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バットマン:ゼロイヤー 陰謀の街 (THE NEW 52!)

バットマン:ゼロイヤー 陰謀の街(THE NEW 52!) (DCコミックス)

BATMAN VOLUME 4: ZERO YEAR -SECRET CITY
著:スコット・スナイダー、ジェームズ・タイノンIV(作)
 グレッグ・カプロ、ダニー・ミキ、ラファエル・アルバカーキ(画)
訳:高木亮
刊:DC COMICS 小学館集英社プロダクション ShoProBooks
アメコミ 2015年
収録:BATMAN #21-24(2013)
☆★

 

THE NEW 52!シリーズ第4巻!!
現代版、バットマンの誕生秘話。
物語は起源(ゼロ)へと向かう。

ゼロイヤー……それは、バットマンが誕生した年。
スーパーヒーローの時代が始まる以前……弱気を助け悪を挫くバットマンが翼を広げる以前、ゴッサムシティの放蕩息子ブルース・ウェインは、数年間行方不明になっていた。だが、これは闇の姿を必要としたブルースの作戦だった。ブルースは正体を隠してゴッサムをパトロールし、顔を持たない自警団員として活動を始める。

 

ザ・バットマン」ついでに、元ネタの一つとされる「ゼロイヤー」編は読んで無かったので、せっかくなのでこの機会に読む。どうしてもマーベルの方を優先させてしまって、私はこの前の「梟の法廷」「失われた絆」くらいまででバットマンは止まってました。

 

「ゼロイヤー」は2冊構成で、映画の元ネタとしては後編の方のようですが、今回の時点でも、バットマンのオリジンの語り直しなので、映画に近い感覚では読める。

 

スコット・スナイダー自身も語ってるけど、バットマンのオリジンと言えばやっぱり「イヤーワン」が圧倒的な傑作で、これまでの映画もずっとそこに引きずられてきた。

 

ただ、いつまでもそのコピーをやってても仕方ないので、別のアプローチで新たなオリジンを描いて、バットマンの更新、現代的なキャラクターへ再定義するという事をやろうとしている。

 

うん、その試みは称えたいし、「イヤーワン」はノワール物として、ある意味での古さを意図して描いてる作品でした。(その前の時代が時代だっただけに、そこが新しくもあった)例えばクリストファー・ノーランがやろうとしてたのは、バットマンと言うキャラクターを徹底的な今のリアリズムで描くっていうコンセプトでやってたわけですよね。そんな風に色々なアプローチや試みはあってしかるべきだとは思う。

 

が!う~ん、やっぱり「イヤーワン」と比べると面白味に欠ける感じがして、比較してしまうと物足りなさの方が大きかった。ただ、DC映画でやってるようなのと似た感覚なので、クリストファー・ノーランの映画が面白いと思うタイプの人なら、こういうの受け入れやすいのかもしれないな、とも思う。

 

決してリアリズム重視「だけ」でやってるわけでもなくて、ちゃんとテーマを置いて作ってあって、バットマンという個人の誕生だけを描くのではなく、ここで描かれるのは「ゴッサムシティ」という舞台こそがバットマンの本質的な部分なんじゃないか?」というアプローチがしてある。

 

なるほどそこは面白い視点だし、今までそこを軸にしたオリジンは無かったように思う。これ、スコット・スナイダーがこの話のちょっと前にやってた「ゲートオブゴッサム」と「梟の法廷」でゴッサムと言う町の歴史に踏み込んだ話だったっていうのとも多分繋がっていて、やっぱりバットマンにおけるゴッサムシティっていうのは重要なポイントなので、そこを軸にしたオリジンなら新しい切り口でバットマンの誕生が描けるじゃないか?っていう発想なんだと思う。

 

その発想は素晴らしいと思う。思うんだけど・・・う~ん。


例えば今回はバットマンの誕生と同時にジョーカーの誕生も描いてある。ジョーカー以前のレッドフードとして。

このレッドフードもね、やっぱりジョーカーのオリジンと言えば「キリングジョーク」じゃないですか。そこからもってきてるんだけど、その「キリングジョーク」と比べてしまうと・・・う~ん。

 

社会、あるいはこの世界そのものの理不尽の象徴と言ってもよいジョーカーの本質を描いた「キリングジョーク」はやっぱり面白かったんですよ。ジョーカーは狂っているんじゃない。狂っているのはこの世界そのものなんだ、それを正常と言ってるお前らの方がよっぽど狂人なんじゃないか?

 

フランク・ミラーにしても、アラン・ムーアにしても、あれは何だったんでしょうね?時代性的なものというより、本質をズバッと突いた面白さだったような気がするな。今読み返すとまたそこで何か違う感想が書けそうですが、そこで描かれたものを引き継ぎつつ、決して二番煎じにはならないよう、また違う視点で語り直しているそのロジックは決して間違ってはいないと思うんだけど、それが面白いかと言えば、必ずしもそうはなってない感じが、なんとも難しいな、と今回は感じました。

 

レッドフード団の挑戦を退け、暗躍していたエドワード・ニグマがリドラーを名乗り、宣戦布告してきた所でゼロイヤー下巻へ続く。


リドラー編という意味ではそっちの方が「ザ・バットマン」の元ネタ部分ですが、ブルースとアルフレッドの関係とか、ガジェットの初期仕様とかは今回は今回でいくつか映画に近い部分もありました。「イヤーワン」はその辺はあまり描かれて無かったですしね。

 

残念ながら、この時点では歴史に残る1冊とまでは言え無さそうな感じですが、後編での巻き返しに期待。

 

スコット・スナイダーは「ブラックミラー」とかも面白かったし、これ以降のバットマンのみならず、ジャスティスリーグの方も担当して行く名ライターですけど、流石にバットマンのオリジンは荷が重すぎたのか、あるいはやっぱりフランク・ミラーとかアラン・ムーアがあまりにも凄すぎたのか、なかなか難しい所です。

 

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