SATOMI HAKKEN-DEN
監督:深作欣二
原作:鎌田敏夫「新・里見八犬伝」
日本映画 1983年
☆☆☆★
<ストーリー>
悪霊につかえ、不死身の妖怪となった玉梓は、かつて里見家に征伐された恨みを抱いて館山城に攻め入った。里見一族は虐殺され、静姫だけが生きのびる。その姫の前に仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の各字を刻んだ八つの霊玉を持った八剣士が集まる。妖怪軍団の巣窟へ攻め入り、激闘の中で一人一人命を失ってゆく八剣士の中、親兵衛と静姫は最後の力で玉梓に挑むのであった。
「スーパーヒーロー戦記」で物語の中に入り込むという展開があって、一つは「西遊記」でもう一つは「里見八犬伝」だったのですが、作中でもどんな話だっけ?なんてセリフがあり、そういや私もよくは知らないなぁという事で、ちょっと気になってしまい、こちらの映画を。
勿論これがオリジナル、というわけではなく、本当のオリジナルは江戸時代に描かれた日本文学史上最大の長編小説と言われる『南総里見八犬伝』というのが大元にある。それを所謂「角川映画」として新たに小説・映画化したのがこちらの作品。
そういえば先日この作品にも出演されてる千葉真一さんがコロナで亡くなられたそうです。私は千葉さんの作品にはそんなに触れていないのですが、世界的に有名な方ですし、やはり千葉さんと言えばJAC(ジャック=ジャパンアクションクラブ)の創立者で、今もその系譜が日本特撮にはかかせない存在ですので、その面でも功績は大きい方です。
千葉真一、真田広之、大葉健二と今回の映画も特撮好きには馴染みの深い面々が方が出演されてます。
うん、というかあまりよく知らないで見たんだけど、特撮映画なのかこれ。
「魔界転生」みたいな路線のSF特撮時代劇でした。
薬師丸ひろこ主演の角川アイドル映画の面も勿論ありますが、その部分よりはるかに特撮物要素の方が強いです。
監督が深作欣二で、そこも「ええっ?」って驚いたんですが、まずそれ以上にね、これって戦隊物映画なんじゃないかと。そんな気分で見てたもんだから、これがすこぶる面白い。いや、映画としては正直何これレベルですよ。大百足とか大蛇の特撮のショボイ事ショボイ事。
でもね、姫の元に8人の宿命の戦士が集うって、まるで「スーパー戦隊」みたいじゃないですか。大場さんも出てるし。戦隊で8人は多いだろうって思う人も居るでしょうけど、最近はぶっちゃけそうでもないし、この作品では尺の都合もあるのか、仲間を集めていく過程でも、基本2人1セットみたいな感じで八犬士が揃う。
ここがね、仲間内でも対立軸が多少あったり、敵側も数人いるので、敵幹部との因縁のライバル対決とかがちゃんとあったりする。一応、薬師丸ひろ子と真田広之のダブル主演っていう形っぽいですけど、(当時はJAC所属ながら真田広之もアイドル的な存在とされてた様子)その真田さんが、最初はマスコットキャラ的な番外戦士なのかと思いきや、実は闇の健族の血を引いており、一時は敵対、その後光に目覚め、正式に「八犬士」として加入するという、なんかもうスーパー戦隊みたいなノリ。
しかも最初は大葉健二が敵側に居て、ああ大場さんそっち側なのかぁと思ってたら、真田広之と共に光に目覚めて八犬士になるという怒涛の展開。
いやこれ闇堕ちだの光墜ちだの、追加戦士のパターンじゃないですか!
おお~、スーパー戦隊の原型がこんなとこにあったのかと、面白くて仕方ない。
1983年って「科学戦隊ダイナマン」ですので、もうスーパー戦隊は始まってますが、まだこの時期は追加戦士の概念は無い時期です。(その前の「ジャッカー電撃隊」のビッグワンも追加戦士としての走りでルーツではありますが、路線変更の影響とかそっちの話ですし)
勿論、今見たらそんな風に思えるっていうだけの話なのですが、元々の江戸時代からある「南総里見八犬伝」っておそらくですけど、娯楽小説として親しまれたものなのかなと思いますし、そうやって仲間集めで八犬士が少しづつ登場してきて、そこから決戦に挑むって、私らがヒーロー物とかプリキュアをワクワクしながら見てるのと同じような感覚だったのかなぁ?なんて思えてきて、すごく面白い。
敵だったやつが八犬士になった!とか一喜一憂してたんでしょうね。いや勝手な想像だけど。
ついでに言えば、八犬士はそれぞれに光の玉を持っていて、そこに一文字づつ漢字が浮かび上がるんですよね。
仁・義・礼・智・忠・信・考・悌
いや私これ「鎧伝サムライトルーパー」で見た奴だ!
ってサムライトルーパーだと仁・義・礼・智・信の5人が主人公側で、敵は四魔将としてそこに「忍」の字が加えられたりしてましたけど、そっちも確か光の玉を持ってた気がします。これが元ネタだったのか。サムライトルーパーはアニメだけど戦隊物っぽかったですしね。(聖闘士星矢がヒットしてクロス物が流行して、その和風路線という作品でしたが)
音楽もなんかRPGっぽい感じで、なんかオタク受けしそうな感じでしたし、(主題歌は何故か洋楽でさっぱり雰囲気に合ってませんでしたが)ぶっちゃけ映画としてはショボイ映画だなぁと思っちゃうんですけど、なんかオタク的な別の視点で見ちゃうと、やたら面白くって、正直夢中になって見てしまった。
やっと八犬士が揃って、いざ最終決戦へ!これは8人が力を合わせて凄い力を引き出すんだろうなぁ、とか思ってたら、ベタもベタな「ここは俺に任せて先に行け!」展開でせっかく集まった八犬士がガンガン死んでいくので、力合わせるんじゃないんかい!って思わず突っ込みたくなったのですが、それぞれの見せ場が割と面白いんですよね。ベタだけど。
しかしこれ、そんな特撮オタク向けのマニアックな映画じゃなくて「角川映画」なんですよね?大ヒットしたのかどうかまではよくわかりませんが、一般層がこんな映画を見て喜んだんだろうか?と不思議な気持ちになります。まあ角川映画つっても色々ありますけれども。
80年代、スピルバーグの映画とかもVFXとかが売りになってる面はあったでしょうし、なんかそういう部分でも邦画も負けないぞ的にやってたのかなという気はします。
今見ると、どうしてもしょぼい映画だなぁと思っちゃうんですけど、それでもまた同時にわくわくさせてくれてぶっちゃけとても面白かった。
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