MOBILE SUIT GUNDAM FAR EAST JAPAN
著:大谷アキラ
刊:小学館 少年サンデーコミックススペンシャル 全2巻(上下巻)
2014年(連載2013-14)
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週刊少年サンデーS増刊で連載されたガンダムコミック。
1年戦争時の日本を舞台に描かれた、歴史に埋もれた名も無い兵士たちの知られざる戦い、みたいな路線。基本はジオン視点。
ジオンの名家であるらしいレノックス家の子息であるゴードン少尉の指揮する部隊に召集されたランディー・メネンデス、リンゼイ・シミズは3人のギムレット小隊を結成オデッサ作戦への参加の為、コムサイで大気圏突入するも、トラブルにより日本へ不時着。新設されたばかりの連邦軍ヴェルマ士官が率いるMS部隊と遭遇するも、彼女らの部隊は、ある目的の為に連邦から離脱した部隊だった、的なお話。
基本、ガンダム漫画はこの時期以前は講談社と角川が独占状態でしたが、おそらくは「ガンダムAGE」の日野が小学館と太いパイプで繋がっていたので、その辺の流れから小学館系列でもガンダム漫画が出るようになりました。
特に明言はされてませんが、子供向けにガンダムブランドを浸透させるためにコロコロコミックでのガンダム記事および漫画の掲載をとりつけたのだと思われます。(それが「トレジャースター」)
それと同時に、「ガンダムAGE始まりの物語」なんかも小学館系列に掲載され、その流れでそのまま同作者がAGEの外伝として「追憶のシド」の連載。そういった所からAGEのみでなく、宇宙世紀物の「アグレッサー」(の前の「黒衣の狩人」からですが)とか「サンダーボルト」の連載も小学館系列で始まると。
あんまり話題にはならない作品ですけど、アグレッサーも割と面白いですし、サンダーボルトなんて後にはアニメ化までしちゃいましたしね。しかもコミック原作をアニメにするという初の事例まで作ってしまった。実際はその流れを作ったというだけで、日野がどうこうでは無いのかもしれませんが、個人的にはそういうとこまで含めて「ガンダムAGE」の功績だと私は思ってたりします。
それはさておきこちらの作品。
1年戦争時における日本というこれまではあまり描かれていなかった部分だけに興味深い素材。いやホワイトベースも日本に寄ってたけれども。
「核」というガジェットと、その顛末。ジオン側も連邦側も、大切な存在を奪われた存在で、それ故の憎しみだった、的なプロットは悪くないのですが、なんかぱっとしない描き方でした。
作者も、本来は単行本1冊くらいの予定だったって言ってますが、これが読み切り1話分くらいだったら結構面白い話だったと思います。
まあねぇ、ガンダム好きな作家が、好きに描いていいよって言われたらそりゃあ舞い上がって、誰だって俺ガンダムを描きたくなるものだろうな、とは思うのですが、基本的によくある雰囲気ガンダム漫画になっちゃったかなという印象でした。
銃器に関してのみ注訳が入るなど、多分ミリタリーが好きなかたなのかな?って思いますし、ジオンが志を持ったカッコいい存在で、連邦はただのクズとしてしか描かないとか、まるで「MSイグルー」みたいな感じで、個人的には全く乗れませんでした。
あと、絵柄がホラー漫画?っぽいというか、細い線で描き込みも多く、割とリアルよりな絵柄なのですが、何故かヒロインだけ「BOYSBE」みたいというかエロマンガ的というか、なんか作者のリビドー全開みたいな感じで凄く浮いてる。ここは作者の趣味なのか、受け狙いなのかはわかりませんが、連邦側の女の人みたいなのと同じ描き方で良かったんじゃないかなぁ?
MS戦も所々何をやってるのかよくわからなかったし、一応のオリジナルMSの野戦用にカスタマイズされた陸戦型ジムも、あれ空中に浮けるんでしょうか?空中に浮いたまま会話してたりと、バトルの見せ場の一つながら結構シュールでした。
おそらくはこれも作者の趣味であろうカクテル要素とか入ってたり、上手く波長が合えば、この雰囲気が好きっていう人は居そうな作品ではありますが、個人的には全くダメでした。あ、シルバーバレットはその後「UC」で名前使われちゃってちょっと残念でしたね。
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