www.youtube.com原題:GHOSTBUSTERS: AFTERLIFE
監督:ジェイソン・ライトマン
アメリカ映画 2021年
☆☆☆☆★
<ストーリー>
30年間にわたり原因不明の地震が頻発する田舎町。そこで暮らし始めたフィービーは、祖父が遺した古びた屋敷で見たこともないハイテク装備の数々と〈ECTO-1〉と書かれた改造車を発見する。科学者だった祖父イゴン・スペングラーは〈ゴーストバスターズ〉の一員で、30年前にニューヨークを襲ったゴースト達をこの町に封印していた。地震の原因がゴーストの仕業だと突き止めたフィービー。「なぜこんな場所に封印を?おじいちゃんが死んだとき一体なにが?」…祖父がこの町に隠した秘密に迫ろうとしたその時、ゴースト達の封印が解かれ、町中にあふれかえる。いま、ゴースト達の復讐劇が始まる――
仕事が忙しすぎてなかなか映画館に行けずにいます。週一くらいでは行きたい所ですが、9時とか10時まで仕事してるとそもそも上映時間に間に合わないし、多少早く終われても、あまりに疲れきってると途中で寝ちゃうし、繁忙期の3月いっぱいくらいまではこんな状況が続くかなという感じ。
そんな中で、「スパイダーマン」以来久々の映画館。昨年から延期が続いていた「ゴーストバスターズ:アフターライフ」を見てきた。情報出てからずっと楽しみにしてました。
と言っても、私「ゴーストバスターズ」の大ファンかと言えばそんな事は無い。80年代に大ヒットして、TV放送も何度もされてましたので、そこで何度も見てましたし、今回の作品の為に過去作品も見返して準備してました。何を今回期待してたのかっていうと、やっぱり監督がジェイソン・ライトマンっていうとこですよね。
「サンキュー・スモーキング」「ジュノ」「マイレージマイライフ」辺りは映画館で見てますね。批評家筋からの評価も高い監督ですし、何よりオリジナルの84年版「ゴーストバスターズ」のアイヴァン・ライトマン監督の息子っていう所が今回は大きい。
作中の設定も、オリジナルのゴーストバスターズの世界観そのままに、そこから何十年も経った後の子供達の世代の話ですので、その子供達が何を思うのか?っていう現実の要素とリンクしているメタフィクションとしてそこを重ねて見れるわけで、そこをちゃんと腕のある監督がやってるんだから、それはきっと面白くなるだろうという期待がありました。
私は結局スルーしちゃったけど「マトリックス:レザレクション」とか、「シャイニング」の続きの「ドクタースリープ」、後は「トロン:レガシー」なんてのもありましたよね。10年20年、或いはもっと時間が経過してからの続編。企画としては、知名度のある作品をリブートしようって感じなんでしょうし、アメコミヒーロー映画と続編以外の企画が通らなくなったって言われる現状のハリウッドの負の部分も背負ってはいるものの、これはこれで興味深いジャンルではあるのかなとは思います。
後に書きますが、単純な続編としての部分以外でも、面白い部分をひっぱり出してきたなって思えた作品でしたので、個人的にはその部分が一番面白かった。
ゴーストバスターズって、今回以前にも前から続編の企画は何度か出ては消え、出ては消えで消滅してました。女性版として作られた2016年のリブート版もそういう流れで出たものですよね、多分。安易な企画なら乗れないって感じで、ビル・マーレイがなかなか首を縦に振らなかった過去の続編企画ですが、そんなこんなの中で、オリジナルでイゴン・スペングラー博士を演じた、ハロルド・ライミスが亡くなられてしまった。
オリジナルのメンバーが揃わないならもうやる意味も無いなと、続編は難しいと思われて来ました。リブート版みたいに、全く違う形でやるなら良いんでしょうけど、ゴーストバスターズってちょっと特殊な作品で、元々ストーリーや脚本ありきの映画というより、「サタデーナイトライブ」という番組に出ていたコメディエンヌが映画と言う舞台を使ってやるスペシャルなコント映画みたいなものだったわけです。映画俳優と言うよりは、そういったコメディエンヌの特別舞台みたいな位置付けで作られた作品でした。リブート版もその辺の流れは踏襲して作られていますしね。
なので普通の映画と同じ感覚で作ってしまうと、ちょっとそれは精神性が違うかな?安易なヒット作の続編になっちゃうよね、っていうのがゴーストバスターズの特殊性でした。アイコニックなものとして知らない人が居ないってくらういには大人気作品で、NY市民にとってはスパイダーマンなんかと並ぶ、俺達のヒーローみたいな作品だったわけです。
なのに今回、NYが舞台ではありません。さびれた鉱山の田舎町。それでも許されたのは、オリジナルを作ったアイヴァン・ライトマンの息子が手を上げたから。ゴーストバスターズと同じような作品を作るのではなくて、ゴーストバスターズの子供達が、その後に何を作るのかっていう、オリジナルとは別ベクトルの作品です。やっぱりそこはとても面白い部分。
これがね、もし第3者だったら、ああ2次創作的な感じか、で終わっちゃうんだけど、実際の親子関係だったらまた違う感じかも?と思わせてくれるし、血筋が全てとは言わないけれど、不思議とそれはそれで興味深くは見れたりしますよね。
亡くなったイゴン・スペングラー博士の孫達が主人公であって、直接の娘(主人公にとってはお母さんですが)も出てくるのですが、そこはストーリーラインの脇の部分、孫たちにとってはおじいちゃんが何をした人なのかはほとんど知らない、というという距離感のとり方が絶妙。
監督自身は直接の親子なんだし、そこを軸に描きそうなものですが、あえて親子では無く孫の関係を描き、知ってる人は知ってるだろうけど、今の大半の子供達はオリジナルのゴーストバスターズの事は多分ほとんど知らないだろうっていう判断ですよね。この判断が出来るのが流石です。自分のエゴを通すんじゃなくて、客観性をちゃんと持ってる辺りは明らかにジェイソン・ライトマンのお父さんとは違う資質です。
で、主人公のフィービーちゃん。実は予告を見てた時点では私、彼女の事は男の子だと思ってました!え?女の子だったんだって、劇場で見てて初めてそこで知ってビックリしたんですが、そんなジェンダーレスっぽい部分というか、男とか女とかそんなの関係ある?私は私っていう、ちょっと独特な子で、これがね、2016リブート版への目配せにもなってるのかな?という気がして、個人的にはとても嬉しくなりました。あの話で描かれたものとは違う話だけど、あれはあれで決して無かった事にはせずに、テーマとしてちゃんと落とし込んであるよ、って言う感じに思えたんですね。ジェイソン・ライトマン、どこまで優秀なんだ。
ああ、私吹き替えで見たんですが、フィービーの声だけどっかの芸能人がやってるくさくて、いくら感情の起伏が少ない子という設定であっても、吹き替えはクソでした。こういうのこそ悠木碧案件じゃないのか。丸メガネだし。
そんなフィービーちゃん、スペングラー博士の変人っぷりを引き継いだのか、まさに血は争えないな、という感じがしてとても良かったし、お兄ちゃんはまたお兄ちゃんで面白いし、そのガールフレンド、そしてフィービーの相棒になるポッドキャストもまた面白くって、この4人が実質新生ゴーストバスターズ的な存在になるんですけど、ここがね、凄く「グーニーズ」感が強い。
設定やストーリーラインなんかは1作目をなぞってる部分が多いんですけど、ジェイソン・ライトマン、実は今回「ゴーストバスターズ」という作品のみならず、80年代キッズ向けジュブナイル映画みたいなものまで復活させてきます。
ここがね、私は今回の映画で一番良いと思った部分でした。企画としてはね、ノスタルジー的な部分もあるとは思うんですよ。かつてゴーストバスターズが好きだったおっさんおばさんがまた新作やるんだって喜ぶような部分。でもそれって今の人はどうなのかな?とも思うんですよね。タイトルとかテーマ曲くらいは聞いた事あっても、今の人がゴーストバスターズの新作やるんだって聞いてテンション上がるのか?っていう。
私も別にファンでは無いけど、映画オタクですから歴史的に有名なものを見たり、色々と勉強したりしてるからまた感覚は違ってくるんだけど、古い映画を改めて見返してみたり、見て無い作品を今になってチェックしたりする中で、私にとってのノスタルジーもそれは否定はしないんだけど、過去にも何度か書いてきたように、80年代とか90年代映画らしい良さっていうのも中にはあって、変な言い方だけど、今の視点で見ると結構雑な映画だなと思いつつ、映画ってそれくらいでも良いんじゃないの?みたいな感覚もそれはそれであったりするんですよね。
例えば今回で言えば、納屋で寂れついていたエクト1を修理するんだけど、ゴム系の劣化したものとかは自分で修理するの無理でしょ?とか、ガソリンはどこからもってきたのよ?とか、リアルに考えると無理がある気がするけど、そこをいちいち気にしてたら仕方ないんじゃないの?とも思ったりするんですよね。
今は昔と違って娯楽の幅も増えたし、子供達がワクワクして見る映画とかは「鬼滅の刃」とかになってるのかもしれないけど、子供が主人公のジュブナイル冒険物の映画とか、ほとんど無くなっちゃいましたよね。いや、ゼロでは無いんだけど、もう80年代と同じような感覚のメジャーなものではなくなってしまったというか。
JJエイブラムスがスピルバーグ映画的なものを今やってみようって感じで「スーパー8」とか作った事もありましたけど、正直私はあれ、ノスタルジー作品だと思ってしまった。
あとは「ワンダーウーマン1984」でも、80年代っぽさを再現してみました的な事をやってたけど、それはパロディーにしか思えなかった。
でも今回、ノスタルジーでありつつも、ちゃんと現代的なアップデートをしつつ、今の時代にこういう映画って無いよね?全く同じじゃないけれど、あの辺のテイストを持った今の映画を作ってみたよ!っていう感じがして、ここが本当に素晴らしいと思った。
ノスタルジーだけではなく、コピーだけでもなく、反骨して正反対なものを作っちゃうわけでも無く、あの時代のテイストを入れつつ今の作品として魂は受け継ぐけど、また別の新しい作品として作り変える、というのを絶妙なバランスで描き切った作品に思えて、これは凄いなと。
ただまあラストの所の、亡くなった人までCGで再現というのは個人的には抵抗あったかな。ゴーストの話なんだからこういうのも有りだろう、っていう作品の世界観的にはアリっぽい感じがまた難いのですが。
ゴーストバスターズってね、そもそも批評家受けとかを狙った作品じゃ無いですよ。それを批評家受けしまくってる優秀な息子がね、脱構築とか小難しい手法ともまた違って、折半とでも言うのかな?父親のレガシー(遺産)を受け継いで、ちゃんとリスペクトを掲げつつ、自分の作品として作り上げる。その上、自分の得意な手法だけでなく、あの時代の映画の面白さもあるんじゃない?ってそういう所まで入れてくる。
これ、映画の歴史においても結構凄い事をやり遂げたんじゃないかと。果たしてこれが興行成績に上手く繋がったりするのかは微妙な所ではありますが、映画ファンの間で、ジェイソン・ライトマン凄い事やったよねって後々まで語られる凄い偉業を成し遂げた作品になったと思います。
単純に「面白かった」のみならず、非常に語り甲斐のある1本でした。
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