僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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亀は意外と速く泳ぐ

亀は意外と速く泳ぐ デラックス版 [DVD]

Kame wa igai to hayaku oyogu
監督・脚本:三木聡
日本映画 2005年
☆☆☆☆

<ストーリー>
平凡な主婦、片倉スズメは平凡に暮らしている。
生まれたときからの腐れ縁で親友の扇谷クジャクがダイナミックに生活している反面、スズメは絵に描いたような平凡さ。

偶然「スパイ募集」と書かれた小さなポスターを見つけ、平凡から抜け出したいのと興味本位から電話をかける。
そして出会った某国のスパイ、クギタニシヅオとエツコ夫婦。
とにかく平凡に暮らすことがスパイ活動なのだという。
活動資金500万円を冷蔵庫に入れたスズメは、シヅオとエツコから目立たない生き方のコツや社会の裏側を教えられるのだが…。
あらすじは「MIHOシネマ」さんより引用


現在公開中の「大怪獣のあとしまつ」ですが、何かネットでは「デビルマン」級のクソ映画が来たとか騒がれてますが、話を見てる感じだと、期待してたものとは全く違うものだった、的な感じが多い様子です。

 

私も一応見ておこうかなと思ってたのですが、なんか公開前から、これ面白いのかな?という不安が結構見受けられました。
ん?だって監督・脚本が三木聡なんだからいつもの感じじゃないの?普通にシュールなコメディーだと思うけど・・・と私は思ってたのですが、「シン・ゴジラ」と比べてどうのという意見が多い。え?何でそっちと比べるの?

 

三木聡って有名じゃ無いんでしょうか?「時効警察」とか「熱海の警察官」とか、ドラマが割とヒットしてませんでした?実は監督は怪獣好きで、いつもの作風を封印して真面目に作ったら、駄作になっちゃった、みたいなパターンじゃないんだよね?予告編を見る限り、いつもの岩松了とかふせえりがいつもの感じで出てる様子だけど・・・

 

とりあえず、実際見てこようかとは思ってます。
実は三木聡監督作、結構好きなんですよね。ドラマは見てませんでしたが、初期の映画は好きで、実はこちらの「亀は意外と速く泳ぐ」はDVD持ってるくらいには好きだったので、久々に見返しました。

 

考えてみればね、私の大嫌いな福田雄一とか、ああいうのに通じる作風ではあるよな、とは思うんです。三木組の定番の俳優さんが、話とは関係無いようなシュールなネタで笑いをとるという部分では近いとも言える。
福田雄一とかだって、最初の1本は面白いと思うんですよね。毎回同じ事を繰り返してるから、なんだこれ、何やっても同じじゃん!って私は大嫌いになりましたし、「トリック」の堤幸彦とかも同じような作風。私はうんざりして大嫌いな監督です。

 

三木聡監督、この作品の前に「イン・ザ・プール」とかそこそこヒットしたはずですが、そっちは見て無くて、何の情報も無く、これどんな作品なのかな?と前知識ゼロの状態で「亀は意外と速く泳ぐ」を私は劇場公開時に観ました。今まで見た事の無いタイプの映画で、メチャメチャハマった。以降「ダメジン」「図鑑に載ってない虫「転々」インスタント沼」くらいまでは劇場鑑賞してます。その辺の時期は年間100くらいは映画館で見てた時期なので、毎回楽しみにしてました。忙しくて映画見れなくなって、それ以降のは見なくなっちゃったのですが、久々に名前を聞いて、「大怪獣のあとしまつ」も見ようとは思ってたんです。

 

でも、10年前とは自分の感覚や好みも多少変わってるかなぁとも思うし、今回改めて考えて、福田雄一とかそっち系なのは確かだよな、当時は新鮮だった「亀は意外と速く泳ぐ」も、今見ると違うかも?とか思いながら、ドキドキしつつ久々に見てみると・・・

 

いや、面白かった。というか泣けた。

 

ああ、これフィルム撮影じゃ無くてビデオ撮影だったか、とか思いながら、序盤は、う~ん上野樹理と蒼井優が正直作風と合って無い、脇が活き活きと演じてるのに、なんか主役が監督に言わされてる感が強い。昔はこういう作風に慣れて無かったから面白く感じただけなのかな?とか微妙に乗り切れない感じはしてしまいました。

 

これは確かに今見るとちょっとキツイかも?なんて思いつつも・・・うん、そう思ったのは序盤だけでした。中盤以降は素直に笑って見れましたし、いや楽しいなこれ、なんて思いながら見てたらね、エンディングで思わず泣いてしまった。

 

泣くようなストーリーじゃないんです。昔何度か見てた時も、泣いた記憶なんて全く無いです。

 

でもね、何の取り柄もない主人公のスズメが、スパイと言う肩書を得る事で、何も無い日常がちょっと違ったものに見えてくる。何も無い事は別につまらない事なんかじゃないんだ、ちょっと視点を変えるだけで、日常がこんなにも面白い物に思えてくる。そこまではちょっとした良い話ですよ。

 

でもね、そんな楽しい仲間と突然お別れする事になる。現実に戻りなさいって言われるのよね。

 

でも彼女はもう多分大丈夫。ちょっとした行動を起こす勇気、楽しい仲間たちとはお別れする事になったけど、もうあなたは以前のあなたとは違う一歩を踏み出せたよね、というのをセリフとかじゃなく、さらりと描き切る辺りが非常に上手い。

 

モラトリウムの終わり、的な感じかなぁ?ちょっと違うか。楽しい時間にも、いずれ終わりはくるんだよ、でも、それでも人は生きて行くんだよ、みたいな事を遠回しに描いてる感じがして、でもそれでも大丈夫、今のあなたには違った景色が見えるでしょ?って言われてるような気がして、グッと来てしまった。

 

これ、ちゃんとそこを意図して描かれてますよね?ただのシュールなギャグや小ネタを楽しむだけの映画じゃ無い。物凄く真っ当な映画じゃん。

 

良かった、今見返しても全然面白かったし、むしろ良い映画だった。

 

バラエティとか舞台の構成作家出身ですけど、ちゃんと映画と向き合って作ってる感じはしました。

 

さて「大怪獣のあとしまつ」一体どうなってる事やらですが、そんなに不安にならずに見てこれそうです。

 

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