僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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大怪獣のあとしまつ

www.youtube.com監督・脚本:三木聡
日本映画 2022年
☆☆☆★

 

<ストーリー>
人類を未曽有の恐怖に陥れた巨大怪獣が、ある日突然、死んだ。 国民が歓喜に沸き、安堵に浸る一方で、残された巨大な死体は徐々に腐敗・膨張を進めていた。 爆発すれば国家崩壊。終焉へのカウントダウンは始まった。絶望的な時間との闘いの中、 国民の運命を懸けて死体処理を任されたのは、警察でも軍でもなく、3年前に突然姿を消した過去をもつ1人の男…。 彼に託された<使命>とは一体? 果たして、爆発を阻止することができるのか――!?


う、う~ん、これは・・・感想書くの困ったぞこれ。
ネット上では世紀の駄作と大炎上。令和のデビルマンとか言われる始末。三木聡監督脚本というのを知った上で見てる人は、こんなもんでしょ?という意見もあるものの、あきらかに少数。

 

当然ながら、私は後者になるものだと思ってました。

へぇ~、三木聡なんだ。昔結構見てたし、割と好きな方なので、題材も面白そうだし怪獣映画に対してのこだわりや期待は無いけど一応見ておこうかな?くらいの感覚。

 

おそらく世の中が文句言ってるのは「真面目な怪獣映画と思ったらナンセンスギャグばっかの、見たかった作品とは180度違った。何これ期待外れ」と言う部分なんだろうなと。

対する私は「そりゃあ三木聡監督だもの、怪獣映画のフォーマットを使って、中身はナンセンスギャグばっかの変な映画なんでしょ」と思って見たわけです。

 

が!私が想像してたのともちょっと違った。これ、意外と怪獣映画を真面目に作った感じじゃ無いですか?もしこうだったらマズイかなと想定していた「いつもの作風を封印して、別のものに挑戦してみました」に一番近い感じでした。いや、決していつもの作風を封印してたわけじゃないんだけど、いわゆるいつもの三木作品と言うにはそれはそれで抵抗がある感じの、よそ行きの感じが凄くしていて、これは困ったぞ、というのが正直な所です。

 

単純に、面白かったのかつまんなかったのかと言えば、普通に面白かったです。ただ、ギャグセンスとかコメディー部分に関して素直に面白かったかと言えば、う~ん、そこは流石にちょっと・・・な感じはしてしまった。でも、つまんないのって官僚ギャグだからってのもありますよね。

 

まずこの作品を語る前に一つハッキリさせておきたいのは、私「シン・ゴジラ」を評価してません。映画好きとしてはだいぶ珍しい方だと思いますが、逆に私はシンゴジの方が思いっきり萎えた作品なんですよね。

 

ただの逆張りか?って思う人も居るでしょうけど、きちんと説明しておくと、シンゴジの前半部分は凄く好きな路線だったんです。実際に現実に怪獣が現れたらどんな混乱が起きるのか?政府はどんな対応をするんだろうかみたいなのをシミュレートするような部分はとても面白かったし、凄く好きな路線なんですけど、あの映画って、後半は露骨にエンタメ映画みたいになっちゃうじゃないですか。そこの部分が物凄く苦痛だったんですよ。せっかく前半はリアルにやったのに、何で後半はこんな絵空事を描くんだろうって、とても残念な作品でした。

 

日本人が力を合わせれば、怪獣=ゴジラ=災害を乗り越えられるんだ、みたいなのがね、嘘臭くて凄く嫌だったんです。だって現実は違ったじゃん。「現実VS虚構」というキャッチコピーでしたけど、あの映画って虚構の方を優先させたんですよね。そこが私が一番気に入らなかった部分です。

 

そういう視点で見た時に、今回の「大怪獣のあとしまつ」の終わらせ方の方が、私は誠実だなと思いました。

 

今回ね、シンゴジ以上に、緊急避難区画だとかガスをベントさせたり海に流すとか、風評被害とか、思いっきり原発で私らが経験したものをストレートにブチ込んで来てましたよね。

で、実際はどうなんでしょう。原発事故から10年経った今でも、当時と何も変わらず、何も解決してませんよね。みんなそこから目をそむけてるだけで、放射性物質は無限に溜まり続けてるわけです。

 

「フクシマ50」なんていうおぞましい映画もありましたけど、フクシマ50とシンゴジラって私は同じ部類だと思うんです。現場の人は頑張ったんだから褒めてあげようよ、日本人凄いよね、みたいな方に気持ちを誘導しようとしてるけど、いや解決して無いし!まさしく臭い物に蓋をして、現実から目を背けてるだけでしょ?としか思えないんですよね。

 

「大怪獣のあとしまつ」・・・いや、これ普通に「原発事故のあとしまつ」って言い換えた方がわかりやすくて良いと思うんですけど、オチのネタバレをしてしまうと(オチを知りたくない人はご注意を)

 

 

ウルトラマンが助けてくれたっていうオチでした。まあ最初から「デウス・エクス・マキナ」の話が出るので、そこはオチっていう程のオチでは無いとは思うんですけど、結局はそういう人知を超えたものでなければ原発の後処理なんて出来ないんだよ、それって日本人が昔から言ってる、神風が吹いて問題は解決したっていうのと何も変わらないよね?それってどうなの?というのを描いたと思うんですよね。

 

アラタだったかな?特務隊で光の巨人に変身する人。だったらあいつが最初から解決すればいいじゃん!みたいなナンセンスオチにも見えますが、そういうデウスエクスマキナに頼るんじゃなくて、人として出来る事を考えてなるべく最後の最後まで足掻いてみる、っていうのはヒーロー物としてあるべき姿だと思うし、何でもかんでもヒーロー頼りってどうなの?みたいなのは過去のヒーロー物と言うジャンルで繰り返し描かれてきた部分ですよね。官僚とか回りがギャグとか入れ込んでくるのに、この人だけそこに全く甲斐さず一人シリアス路線を貫いてるのも良かった。

 

ウンコだのチンコだのゲロだのと、下品なギャグセンスはいかがなものかと思いますが、多分、過去の三木作品でもそういうのはあったし、好きなんだろうなというのはあるんだけど、そもそも今回の話、自分でしたウンコくらい、自分で片付けられないの?っていうような話じゃないですか。そういう意味じゃ、作品としては合ってるのかなとも思わなくもない。

 

いやウチの会社にもさ~、居るんだよ。ウンコした後に、勿論流すのは流すんだけど、周りにポツポツ飛び散ったのを放置してる輩が。メンドくさいしトイレ掃除とか汚くて嫌なのわかるけど、自分のケツくらい自分で拭けよっていっつも思います。自分のなら仕方ないけど、何で他の奴のウンコまで私が掃除しなきゃなんないのよ?っていっつも思います。

 

そういう意味じゃさ、原発の問題だって同じじゃない?政治家周辺の描き方がリアルじゃなかったっていう声があるけどさ、同じではないけど、実際の今の政治見てると、大差なくない?むしろ私は現実の方がもっと酷いと感じてるけど。アベノマスクの有効利用法を募集とか言ってんだぜ?戦時中かよ。バカじゃないの?

私はこんなふざけた作品であっても全然構わないので、政治風刺とかはどんどんやってほしい。アメリカとかだと一つのジャンルとして定着してるけど、日本はこういうの凄く弱いですよね。シリアスに風刺する作品も必要だし、こういう茶化すようなものもあって良いと思うんですよね。しかも今回みたいにエンタメに組み込むとか尚更アリだと思うし。

 

そういう意味じゃ、割と貴重な作品なんじゃないかなぁと思う。元々、三木監督はガメラの後始末をやるような話が作りたいって昔から言ってた様で、ただそれは多分、今回みたいな作品じゃ無くて、これまでの三木作品の延長にあるような、小規模なゆるゆるコメディーだと思うんですよね。(エンドロールで次の第2弾は予算半分で「大怪獣メラ」だ!つってるのはその辺のネタかと)


ただ今回は、話をしてる内に、東映が企画に乗ってくれて、小規模な奴じゃなくて、大きくやってみません?ってなったんだと思う。そこで最初の想定とは違って、色々なものを詰め込んで今回の形になったんだと思うけど、なんかこれをデビルマン以来の世紀の駄作とかでこすって終わりにするって、勿体無い気がする。

 

逆に今回、こんな炎上騒ぎになってる中で面白かったのはさ、みんな期待してたから裏切られたってなってると思うんだけど、へぇ~、これに期待してたのかっていうのが私にとっては意外だったんですよ。


表向きの形の「怪獣のあとしまつとか確かに見た事無いしどうなってるんだろう」っていう部分に関しての興味は持ってたんだ?例えばマーベルとかだと、ダメージコントロール社とかそういう設定や話はあるし、私は日本の特撮とか怪獣は詳しくないけど、過去にそういう話に踏み込んだのもいくつかはある様子です。

 

オタクが、お?この路線やるのねって興味持つのはわかる話なんですけど、一般層や、オタク方向ではない映画ファンとかでも、こういうのに興味持つのか!ってそこ実はビックリしました。だったらさ、そういう人向け、そういう人達がこういうのが見たかった!みたいな作品作れば、それはヒットするんじゃないの?東映さん、次の企画もう出来たじゃないですか!と言ってあげたい。

 

それこそシンゴジの時も思ったし、新海誠以降の一連のそれっぽいアニメとかもそうなんですけど、え?こういうのをみんな見たいものなのか?って結構不思議なんです。私は擦れたタイプのオタクですから、そういう一般の感覚とはズレちゃってて、意外なものがヒットしてたりすると、へぇ~大衆はこういうものを見たがってるのか、とか結構不思議に思う事が多くって、今回の「大怪獣のあとしまつ」だって、見た人の評価はともかく、一応はヒットしてるみたいですし、こういうのに興味持つんだ?っていうのが割と意外でした。

 

その中での一部であろう特撮ファンや怪獣マニアなんかも、割と普通に駄作扱いしてるような印象がしますけど、むしろオタクならもうちょっと違う視点でこの作品の特異さを分析してあげても良いような気がするぞ。堂々と駄作だと晒し上げる事が許される雰囲気に乗ってるだけでなく、その中で何を語るかってのがオタクの腕の見せ所ですよ。

 

という感じで「大怪獣のあとしまつ」の私なりのあとしまつです。
最初はどうなる事かと思ったけど、結構色々書けて悪くなかったですよ。

 

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