原題:X-MEN: FIRST CLASS
監督:マシュー・ボーン
原作:MARVEL COMICS
アメリカ映画 2011年
☆☆☆☆☆
X-MENシリーズ5作目。前回の「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」と同じく今回も過去編。本来はウルヴァリンに続くマグニートーの過去を描くオリジンズシリーズ的な企画からスタートしつつ、結果的にシリーズ全体としてのリブート作になりました、という感じ。
残念ながら結果としてそうはならなかったけど、当時の構想としては今回1960年代を描いたので、次はまた10年後の1970年代、そして1980年代と、このキャストで現代に近づいて行く3部作の構想って言われてたんですよね。ブライアン・シンガー版の前日譚としてきっちり繋がる的な。それなのにこの後シンガーが出しゃばってしまって・・・という。
マシュー・ボーン監督の3部作が作られる世界線も見たかったなぁと思う。私の中でシリーズ最高傑作はやっぱりこの作品ですし。劇場で最初に見た時は、「ファイナル」「ウルヴァリン」と微妙な流れになっちゃった上でこの作品だったから、よし!ギリギリ持ち直したぞ!って物凄く嬉しかった記憶があります。
マシュー・ボーン監督、これの前に「キックアス」があって、今だと「キングスマン」シリーズがありますが、スタイリッシュな画面構成とアクションとかが特徴でありつつ、この作品はそこだけに留まらないのが素晴らしい。
プロフェッサーとマグニートーのドラマが物凄く丁寧で、まさしくドラマチックと言えるような展開がグッと心を掴みますし、キューバ危機という実際の歴史が物語の背景にあるのが本当に面白い。
いや~、実際の歴史にヒーローが絡んでいた。歴史の裏にヒーローの影があった、とか私もうツボというか大好物なんですよ。フィクションだと知りつつ、もしかしてこれは本当にあったのかもしれない的に想像できるのが楽しくって、この作品の一番好きな部分かもしれない。他の作品でもよく語ってますが、私は荒唐無稽なスーパーヒーローを、ただフィクションとして現実と切り離して描く物より、歴史にしても社会にしても、そこを結び付けてくるものに物凄く惹かれるんですよね。これも何度か書いてきたけど、だからこそ私はアメコミヒーローの世界にグッと惹かれた大きな要因の一つです。
冒頭の強制収容所のシーン。1作目の再現ですけど、あの鉄条網が曲がるシーンから始まるのって、やっぱりあれがそれだけ良く練られたシーンだったというのが改めてわかりますし、その後のコインのシーンとかは今回で足された部分ですが、そこまでのリアルなシーンと違って、そこからは物凄く劇的な感じで、この組み合わせが凄く面白い。成長してからの復讐劇も物凄くカッコいいし、まさしくマグニートーがもう一人の主人公的に描かれてるのが凄く良い。
単純にプロフェッサーとの対比的な部分もあるにはあるけど、二人の友情とかを描きつつ、どこか危うい思想もやっぱり残ってる辺りの、ハラハラ感がね、見てる分には本当にグッと来る。
対するプロフェッサーも、若い頃は割とイケイケな性格してたとかは面白くて良いのですが、やっぱりミスティークとの関係が良くも悪くもな印象を受ける。原作には無い設定や描写で、映画3部作を受けての映画なりの設定なんですけど、果たしてこれが過去3部作の描写に繋がってる?前の映画でプロフェッサーがミスティークを気にかけた事なんてあったっけ?とか、物語や設定のコンティニュニティに関しては「ウルヴァリンX-MEN ZERO」に近いモヤモヤを感じで、そこだけは微妙。
ビーストは「3」の彼の過去としてはかろうじて繋がるのかなぁ?
でもエマ・フロストは「ウルヴァリン」にも出てたけど繋がり変じゃね?
とかそういうのは結構気になる。
MCUもそうですが、原作と違うのは映画のアレンジとして許せるんですよ。バンシーやハボックを第1世代にしたとかも、映画だとこういうアレンジなのか!でそれはそれで別物として楽しめる。でも、映画同士でおかしい部分があると、ん?どういう事?矛盾してるような?とつい気になってしまう。
とは言え、そんな部分はこの映画においては些細な事と言えるくらいに他の要素があまりに面白すぎたので、圧倒的な満足度。
いやぁ、私「X-MEN」1作目の時に、自分はアメコミやX-MENが好きだからこの映画には大満足だったけど、普段あまり映画は見ない人だから、これが映画として本当に素晴らしいものなのか、実は大した事の無いものなのか、客観的な評価がわからない。だから自分の主観や感情だけでない客観性を得るために、そこから沢山の映画を見るようになった経緯があると書きました。
そっから10年近く経ってね、年間100本も映画館で見るようになって、過去の名画的な物も沢山見るように務めたり、トータルで1000本くらいは見てそれくらいの比較材料を持ってすっかりシネフィルになってたわけです、これを劇場で見た頃は。その上でね、いやこれは誰が見ても文句無いでしょ!?と堂々と言える作品になってた事が凄く嬉しかった記憶がありますわ。
X-MENシリーズの中でも至高の1作という感じです。
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