www.youtube.com原題:She-Hulk:Attorney at Law
監督:カット・コイロ
原作:MARVEL COMICS
配信ドラマ 2022年 全9話
☆☆☆☆
ディズニープラズ配信MCUドラマシリーズ。
単発(ウェアウルフ~)を除けばフェイズ4ドラマとしてはこれが最後っぽい。
ええと、何と申しましょうか、最終回があまりにも衝撃的すぎて、良くも悪くもそこまでの1~8話は何だったの?というのをブチ壊す展開。
ネタバレありきでの感想ですので、まだ見てない人はご注意を。
所謂、デッドプールなんかと同じく、「第4の壁」を突破する能力を持っているというのは噂には聞いていましたが邦訳版コミックの範疇では確か出て無いはず。(読者に語りかける程度はあったかも?)それを生かした演出だったわけですが、物凄く面白かった半面、好きか嫌いかと問われたら、正直好きではありません。
まさかここまでやるかと、見てる時は思わず声を出してしまうくらいビックリしましたし、面白かったのは面白かったんです。ただねぇ、これやると、じゃあエンドゲームもやり直せばいいじゃん。ナターシャ生き返らせてよ、だって作り物のドラマなら何でもできるんでしょ?都合良く全部書き変えればいいじゃん!ってなっちゃうのは当然の話で、例えば今回出て来たデアデビル。
今後「デアデビル:ボーン・アゲイン」という原作にもあったタイトルのドラマが予定されてます。全てを失ったマットが再び立ちあがる的な話ですけど、このドラマでシーハルクと関係を持っちゃったなら、都合悪い事は全部シーハルクに作り変えてもらえばいいじゃん、としか思え無くなる。
同じタイプのデッドプール、あるいはグウェンプールなんかと共演して、メタネタの応酬をする分には期待出来る。その反面、デアデビルだけでなく、アベンジャーズ入りとかして、シリアスな大型イベントにもしシーハルクが居たらさ、いやいやこれ全部作りものだからってなっちゃうよね、という気がしてなりません。
シーズン2は見たいし、そこに他作品からゲストが出るくらいなら許せそうだけど、シーハルク本人の他の作品への出演はかんべんしてほしいかな?と思えてしまったのは正直ちょっと勿体無いです。
性格とか立ち位置、他のキャラクターとの差別化という意味では好きなんですけど。いわゆるアラサー女子、20代の頃はチヤホヤされたけど、30過ぎるととたんに厳しくなるっていうのは、日本なんかだと特に顕著だと思うんですけど、アメリカとか海外とかは、そういう要素が全くないとは言わないけど、自立・独立した女性の権利や地位ってそれなりにありそうだし、古い世代の親は心配してくるけど、本人は平然としてるみたいな感じかと思ってた部分もあったので、ジェンのあせりや変な行動とか、アラサー女子あるあるは日本と共通する部分もちゃんとあるのかと思えて、そこはとても面白かったです。
「法廷コメディ」の部分だけでも作品を成立させられると思うし、単純にそこだけ楽しみたかったかも?と思ったくらいなんですが、ちゃんとそういうジェンダー問題、ポリコレうんぬんに踏み込んでくるのがやっぱりマーベルの強み。
ミズ・マーベル(キャロルもカマラも両方)、ブラックウィドウとかフェミニズム運動とかの背景ありきですし、MCUで言えばワンダなんかメンヘラ女子的な印象すらあるので(原作での展開を生かしてるだけとは言え)そういう流れでシーハルクというキャラが居ると言うのはとても面白い部分ではある。
ヴィラン=ハルクキングをあからさまに女性蔑視の象徴として描き、じゃあそれをボコボコに叩きのめしてスッキリかと言えば、そうではなく法廷で裁きますとした辺りが、作品としての主張であり、筋の通し方なのでしょう。そこは凄く良かったと思う。
MCUの流れって、アベンジャーズが白人男性集団で、トニーなんか最初はナターシャを物扱いしてた所から始まって、そこから黒人や女性、他民族とかに裾野を広げて来たというか、変化してきた。最近は女ばっかりじゃん、こんなの見たくないよっていう、それこそハルクキングみたいな考え方の人も、中には居ると思うんですよね。
でも、そこでじゃあうちの描写や方向性に不満がある人は見なくてもいいですよ、ウチはただ日和ってるんじゃなくて、信念持ってやってますから、お気に召さないならどうぞ他に行って下さい、という所が素晴らしいと思う。
今回、一番凄いなと思ったのはCG問題を自分からいじってきた所。流れとしてはシーハルクの最初の予告の時でしたっけ?CGのクオリティが低すぎると話題になり、それと同じくらいの時期に、CG制作会社がマーベルへの不満を表に出したと。無理矢理すぎるスケジュールに、予算も低い、しかもCGなら何でも出来ると、苦労して作ったものをあっさりボツにするし、各作品の監督もCGを理解せずにただの便利ツールとしか見て無いとか散々な批判が出た話。
それをね、次の作品とか出なく、まさしく渦中にあるシーハルクの劇中でそれをネタとして使ってくる。CGの予算が無いから変身シーン無しで、とかわざと言わせてくるんですよ?それこそマーベルへの批判が表沙汰になってから脚本をギリギリで修正した部分ですよね?シーハルクがメタネタ使えるキャラなら、今ここで旬のネタを使わないで、他の作品で出来るか?って事です。なんかもうそれはある種の矜持じゃないですか?時代性どころか、ほぼリアルタイムのライブ感とはまさしくこの事かと。
これをもし10年後とかに見たときね、丁度この頃マーベル批判があったんだよ、そこはリアルタイムじゃないとわかんない部分かもね、的な事を言う羽目になる。これって面白い事だと思いませんか?勿論、10年後にはマーベル映画なんてマニア以外誰も見向きもしない事になってる可能性も全くないとは言いませんが。
しかもね、そんなマーベル批判はちゃんと耳に入ってるよ、という事ですよね。マーベル映画なんてキャラ変えて毎回同じ事やってるだけとか、ポリコレうぜえとか、ドラマ多すぎ問題とか、今回は触れられてませんでしたが、フェイズ4は方向性が定まって無い、インフィニティサーガはそこがちゃんとしてたから面白かったとか世間で散々言われてる部分、ちゃんとマーベルは耳に入ってますよって事なのでしょう。
ああ、ちなみに方向性うんぬんは多分、後追いでMCUを見た人がそう感じてるだけだと思います。最初からリアルタイムで追ってた人は色々あったの知ってると思うし、どうせこの先のフェイズ6の終盤位の時は、マルチバース・サーガとしてちゃんとそういうカラーになってたとか言い出すの目に見えてますので、その時を待ちましょう。
勿論、不満があるなら卒業するのも一つの手です。後から、リアルタイムで追っかけて良かったとか言ってる人に嫉妬しなきゃですが。普通に考えて「シークレットウォーズ」とかでまた仕切り直しをするはずなので、またその後から入るのも手ですし。
あと今回、ちょっと変わった視点で面白いなと思ったのは、「原作のシーハルク知ってる人なら納得の展開」みたいなのが割と多くて、そこがちょっと引っかかってるですけど、多分原作のシーハルク誌でこの展開をやったって、言うほど話題にならない気がするんですよね。
決してマイナーなキャラでは無いけれど、じゃあマーベルの看板を背負ってるキャラなのかと言えば、そこまでのキャラではない気がする。それこそハルクの代わりも出来れば、ヒーロー弁護士とか他のキャラには無い面もあるので、キャラとしては使い勝手は良いものの、器用貧乏っぽい印象も多少ある。
コミックの端の方でやってる分にはね、好きな人だけ楽しんでねで許される所が、MCUってドラマも沢山は配信されてますが、ファンは最新作をみんな一緒になって追いかけてる感が強い。
多すぎて全部見きれないよ!という声もチラホラと聞こえてきてますけど、ぶっちゃけそれで良い気もしなくはないです。私はMCUってコミックが持っていた面白さを映画業界の中でいかに再現していくかをやってるんだってずっと主張してますが、コミックって毎月何冊も出るし、過去何十年というアーカイブを全部読んでる人なんかそもそも居ないので、気になる所や好きなキャラをかいつまんで読む、程度だと思うんですよね。
ただMCUも数が増えて来たとはいえ、今の分量くらいなら、全部追える。この辺がコミックとの差なのかなぁという気もしないでもないです。
いや、スパイダーマンやストレンジで、MCU以外の過去の映画まで全部繋がったじゃん?とか、デアデビルはネトフリからの延長なんだから、そっちのドラマも全部、とかエージェントオブシールドとかも全部見なきゃ!とかになると追えなくなるくらいの数と歴史はもう実際にある。
マーベルとは何も関係ないけど、例えば今回シーハルクのドラマの中で、ジェンの部屋に「キューティブロンド」とか「エリン・ブロコビッチ」のポスターが貼ってありましたが、映画の内容を考えれば、ああいう流れがあった上でのシーハルクですよ、という意味はちゃんとあるわけで、そんな所までを関連作と捉えてしまっては、キリが無いわけです。せっかくだから見てみようか、となればそれはそれでより作品を深く楽しめたりはしますけれど。
そんなん考えたらさ、MCU版シーハルクも、世界の隅っこで起きてる話なんだから、あまり深く考えずに、これはこれで楽しんでね、的なもので良い気もします。いやいやいや、こんなにゲストも新キャラも豊富に出た作品を世界の端っことか言うのどうなの?普通に中心じゃね?と言われたらそうかもしれませんが。
好きな部分、嫌いな部分と両方ありましたが、面白さという部分では十分でした。
あと、すごく個人的なネタですが、シーハルクの吹き替えが井上麻里奈です。
井上麻里奈が緑色のヒーローを演じる!それだけで私はテンション上がりました。
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