原題:Us
監督・脚本・制作:ジョーダン・ピール
アメリカ映画 2019年
☆☆☆☆★
<ストーリー>
夫のゲイブ、娘のゾーラ、息子のジェイソンとともに夏休みを過ごすため、幼少期に住んでいたカリフォルニア州サンタクルーズの家を訪れたアデレードは、不気味な偶然に見舞われたことで過去のトラウマがフラッシュバックするようになってしまう。そして、家族の身に何か恐ろしいことが起こるという妄想を次第に強めていく彼女の前に、自分たちとそっくりな“わたしたち”が現れ……。
「ゲットアウト」に続いてこちら。
・・・こえーよ!
メチャメチャ怖い映画でした。ホラー映画って、基本的には緩急ありきで、思わせぶりな描写で引っ張って、本当に怖いシーンはそうそう多くないのが大半な気がするんですけど、最初の30分はともかく、残りの1時間半ずっと怖いシーンで緊張感が続く。
サービス精神旺盛だなぁと。1作目で大成功をおさめて、じゃあ2作目はもっとスケールアップして、もっと怖がらせてやるぞ!みたいな感じなのでしょうか。
ずっと怖いシーンが続くのは、見てる分には楽しい(怖い)し、それはそれで良いんですけど、演出って緩急ありきじゃないの?みたいな余計な知恵がついてると、これはこれで作りとしてはどうなんだろうとちょっと心配になってしまうくらい、途中からはノンストップでした。要所要所にギャグっぽい部分を入れてたりするのが緩急の付け方なのかなとも思いますけど。
一応は「ドッペルゲンガー」を扱った作品という形になるのかもしれませんが、どちらかと言えば都市伝説形に、狂人ホラーをミックスした感じ。
別にモンスターじみたビジュアルとかでなくとも、何考えてるか全く分からない人が延々と襲いかかってくるっていうだけでも、相当に恐ろしいですよね。
「イットフォローズ」なんかに近いテイストを持ちつつ、襲ってくるのは自分とうりふたつの人間というんだから、そりゃあ恐ろしい。
え?何?どうゆこと?ちょ!マジやばいって!みたいな理不尽さが1時間以上延々と続くのが凄い。
そしてそこに都市伝説的な要素をミックス。ここは「アンダー・ザ・シルバーレイク」なんかにも通じる面白さでしょうか。個人的にも都市伝説の類、私も大好物だったりするので、その点に関しても好みでした。
が!オチを明かしてみると・・・みたいな所で一気に評価が下がる。
面白いんだけど、そこで明かされた設定的なものよりも、「わからないこその理不尽さ」の方がより恐ろしいものなんだなと。そこもね、つまんないわけではないんです。面白いんだけど、ちょっとリアリティには欠けるかなと思ってしまうと、わからないからこその怖さの方が良かったなぁとか、わがままな事をつい言ってしまいたくなるのは、襲ってくる敵よりも、それもまた見てる観客が求める理不尽さなのかもしれません。
体感としては、前作の「ゲットアウト」よりもこちらの方がすっと怖いし面白いのですが、映画としての質は前作の方が高かったかも?とつい思ってしまう部分もありました。
前作が「偏見に対する問題提起」みたいなテーマがあったとして、今回は「世の中の欺瞞を暴く」的な方向かなと思うのですが、都市伝説(ファンタジー)的な設定はひとまず置いといて、構造としてはポン・ジュノの「パラサイト」に近いのは面白い重なり方ですよね。
「虐げられた地下の住人が、上の世界でなりすまそうとする話」って言ってしまえば同じだったりしますしね。当然そこは格差社会という現実の世相があるからこその、時代性を持った映画という形です。
怖い部分のペース配分は先に書きましたが、戦闘シーン?でのバレエの動きもちょっとしつこいくらいで、逆にそこが面白かった。作り手が自信を持って描いてる感じがとても良い。自己批判的なニヒリズムとかもそれはそれで好きなのですが、作り手が自分を信じて突き抜けてる感じも、それはやっぱり見ていて気持ちが良いですし、今回の作品はまさしく後者っていう感じで、そこも面白かった。
とゆー事で「ノープ」見て来ます。
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