www.youtube.com原題:Avatar: The Way of Water
監督・脚本・原案・制作:ジェームズ・キャメロン
アメリカ映画 2022年
☆☆★
年明け一発目の映画館、ようやく「アバター」続編を見てきました。
前作を見返して、いやこれ家で見るもんじゃねーなと、モチベーションはただ下がりだったんですけど、逆に言えば映画館で見なきゃ意味の無い作品とも言えるわけで、じゃあまあそこは仕方ないと重い腰を上げる。
前作からもう13年も経っちゃったんですね。3D映画の真打ちとして特別な地位を築いた前作ですが、あれから13年。まだ3D映画ってやってるんでしたっけ?あっても基本私は3Dとか選ばない派。一時の流行、入場価格を上げる事に意味があったとしか思えない中、そっからの技術革新も無いのにまたアバターなんてやるとか、過去の栄光にしがみつきたいのかこの人?とか内心思ってたら、なんと今度はフレームレートをいじってきた。
映画界隈だと、ここのハイフレームレートの説明に苦労してる印象を受けましたが、ゲームやる人にはフレームの説明って特に必要無い奴ですよね。10年前にゲーム止めた私でも、「バーチャファイター」とか経験してきた身としては、当時からフレームの事は基本としてありました。
映画は秒間24コマ。24フレームです。それを60フレームにしたらどうなるんだろう?という興味はありました。映画って一方的に見るだけだし、画像がなめらかになるとかそこまで意味あるのかな?
実際に見てみると・・・・
・・・
しょぼっ!
画面が超絶にチャチい!
いや物凄く滑らかに動くんです。でも、ゲームと同じフレームにしたら、思いっきりゲーム画面に近い感じになって、映画としての質が一気に下がった。
え~?この技術って今後浸透する?10年後とかこの秒間60フレームが基本になったりするのかな?それともやっぱり違うよねってなって3Dと同じく一時の流行で終わる???
そこはとても気になる。
いやね、技術的には凄くて画質としては決してしょぼくはないはずなんです。
物凄く慣れない感じで違和感が大きいのと、それがゲーム画面に酷似してるから結果として言葉としては「しょぼい」って言い方になるんですけど、個人的な感覚で一番近いなってなったのは、日本の特撮。実際には特撮に限らず低予算映画とかドキュメンタリーなんかもそうですけど、フィルム撮影からデジタルビデオ撮影に変化した時の、あの感覚が私の中では一番近かった。安っぽい映像に見えるっていうあれです。
私は別にフィルム撮影とかフィルム画質にこだわるような人じゃないんですけど、デジタルビデオ撮影に変化してった時期の、あのくっきり画面。凄くTVっぽい画質を見て、ああやっぱりフィルムでの映像って違うものなんだなと感じたものでした。
今回のアバター2みたいなものもね、見慣れてしまうとそんなに気にならないのかもしれませんが、CGっぽさ、ゲーム画面っぽさが不思議な感じ。
決してゲームを下に見ているわけでもないのですが、なんかゲームのデモ画面やムービーシーンを3時間見せられているような感じで、なんかモゾモゾしました。
これが新しい体験だ!っていうワクワクより、変な物を見せつけられている感覚の方が勝ってしまって、前作はまだ新しい3D体験っていうのは確かにあったのに、今回は新しいんだかこんなの20年前のゲーム画面じゃねーかと思うかどうかで評価は違ってくる気がします。
画質とかは凄いはずなんです。でも電気屋の前のTV販売とかで、大画面4K画質とか見るとね、へぇ凄いね綺麗だね。でもこんなの高い金払ってまでいらねぇ~!ってなるのと同じです。
ちょっとアバターとはズレた話しますけど、「バーチャファイター2」が出たのが1994年です。あれのアドバタイズ画面(デモ画面)ってあの当時ゲームやってた人の大半が衝撃を受けたと思うんですよ。
前年に出た「バーチャファイター」の1も衝撃は凄かったんですけど、バーチャ1は秒間30フレームですし、テクスチャ無しの生ポリゴンでした。(逆にそこが味があって好きですけど)2から60フレームになって、テクスチャも張られて大分リアルな方向に近づいたんですよね。で、そのデモ画面を見て、まるで本物の人間が動いているようだと誰もが感じた。
あれって、当時はモーションキャプチャーの出来が良いからリアルな動きに思えるんだろうなと思ってたのですが(ゲーム画面自体は空中コンボとかのあるゲームなので実際は決してリアルでは無い)、そうじゃなく秒間60フレームなのが凄かったんだなと後になってから知ることになりました。
30フレームと60フレームの違いなんてわかるもんかな?だって1秒間の話ですよ?何と無くの近いでしかないのでは?と私も最初は思ってたんですけど、プレイステーションの格闘ゲームで「闘神伝3」だったかな?基本は30フレームのゲームなんですけど、オプションで派手なエフェクトとかが出なくなる代わりに60フレームモードにも切り替えられたんです。タイトルやシリーズが違うと意外とわかりにくかったりするんですけど、それは同じゲームで30フレームと60フレームが切り替えられて、え?こんなに違うんだ?ってビックリした憶えがあります。見た目は地味になるけど、圧倒的に60フレの方が動かしてて滑らかで楽しい。
ゲームと映画という、メディアの違いもあるので、映画の秒間24コマなんてさほど気にした事もなかったですし、映画なら例えばアニメはもっとコマ数が少ない。
ディズニーアニメは秒間24枚ちゃんと絵を作ってそれを動かすフルアニメーション。だから動きがなめらかだけど、日本は基本的には秒間8コマのリミテッドアニメが主流。その程度の違いや認識しか私は無かったんですけど、今回こうやって「アバター2」はフレームレートを増やすと言う、これまでの映画の常識までいじってきた。
そういう意味じゃ記念碑的な作品とも言えるし、映画好きならそういう特殊な作品として見る価値は十分にあるとは思う。
・・・それでもねぇ、私は今回の映画で一番面白いと思ったシーンって、「ジョーズ」もどきのシーン。凶暴なサメっぽい奴におっかけられて、おっかなびっくりドキドキ!みたいな、言ってしまえば3Dを使ったこけおどしのシーン。でもね、そこが正直一番楽しかったよ。
映画としてどうこうじゃなく、3D映像ってそういうアトラクション映像みたいなのに生かす方が結局は良い気がする。
今回は前作から場所を変えて、海が舞台と言う事でまた違う新鮮さというのは十分にあって、そこは勿論楽しい部分ではありました。
ただ前回と同じで、お話がやっぱり微妙。あくまで映像体験こそが作り手の最も意図してる部分で、話はおまけみたいなもんなのかもしれませんが、それにしても色々と気になる感じ。
一番嫌な気分にさせられたのは、露骨な家父長制。親父が家族で一番偉いとか、いつの時代の価値観だよこれ、みたいなのが物凄く今回色濃く出てる。キャメロンって基本強い女性が好きな人ですし、前作の時点では奥さんの方にも結構大きいウェイトを置いてた印象ですけど、今回は何でこうなった?嘘だろってくらいの時代錯誤感で、見ていてとても嫌な気分にさせられます。
男が偉いんだ、女は黙って男の言う事を聞けみたいなの、今の時代もう最低な人間の考え方ですよね。そういうのが嫌いな人は正直気分が悪くなるレベルで最初から最後までそこを繰り返してくるので、見ない方が無難だと思います。こんな沢山の人に見られる大作で、意識の低い害悪な考え方をよく描けるなと思う。わざとなのかなぁ?
私が話を理解出来ていない部分もあるかもしれませんが、何で今回そんなに主人公ジェイクを狙ってくるのかもわからない。前作で、人間は土地の地下資源が目的って言ってませんでした?今回も捕鯨批判みたいな所で、老化防止の薬がとれるとかそういうのもありましたし、別にジェイク関係無くね?その辺が実はよくわかりませんでした。
スパイダー君の設定や動き方も意味不明だし、なんかすっかり精神的にもアバター星人になっちゃって、どう?彼らは可哀相でしょ?だから人間虐殺エンタテイメントって楽しいよね、みたいな感じで描いてるのが、凄く気持ち悪かった。
せめてなぁ、奥さんの方をもう一人の主人公的に描いた方がバランス取れた気がするし、子供はきっと次回作ですよねぇ。
前作を初めて見た時もそうですけど、「かわったものをみた」という部分に関しては好印象なんですけど、それ以外の部分が色々とね、同時に何だかなぁこれという印象もあります。
今回は2本同時撮影だったらしく、24年に3もすぐ見れるらしいですが、今の気持ちだと、よしじゃあ次もまた見てみようと思う気持ちは結構ありつつ、1年後2年後、絶対に「見るのめんどくさいなぁ」って気持ちが勝ってる気がします。
またも関係無いですが、60フレームの映像の面白さ。
サマーン星人と
レインボー星人
声が同じなパッションさんのは無さそう。(前作から続いてネイティリの吹き替え小松由佳さんなんですよ。そこは嬉しいポイント)
これ、当然ですけど元から60フレームなはずもなく、プログラムで疑似的に60フレームにしたものっぽいんですけど、フレームレート上がる事で手書きのアニメでさえもなめらかな動きになるのでビックリしますよね。と同時にやっぱり物凄くゲーム画面っぽくなる。不思議な感覚です。
ただこういうの見ると、フレームレートって使い方によっては映像表現としてまた別のステージに行ける可能性はあるのかもしれないな、とは思いますね。
関連記事