僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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藍の時代 一期一会

藍の時代 一期一会 (少年チャンピオン・コミックス エクストラ)

Indigo Period
著:車田正美
秋田書店刊 SHONEN CHAMPION COMICS EXTRA 全1巻
2015年
☆☆☆

 

デビュー40周年の集大成として
車田正美が熱筆する漫画屋哀歌(エレジー)!!

夢も、志も持たぬ一人の少年は、幾多の出会いと別れを繰り返し
やがて漫画の道へと辿り着く!
熱血、車田漫画の原点がココに!!

 

リングにかけろ」「風魔の小次郎」「聖闘士星矢」の車田正美が描く半自伝的漫画。

私は「聖闘士星矢」が子供の頃からリアルタイムで大好きで、アニメよりは原作派でした。アニメはあのヘルメットがあまりカッコ良く思え無くて、見てはいたけど、ジャンプの連載が好きでコミックも随時買ってた。

 

リンかけ」と「小次郎」は大人になってから後追いで読んだかな?割と楽しめた部類なのですが、やっぱり好きなのはいかにも車田的な部分よりも「クロス」とか、世界観みたいな所の方が大きいのかな、という気はしました。スピンオフ系も楽しんでる方ですし。

 

逆にそういうスピンオフを読んでて思うのは、美麗な絵であるとか、丁寧なドラマが「聖矢」の世界観で語られるのなら、それってオリジナル越えてないか?と思ってしまったくらい。勿論、オリジナルがあってこそのスピンオフですから、そこへのリスペクトは忘れちゃいけないし、ゼロから1を作り出す苦労と、1を2にする苦労では比較にならないくらいの差があるのは事実。

 

作中でも描かれますし、コメントとかでも度々本人が言ってますが、車田正美、古臭いです。今回の半自伝的物語も、ハッキリ言ってあまりにも古臭い。

 

でも、そんなの知ってるよ、自分は古臭い人間なんだ、でもこれしか出来ないし、これが自分なんだよって割り切って、覚悟を決めてる感じが面白い。

 

私の個人的な感覚、倫理で言えば、こういう人は好きじゃないです。俺はこういう人間なんだ、他人から何を言われようが自分を変える気なんかないよっていう変なプライドに凝り固まってる人より、下手でも変わる努力をしてる人の方を認めたい。

 

けどさ~、身近にいたら嫌だよなとは思うけど、こうやって漫画を読んでる分にはぶっちゃけ他人事ですし、車田正美、不思議と嫌いにはなれないんですよね。

 

彼を神聖化する気にはなれないし、アニキと崇める気も無い。でも「冥王神話」の1巻当たりでしたっけ?もう指も震えて昔みたいな線はひけなくなっちゃったし、「聖矢」が大当たりして、食うに困らないくらいのお金は得たけど、それでもまだ自分の漫画を求めてくれる人が居るなら描き続ける、的な事を言ってたはず(読み返してないので曖昧ですが)

そこは信じたいし、聖矢の続きが読めるというのは素直に嬉しかった。いや滅多に書かないのでさっぱり話は進まないけれど。


それに、車田先生なりに時代に合わせようとしてる部分は多少なりともあって、「セインティア翔」だって、スピンオフは今時らしく女の子主人公でっていうのは車田先生からのアイデアだったみたいですし。

 

今回の話、「リンかけ」でのデビューと、それが必殺技で人気がブレイクする部分までを描いてるのですが、実は漫画史においてそこって結構なターニングポイントなのです。ジャンプに「トーナメントバトル方式」と「必殺技の応酬」を持ち込んだのって、「リンかけ」が元祖的な物と言われてます。

 

序盤のストーリーがひと段落ついて、人気も落ち着いたら、トーナメントバトルを始めるって、もはやジャンプの一つの「型」じゃないですか。「必殺技」は勿論、車田先生の発明では無いものの、大ゴマとか見開きで中二的なハッタリのきかせた派手な技名で、相手が吹っ飛ぶ、というシステムを作り上げたのもまた「リングにかけろ」と言われてます。

 

リンかけ」ってね、序盤は結構真面目なボクシング漫画だったんですよ。技だって、基本のワンツーとかフック、ジャブ、アッパーとか基本的な技を丁寧に身につけて行く事で、少しづつ強くなっていく。

 

その先での「ギャラクティカマグナム!」「ブーメランテリオス!」とか派手なフィニッシュブローで人気爆発。最初はまだそんな必殺技にもそれなりの理屈がつけられていたものの、何時の間にやら、それが一体どんな攻撃なのかもよくわからんような名前と見た目だけ派手な絵がついていればOKになっていく。これもジャンプのバトル漫画の今に至るまでの伝統芸。

 

そういう、漫画史における一つのターニングポントを、アカデミックに分析して描くとかも出来るはずの素材なのに、古臭い任侠とか生死感とかでしか描けない。

 

しかもこれ、「ジャンプ」じゃなく、今の出版元である秋田書店の「チャンピオン」に置き換えて描いてある。

車田先生が集英社から秋田書店に移ったのってどういう経緯なのかな?私はそういう基本的な部分を知らないんだけど、そういうとこだって読者は興味のある部分かと思うんですけど、そういうのは一切触れずに、まるで自分に酔ってるかのような、古臭~~~いこういう漫画を描く。

 

漫画家漫画って丁度この辺の時期に一気に増えた印象ですが、そこで車田先生が描いたのがこれっていうのが、私は逆に面白くも感じました。

 

漫画ってのは絵の上手さだと勘違いしてる奴が多いけど、本質はネームなんだ!とか、ちゃんと中には良い事言ってる部分もちゃんとあるのよ。

 

時代錯誤だと批判するのは簡単ですが、多分作者にそれ言っても、それが俺なんだ、ってきっと割り切って堂々としてるでしょうし、なんかある意味での快作とも呼べる1冊です。

 

お願いだから「冥王神話」の続きを早くプリーズ!

 

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