CAPTAIN AMERICA: TRUTH
著：ロバート・モラレス（作）
カイル・ベイカー（画）
訳：吉川悠
刊：MARVEL 小学館集英社プロダクション ShoProBooks
アメコミ 2023年
収録：TRUTH:RED,WHITE & BLACK #1-7(2003)
☆☆☆
待ち受けるものは
ただの悲劇か。
戦い続ける理由、
それは――
アメリカ陸軍省により極秘で進められた超人兵士計画――超人血清開発の実験台とされたのは、名もなき黒人兵士たちだった。そのなかで唯一生き残ったイザイア・ブラッドレーは、犠牲になり死んでいった仲間たち、そして愛する妻と生まれたばかりの子どものために戦うことを選ぶ。だが、“黒人の”キャプテン・アメリカは、国家にとって不都合な存在だった……。国から存在を隠され、歴史の闇に消えたもう一人のキャプテン・アメリカの真実がいま明かされる！
かつてヴィレッジブックスでやっていた通販限定タイトルですが、そんなヴィレッジが出版業そのものの撤退というのもあるのか、今度は小プロの方で通販限定企画がスタート。
小プロだけにお値段がいくらか安めに設定されるかとも思いましたが、まあこの辺は、完全にマニア向けのタイトルという感じで、お値段はかなり高めです。う～ん、正直キツイがそこは仕方ない。可能な限りはついていく予定です。
誰もが知るキャプテン・アメリカ＝スティーブ・ロジャースの他に、その誕生の実験台になった黒人が多数居た！という、ああ言われてみればきっとそうだよね、絶対アメリカはこういう事やってそうというなかなかに衝撃的な展開を描いたのがこちらの作品。
本来は、既存の設定とはあくまでまた別の単品作品、歴史のif的な物として描かれたそうですが、後のヤングアベンジャーズなんかでもこの設定が取り入れられており、きちんと歴史に組み込まれるようになったものの、作品自体はその後長らく絶版になったままになっていた。ただ、今度は再度ＭＣＵドラマ「ファルコン＆ウィンターソルジャー」もここに関わるドラマを取り入れた為、タイトル変更して近年になってまた再版されたという事のようです。
あと実際はスティーブ・ロジャースのキャプテンアメリカの誕生後に、その実験の再現として、多数の黒人を使って実験が行われたという設定で話は描かれてます。キャップのプロトタイプというよりはその後の量産型みたいなものでしょうか。超人兵士計画自体は、ウェポン・プラス系の設定として後に色々と設定が広げられたのもあって、そこを踏まえて、あくまでこの作品単体の独自設定ですよ的な描き方をしたのでしょう。
お話としても、マーベルの設定を深めるというより、黒人文化を描く事を目的にした作品という感じでした。ドラマとしてもそれなりに上手く作ってはある方だと思うけど、普通のヒーローコミックとはちょっと毛色が違う感じは否めず。
ただねぇ、やっぱりこういう社会問題をヒーローコミックでやるというのはアメコミの醍醐味という感じで私は好きな路線。
「仮面ライダーBLACK SUN」をやった白石監督も言ってたけど、日本は娯楽・エンタメ作品と社会派作品を別物として作ってしまうのが残念。シリアスでハードな社会派物とかもちゃんとあるにはあるんだけど、それは娯楽作品とは別の物ですよって分けて考えられがち。そこは私も昔から思うけど、メチャメチャ勿体無い部分ですよね。
私も政治的なドキュメンタリーとか観に行ったりすると、自分より年上しかいねぇ！みたいなケース何度もありますもん。若い人が見たって勉強になって面白いと思うんだけどな～っていうのすっごい何度も思ってきました。
アメコミだってね、こんなヒーロー物とは関係無いルポルタージュコミックみたいなジャンルだってちゃんとあって、コミックジャーナリズムというものも確立してたりする。日本もゼロじゃないけど、あからさまに弱いですよね。そういうものにちゃんとした文化賞やればいいのに。
それはともかく、キャップだけでなく、現実の歴史ともリンクしていて、ドイツ軍に捕まってヒトラーと直接対峙するシーンとかはなかなかに冷や汗の出る面白さでしたし、時にこういう事をしてくるのがアメコミヒーローの面白い部分。
決して万人受けする内容じゃ無いと思うけど、非常に興味深い一冊。
そしてこういうものを邦訳版として読ませてもらえるのはホントにありがたいことです。
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