X-MEN Vol.1
著:ジョナサン・ヒックマン(作)
レイニル・フランシス・ユー 他(画)
訳:高木亮
刊:MARVEL 小学館集英社プロダクション ShoProBooks
アメコミ 2022年
収録:X-MEN Vol.5 #1-6(2019-20)
☆☆☆★
MARVEL史上最大級のSF大作『ハウス・オブ・X/パワーズ・オブ・X』に続く、X-MENの新たな歴史の幕が上がる。
その国は彷徨えるミュータントたちの安息の地となり得るのか?
ミュータント国家クラコアを設立し、世界に居場所を創り出したX-MEN。
しかし、戦いは終わっていなかった。
ミュータントを滅ぼすと予言されている機械種族、
反ミュータント主義を掲げる集団や植物学者……。
次々と現れる新たな敵に立ち向かうミュータントたちに、安息の地は訪れるのか。
前作で世界観を一新、そこを受けての新シリーズ1巻目。
邦訳版も今後数冊は予定されてるようで、そこは一安心。
今回は6話までの収録ですが、基本的に1話毎に別々の話をやっていて、各話が今後の展開に繋げていく為の起点、種まき的な話になっております。
一つのまとまったストーリーという感じでも無く、ヒックマンと言えば邦訳も出てたアベンジャーズの「インフィニティ」編辺りでもやってた、記号とかを多用したやたらグラフィカルな描き方を今回もやってるのですが、スミマセン個人的にはそこはあんま好きじゃありません。インフィニティの時も、正直読み難いなとか思いながら読んでたりしました。
お話としても、今回は大きな盛り上がりがあるわけでもないのですが、それでも設定や世界観、キャラクターの立ち位置の変化とか、そういう部分だけでも十分に楽しい。
だってサマーズ家、サイクとハボックだけでなく、バルカンやお父さんのコルセアまで居たりするし、息子のケーブルは何とサイクより若いバージョンのケーブル。更にはレイチェル・サマーズまでちゃんと居る。レイチェルは今はプレステージっていうコードネームなんですね。昔はフェニックス2とかだった気が。
お話的には4話の「世界経済」の話がグッと来ました。
前作からの新生X-MEN、中心にプロフェッサーが居るとはいえ、基本的にはマグニートーの方の理念にシフトしてしまったのかなと感じたし、今後はそちらの流れで物語を描いて行く事で過去との差別化をしていく感じなんだろうなと思ってた部分がありました。
でも今回の4話、プロフェッサーは自ら「人間との共存を諦めたわけじゃない」と口にしてくれたのは正直とても嬉しい。半分皮肉交じりで、額面通り受け取って良いものじゃないのはわかるし、もう昔とは状況が変わってしまったというのも理解はできる。でもねぇ、私はそれでもこの言葉がプロフェッサーの口から出ただけでも凄く嬉しかったです。
前作の感想でもちょっと書いてるけどさ、私はカプコン版X-MENがきっかけで、そこから90年代の小プロX-MENでアメコミに入った人なので、やっぱりプロフェッサーを信じたい気持が強いのです。
その後にプロフェッサーの暗黒面的な部分が暴かれる度に、ファンの間でも結構偽善者呼ばわりされるようになっていったんですけど、私はねぇそれ嫌でした。
人間の事は今でも愛している。けれど、ミュータントの生存に関わる問題が発生した以上、そこは優先せざるを得ない、そこはわかってほしい的な事を言ってるんだとここは都合良く解釈したい。
逆にマグニートーは直接的な攻撃ではなく、経済を牛耳る事で人間の上位に立つという発想もまた面白い。
これね、実はあんまりリアルに突っ込むと難しい部分だと思うんですけど、これまでだって例えばトニー・スタークやリード・リチャーズみたいな超天才。勿論、ピム粒子とかそういうのもそうです。通常ではありえない技術とかを天才ヒーローが発明して、そこで経済を動かすとかありえそうな話ではあるんですよね。確かトニーが何かのアプリだかプログラムだかを開発してそれが世間一般に使われてるとかそういう話は過去にもあった気がするけど、あんまりリアルにやりすぎるとね。色々と世界観が破綻してしまう。
そこに対して今回のX-MENは突っ込んだ事をやってて、ガンの特効薬や、老化を抑制するとかそんな新薬を開発したなら、そりゃあ世界経済を動かすとか夢の話じゃなくなるわな、という辺りは凄く面白い部分だと思う。
ついで言えば、ここの会議、プロフェッサーとマグニートーだけでなく、アポカリプスも同席してて、紀元前の人間の文明が滅びた原因は明らかになってない的な話になった時、あ~それ俺の仕業っていうある種のギャグ的な所も面白かった。
サイクと共にボディガード役でゴーゴンが出てるのもなかなか。確か「ウルヴァリン:エネミー・オブ・ステイト」で出て来たキャラじゃなかったっけ?
別の話でも、極秘任務に向かうメンバー3人が、X-23(ウルヴァリン)と、映画にも出てたダーウィンに、残り一人が何とシンク(エベレット・トーマス)。直接は出てこないけど、話の上ではスキン(アンジェロ・エスピノーザ)復活してる様子。いやぁ「マーヴルクロス」誌で「ジェネレーションX」読んでた世代としてはこの辺のキャラは嬉しいですわ。
ちょこっとだけどモジョーも出てたり、日本人のアーマー(イチキ・ヒサコ)も出てたりと、細かいとこがいちいち楽しいです。
2巻目も楽しみにしてます。
関連記事