスイも全部レンタルで全話鑑賞してますけども。
私は女児アニメ全般に詳しい人とかではなく、基本的にはプリキュアオンリーなのですが、知らないなりに、いや知らないからこそかな?最初はハトって、東映女児アニメの集大成みたいな事をやろうとしてるのかな?って思ったんです。キャラデザが「おジャ魔女どれみ」の人ですし、キュアムーンライトの声が久川さんじゃないですか?そこが先代のプリキュアっていう形になってるので、名前と声的に「美少女戦士セーラームーン」を想像させるので、そういった事を意図的にメタ要素として仕込んである、集大成的な作品なのかも?と最初思ったんですよね。
いや実際はそんな事は全く意識して無い作品で、そこは単純に東映アニメーションっていう流れがあるからそうなってるだけだったという話なんですけども。
作品としては花とファッションをモチーフに、テーマキーワードとしては「チェンジ」が特徴の作品。引っ込み思案でおとなしい子だったつぼみが、転校をきっかけに「私はチェンジするのです!」と決意する所からスタート。よくよく考えると中学デビューみたいな話だな。(ちょっと違うか)
変身物という意味でもチェンジって意味の出てくるテーマですし、逆にチェンジがテーマになってるからこそ、過去のプリキュアシリーズにあまり縛られる事も無く、新しい挑戦に挑めたっていう面もありますね。
で、過去の弱気な自分をチェンジするっていう所から始まって、何を変えるのか、ってなると、そこは各々のコンプレックスという話になってくる。
基本的にハトは毎話ゲストキャラを出して、そのキャラのコンプレックスを克服するという話の作り方になっていて、そこは古からの魔女っこ物のフォーマットである、お悩み解決というスタイルをプリキュアでやる、という形になってる。
昔からの魔女っこ物とプリキュアは何が違うのかと言えば、プリキュアは毎回戦闘シーンが山場になるってとこですよね。昔だったら魔法とかを駆使して問題を解決していく形だったわけですが、プリキュアの場合だと、それが戦闘におきかえられてるわけです。
そのアレンジ具合というか、ミックスのさせ方がやっぱりハトは物凄く特徴的で、各話のゲストキャラがデザトリアン化させられる事で、怪物になった時に本心をさらけ出すというのが、見返してみてもやっぱり物凄~~~~く強烈だなぁと。だって自分の内心に抱えるコンプレックスを大声で叫んだり嘆いたりするわけですよ。これ、メチャメチャ重いしシリアスですよね。ぶっちゃけ子供向けアニメでやるような事じゃ無いです。
ただそこは相当に気を使っていて、キャラデザが過去シリーズよりディフォルメを効かせて、リアル寄りではなく、よりマンガちっくな形にしてあるのと、デザトリアンの声を元になったゲストキャラの声優ではなく金田朋子にしてある事で、一生懸命その重さを緩和させてあるというのがミソ。大人が観ると、結構エグイ話をやってるなぁと見ててわかっちゃうんですけど、逆にそこをシュールにも思わせるし、子供はそんな内面まではきちんと理解せずとも見れる作りになっている。
プリキュアってシリーズ事に作品の方向性の違いや描き方は様々ですけど、このハートキャッチの描き方もやっぱり他のシリーズには無いもので、私はハトってプリキュアシリーズにおいても結構な特異点だと思ってます。そしてやっぱりそこが面白い。
金朋地獄、うわ強烈だなぁと思いつつ、私そこで泣いちゃうもの。プリキュアってどこまで言ってもメインターゲットは未就学女児ですし、そこを外す事は今後も無いと思われます。よくオタクが大人向けのプリキュアとかが観たいとか言いがちですけど、それってもうプリキュアでは無いので成立しないんですよ。(そういう人向けに「まどかマギカ」とか「シンフォギア」があるわけで)子供に楽しんでもらう事を一番に考えてある作品です。
けど、作ってる方は当然大人なので、子供が喜ぶもの以外の要素っていうのも絶対に入ってくる部分ではありますよね。変な話、プリキュアを見ている子供達はストーリーなんてちゃんとは理解して見てるわけじゃない。基本は画面に映る絵を見ている。そこを退屈させない為にキャラクターの表情がコロコロ変わったりするんですが、そこはどのシリーズでも意識して作られてる部分です。
じゃあそこでストーリーとかテーマをおざなりにしちゃって良いかと言えば、作る方にしてみればそうも行きませんよね。大人向けに作っているわけではないけれど、一応は誰が見てもきちんと成立した話にはしたい。欲を言えばそこに自分なりの何かは籠めたい。この辺りのバランスが深夜アニメとかとは全く違うプリキュアならではの要素ですし、ある意味では大人から見た時のプリキュアの見所や面白味なんですけど、ハートキャッチはその部分の作り方が凄く面白いんですよ。
序盤の10話まで見返して、そういう所謂「構造の巧みさ」とかが改めて秀逸だし独特の作品だなぁと凄く感じました。
あとは、この時点ではまだ多分そんなには意識してないと思うんですけど、プリキュアシリーズって枠のその後を踏まえた時に、3話で女子はサッカー部に入れてもらえないとか、OPにも出てるスクープ写真を狙うかなえちゃんが、何の為に写真をとるのかとか、プリキュアならではの問題意識とかがあって、なかなかに興味深い部分。
そして個人的には8話のもも姉の話がね、物凄くグッと来ました。
勿論そこは最初のえりかの話と対になってて、姉妹それぞれがお互いに対してコンプレックス持ってるというのが凄く痛々しいし、面白いのはももねえが、それでもモデルの仕事は好きだし誇りを持ってやってくよ、というコンプレックスを克服するんじゃなくて、それを受け入れる、という展開も素晴らしければ、8話のラストカットですよ。言葉を使わずに、えりかともも姉の心の種がココロポットの中で寄り添ってあるとか、メチャメチャ映画的な演出で泣ける部分です。
これね、初代の頃からずっとあるんですけど、プリキュアって前述の通り子供向け作品ですから、気持ちとかをセリフで説明しちゃうような部分は多めです。でもやっぱり作ってる方は大人ですから、ここは説明しないで絵で見せたり流れで読ませた方がグッと来るよな、っていう映画的な演出もちょこちょこ残してたりする。この辺が説明したバランスって部分なんですけど、たまにあるとやっぱり嬉しいし面白い部分ですよね。そういうのってプリキュアを見ててとても面白い部分です。
分解して説明するとね、ももねえがデザトリアンになって自分のコンプレックスを吐き出す部分は「ハト」の構造的な面白さです。そしてそれを排除するんじゃなくて受け入れるのがテーマ的な面白さで、ラストカットの心の種は言葉で説明しない映画的な面白さ。単純に「面白い」と言ってもそこには色々な方向がちゃんとある。
他にももも姉の話だからこそ、えりかの視点や感じ方っていうのも重要で面白い部だったり、この話、ゆりさんも出てくるので、その関係性もまた面白いと言う、流石「プリキュアの8話」とつい言いたくなる感じで、今回の配信の中では抜群に面白かった。そして「海より広いあたしの心も、ここらが我慢の限界よ!」がこの話で初登場というのも良いです。
オタク的には、5話の三浦君、声がキリヤ君の木内さんだったんだっけ、だとか、実は前半はえりかの方が早起きで、つぼみが寝坊しているという、後のイメージとは違う描写があって、ああこれが「オールスターズDX2」での描写に繋がってたのか、とか色々と面白いです。
あとね、どうしてもハトは良くも悪くもえりかの悪目立ちみたいなイメージが凄く強いんですけど、まだ弾け切れて無いえりかもそれはそれで繊細で面白いなと思ったし、見返して何より思ったのは、つぼみが圧倒的に可愛い。作風もあるんでしょうけど、コロコロ表情の変わるつぼみがとても可愛いです。
これがね、シリーズ構成として意図したものなんでしょうけど、最後にゆりさんを叱咤するまでに成長すると思うとね、ホントにグッと来ます。私はキャラ的にはハトだとムーンライト派ですが、ハトで一番好きなセリフはやっぱり最終決戦のつぼみがゆりさんに「月影ゆり!」って言うとこだったりします。あらためて、つぼみも良いなぁと思わせてくれて、配信視聴楽しみになってきました。
10話のダークプリキュア再登場編って長峯監督自らの演出ですし、今だと1クール目の終わりの12話か13話が最初の山場になる事が多いので、そこもちょっと変わってますね。
次の11話~20話はサンシャイン前のポプリ登場まで。
メインストーリーより細かい部分が多かったっけかな?
ではまたその時にお会いしましょう。
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