僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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透明人間

透明人間 [Blu-ray]

原題:THE INVISIVLE MAN
監督・脚本:リー・ワネル
原作:H・G・ウェルズ
アメリカ映画 2020年
☆☆☆☆★

 

<ストーリー>
セシリアは恋人の天才科学者エイドリアンと、海岸沿いの豪邸で暮らしていた。彼女は精神的にも肉体的にも彼の支配下にあったため、束縛から逃れるため家出を計画する。睡眠剤ジアゼパムで彼を眠らせ、家中のセキュリティーを解除し、妹エミリーの車で屋敷から逃げ出した。
それから2週間後。親友のジェームズ刑事の自宅に身を寄せていたセシリアの元に、エイドリアンが自殺をしたという知らせが届く。さらに、彼の兄で弁護士をしているトムに呼び出され、彼女に500万ドルの遺産が残されていると告げられる。彼女は相続金を受け取ることに同意。
しかしその夜から、セシリアは家の中に別の存在がいるように感じ始める。誰もいない部屋で人の気配がしたり、消したはずのガスコンロが着火するなど、奇妙な出来事が次々に発生し・・・。
MIHOシネマさんより引用)


誰もが知っている「透明人間」のリブート作。
本来はユニバーサルピクチャーズのかつてのモンスター映画「ドラキュラ」「狼男」「フランケンシュタインの怪物」「ミイラ男」らのコンテンツをユニバースとして共有するダークユニバースという企画があったものの、トム・クルーズ主演の「ザ・マミー」が惨敗に終わってしまった為、それぞれ別の単独企画になってしまった、という事らしい。「大アマゾンの半漁人」の系譜の「シェイプオブウォーター」はアカデミー賞まで獲ったんですけどねぇ。

 

ただ今回の「透明人間」小規模なジャンル映画ながら、圧倒的に面白い。私は原作の方も未読ですし、最初の1933年版の映画も未見。見た事あるのはポール・バーホーベン版「インビジブル」くらいかな?あとはアラン・ムーアの「リーグオブエクストラオーディナリージェントルメン」にHGウェルズ版透明人間も入ってたかなくらい。

 

包帯グルグル巻きでサングラス、それを外すと・・・みたいなのはもうアイコンというか、透明人間のイメージはまずそこですよね。今回そういういかにもなシーンは無くて、今描くなら「プレデター」とか「攻殻機動隊」辺りで描かれた光学迷彩っぽい路線。

 

ああ、そういえば「僕のヒーローアカデミア」の透明人間の葉隠さん。アメコミオマージュで「ファンタスティック・フォー」のインビジブルガール(ウーマン)だよなくらいにしか思ってませんでしたが、彼女が実はスパイなんじゃないかっていう考察もあるんですね。(あくまで考察でまだ原作でも誰がスパイかは明らかになってませんのでその辺はご承知おき下さい)服は着れるんだし、何かしらの形で顔が描かれてもおかしくないけど、これまで描写が無いのはそういう事?たしかに可能性ありそう。

 

という脱線話はさておき、今回の透明人間。
「ソウ」インシディアス」の脚本を手掛けたリー・ワネルというのも関係してるかもしれませんが、まずカメラの使い方が抜群に面白い。いわゆるJホラーの手法が使われてるんですね。

 

直接は見せないカット割りというか、なんか怖い物が出そう出そうで・・・出ない。でもたまにチラっとだけ映る。これがあるから何も無い部分までが、もしかして何かが映ってるんじゃないかという緊張感と怖さに繋がって、より恐怖感が増す、という演出です。確かリー・ワネルは関わって無いシリーズですが「パラノーマル・アクティビティ」なんかでもあちらの映画で使われた演出。

 

今回「透明人間」と言う事で、何気ないシーンでも、もしかしたらこの画面の中に見えてないだけで実はそこに透明人間が居るのでは?という面白い演出になってる。意味ありげな視点だったりカット割りやカメラの動き。いや言われてみればこの演出、透明人間がテーマの作品にぴったり。昔の映画もこんな演出あったのかな?ちょっと興味わいてきた。

 

で、そんな劇中内の部分に関してもそうですが、そもそも映画って我々観客側が透明人間みたいなものなんじゃないの?そんなメタ要素も考えてしまう面白い演出で、これは新しい視点を与えてくれる結構画期的な映画なのでは?とも思えます。

 

社会的弱者としての透明人間。世間的に居ても居なくても特に感知されるような存在じゃ無いという意味での「透明人間」っていう解釈も、大きくはフィーチャーされてないものの、そう言う部分も含ませてある感じではありましたし、直接その透明人間が物理的に存在している事が見える瞬間は思わず声が出てしまうくらいビビらせられましたし、いやこの場には流石に居ないだろうってとこで実はいきなりビックリさせられたり、「透明人間」で考えられるアイデアがここぞとばかりに描かれてて、もうメチャメチャ面白かった。

 

こんな古臭くて使い古されたようなアイコンを使って、ここまで面白く出来るのか!と唸らされる大傑作じゃないでしょうか。難点を言えば、透明人間と取っ組み合いみたいな事をしてるシーンが、流石にそこは一人芝居をしてる感があったかな?くらい。

 

私は映画の面白さや評価なんてその人それぞれによるものだと思ってる人なので、あんまり人にお勧めとかはするつもりは無いのですが、この作品は割と万人にお勧めできる作品かも。

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