VIOLET EVERGARDEN
監督:石立太一
原作:暁佳奈
TVA 2021年
☆☆☆
録画してたものをようやく観ました「特別編集版」
なるほど、TV最終話までを含めた、総集編映画的なものをTV媒体用に作ったというより、オムニバス形式風に纏めてきたのか。
次週予告で外伝の告知もあったのも含めて、プロローグ的な部分は抑えておきつつ、心に響く良いお話、みたいな所にフォーカスしてきたか。
小さいコンティニュティや、実は各話のエピソードがヴァイオレットの理解や成長にテーマとして重ねてあったりはしましたが、大枠では独立した単話ごとのオムニバス集としても見れる作りには意図的にしていたようなので、そっちのアプローチとして特別編集版を作ったと言う感じなのね。
外伝と劇場版はまだ見ていないので何とも言えませんが、変な話「ルパン三世」みたいにこの枠組みを使って今後も単発ドラマとして作って行けそうな可能性も感じました。
これが正解だったと断言はしませんが、「ヴァイオレットエヴァーガーデン」という作品の魅力を伝える為にとったアプローチとしては悪く無いかも?とは思えました。
ヴァイオレット個人のパーソナルな物語として急ぎ足で話を纏めても、じゃあそれが世間に届くのか?と言ったらちょっと難しい気はしますし。
TVシリーズを見た時にはあまり感じなかったんだけど、なんかかつての世界名作劇場っぽい雰囲気があって、そこが面白かった。養成学校時代の先生のローダンセさんとか、エヴァーガーデン夫人とか、「ハイジ」のロッテンマイヤーさん的な(なんとなく程度ですよ)、厳しい中年おばさんなんだけど、時にやさしさも見せるような感じが名作劇場を見てるような気にさせるのかなとか思ったり。
まあかつての名作劇場とかだと、主人公はおてんば娘みたいな感じで、それをしかりつける、みたいな何となくのイメージですけど(ゴメンなさい、内容語れる程しっかり見た作品はありませんので)ヴァイオレットは無感情でおてんばと言うには度を過ぎた殺人マシーンですけども。その辺が現代的なアニメだなと思いつつ、名作劇場もその背景に戦争の影とかあったような無かったような。名作劇場では無く映画ですけど「サウンド・オブ・ミュージック」とかにはあからさまに背後に戦争ありますしね。
戦闘美少女なんてオタク臭が濃すぎて、こんなのオタク以外には響かないでしょ?という気がするんだけど、背景に戦争の悲しさがある、くらいだとオタク系に慣れて無い一般層にも若干の引っかかりを残せるのかな?という気がしなくもないです。まあ、オタクが必死になって考える一般人の考え方なんて、どこまで的を得てるかわかったもんじゃないですけれど。
で、ヴァイオレットにまつわるそんな「死」の描写が小出しにされて行くわけですが、今回の特別編集版でピックアップされた二つのエピソードも、「死」を描いた話なんですよね。一つ目の劇作家の娘と、逆に娘を残してこの世を去る事になるお母さんの話と。
私はこの作品、リアルタイムではなく、今回の機会であえてTVシリーズの方から見てみたわけですが、特に後の方の10話は「ヴァイオレットエヴァーガーデン」という作品を代表する「泣ける話」として物凄くピックアップされてました。中には、10話のみの1エピソードのみを見て泣けるかとか、下手したら最後の手紙のシーンだけで泣けるかとか、そんなのがyoutubeにいっぱいあって、ああ~今はこんな消費のされ方をしちゃうんだ、って結構モヤモヤしました。
で、特別編集版も、TVの最終回付近とかじゃなく、そこをクライマックスに持ってきてたりする。それはこの作品における伝えたい部分だからそこが特別な意味があるんだよって事なのか、単純に人気エピソードで評判になったある種の鉄板部分だから外せないっていう判断なのか、その辺はヴァイオレット歴も浅く、まだ熱心なファンとまではなっていない私には判断しかねる。
2時間の枠の中で、病気で亡くなる話が2度も入るんですよ?もしこれが映画だったら、同じ展開を2度やるって、メチャメチャ下手くそな構成です。あるいは逆にリフレインさせる事でより深く強調する事で、テーマと直結させるような重要な部分かのどちらか。
プロローグ部分のルクリアさんの話は背後に「戦争」があるんです。でもその後の二つのエピソードは戦争とは関係の無い所の「病死」であると。ここ、どうなのかなぁ?
あえて違う物を描く事で対比させているのか、その辺りの判断はしかねる。濃いファンの人にその辺りはどう読み解いたのか聞いてみたい部分。個人的には最初に書いた通り、今回はオムニバスの手法をとって、あくまでTVの特別版、決して映画として作ったわけじゃないよ、という風に感じてしまったんですけど、実際はどうなんでしょうね?
ヴァイオレットは病死の事は「仕方の無い事だったのです」っていう言い方をするんだけど、じゃあ戦争で自分が奪った命はどうだったんだろうか?過去は変えられないから、それを受け入れて未来を生きろ、それが君を愛している人が君に託した望みなんだ、っていうのが作品としては大筋で、おそらくはそれが視聴者へのメッセージやテーマにもなってると思うので、上手くそこが噛み合いそうで噛み合って無い感じがちょっとモヤモヤします。そこにきちんとしたロジックが見いだせて無い状況。
スタッフインタビューとかもweb上にあった2~3くらいしか読んで無いし、そういう読み解き方をしてる人を探すのには「ヴァイオレットエヴァーガーデン感動しました!」っていうのばっかりが多くてそれがノイズになってまだ探せてません。
外伝と劇場版を見終わったらそういうの探せるか、自分で辿りつければいいのだけど。
あ!これでこの作品の全部が理解出来た!全部この文脈で読み解けるし、断片的な色々なピースがカチっとハマる瞬間みたいなものってあるんですよね。そういうのがちゃんとある作品なのかなとは思うのですが。
とりあえず、次は外伝を見ます。
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