僕はこんな事を考えている ~curezの日記~

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ウルヴァリン

ウルヴァリン (MARVEL)

WOLVERINE
著:クリス・クレアモント(ライター)
 フランク・ミラーポール・スミス(アーティスト)
訳:秋友克也
刊:MARVEL ヴィレッジブックス
アメコミ 2013年
収録:WOLVERINE #1-4(1982)
 UNCANY X-MEN #172.173(1983)
☆☆☆☆

 

愛する人、矢志田真理子の連絡が途絶えた。
不安に駆られたウルヴァリンは、彼女の故郷、日本を目指す。
だが、かの地で彼を待っていたのは、
伝統と因習に囚われた東洋の神秘だった!
ウルヴァリン人気の原点ともいうべき歴史的作品にして、
話題の映画『ウルヴァリン:SAMURAI』の原案となる名作、
ついに邦訳!アーティストはあのフランク・ミラー
後日談となる『アンキャニィX-MEN』#172,173も収録!

 

という事でSAMURAIついでにこちらも合わせて再読。
ああ、ちなみに近年はマーベルグラフィックノベルコレクション(アシェットジャパン刊)の方にもこの話が収録されてましたが、本編のみでアンキャニィの方は収録されて無いっぽいので注意。いや私アシェットの奴は定期購読してるんだけど、まだ1つも箱開けて無いわ。どんどん箱が積まれて行く。

 

本編と言うか、ウルヴァリンのミニシリーズの方だけでも十分に面白いのですが、映画にも出てたシルバーサムライとバイパーが出てくるのは後日談のアンキャニィの方なので、原作として読みたい方はこちらのヴィレッジ版の方が良いと思われます。

 

設定とかは映画では大きくアレンジされているものの、物語的にはさほど意味の無いグリズリーVSウルヴァリンみたいな所からスタートするのは原作も同じなので、映画はこの原作にかなりのリスペクトをしてたのがよくわかります。

 

ああ、クマ退治は物語的には意味が無いですけど、キャラクター造形・演出的には当然意味があって、ウルヴァリンはやつ当たり的にクマと戦ってるのか?と思わせておいて、実はハンターが毒矢を使った事で苦しんでいるクマにウルヴァリンがトドメを刺しに来たというシーンなので、演出的にも面白い部分です。

ウルヴァリンは力自慢のただの暴れん坊とかではなく、そういう義理堅さや優しさを持つキャラクターであるというギャップの演出ですよね。

 

特に原作においても、ここまではそんな粗暴なキャラクターとして描かれてきたウルヴァリンに、実はこういう一面があったと新しいキャクター造形を持ち込んだのがこの作品。

 

ライターがX-MEN人気の立役者クリス・クレアモントで、アートの方がフランク・ミラーという形になってますが、クレアモントの前書きにもある通り、フランク・ミラーと共に相当に作り込んだ意欲作であるとの事ですし、後のミラーの作風を知っていれば、これがいかにミラーっぽい作品なのかはよくわかる。

デアデビル:ボーン・アゲイン」「マン・ウィズアウト・フィアー」
バットマンダークナイト・リターンズ」「イヤー・ワン」
って大体同じくらいの時期でしたよね。それら以前の作品という事になる。

 

映画と同じく、ヘンテコな日本描写も沢山あります。


けど、
「戦いの舞台は京都風の、禅寺様式の日本庭園だ。美と平安と静寂を驚くべき密度で視覚化した完璧な空間だった」
「だが、それも今はない。調和は破れ、秩序は混沌に征服された。俺の人生にそっくりだ」
「心の平穏を求めて戦うほど、事態は悪化していく。だったら・・・」
中略
「それでも人生はこの砂利みたいに動かせるはずだ」
踏み荒らされた表面を撫でると混沌が秩序に置き換わっていく
「このまま平穏に戻れるのか?」
「多分、それが答えだろう。結果自体じゃなく、よりよい結果を求めて動く事が大事なんだ。俺は決して理想の姿にはなれないだろう。だが努力を続ける事はできる。きっと茨の道に違いない。だが努力を捨てればそこで停滞するしかない。それは死を意味する。肉体ではなく魂の死を」

 

日本庭園で忍者と戦った後、荒れ果てた砂利を戻しながら、そこに混沌と調和を見出し、魂の再生を求めるという話を「ガイジン」が書いてるという凄さ。

 

「父、信玄が己の欲望のみのために戦っのに引き換え、あなた様は正義のためにその代償を顧みず命をお懸けになりました・・・あなた様は父とは違います。あなたこそがまことの侍なのです」

SAMURAIキタコレ!


解説書にも書いてあるけど、まだ今ほどクールジャパンとか日本人気が定着する前の話ですよ。それこそトンデモジャパンでニンジャ!サムラーイ!ヤクーザ!とかそういう要素がありつつも、そこにより深い精神性を見出し、そこを描くって凄くないですか?

 

そりゃあこんなクールな部分をキャクター性として付け足されたら、ウルヴァリンがマーベルでも人気のトップに躍り出るのわかりますわ。

 

映画でも、理解しようとするその努力は見え隠れこそしてましたが、そういった文脈背景みたいなものが上手く噛み合って無かった気がします。

 

ミニシリーズの方のラストも凄く良いし、そこからの後日談はそんなウルヴァリンを祝いに日本にみんな来るという話で、そこはチームとしての面白さもあって凄く楽しい。
ストームがイメチェンしてモヒカンになった話だったりもして、実はあれユキオの影響だったんだとか、変なリンクが知れてそこも面白い。

 

ただ、ラストだけ、お話の展開上というか今後のストーリーラインの流れの上で、マスターマインドがせっかくの幸せな空間を台無しにしてしまうという微妙な感じになってますが、え~こんなオチなの?っていう所を除けば非常に面白い話です。

 

初読じゃないけど、映画以上に楽しめました。
クセはあるけど古き良き名作って感じの1冊で、満足度は高い。

 

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