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機動戦士ガンダムF90FF ファステスト・フォーミュラ 5~11(完)

機動戦士ガンダムF90FF(5) (角川コミックス・エース)

F90FF MOBILE SUIT GUNDAM F90 FASTEST FORMULA
漫画:今ノ夜きよし
シナリオ:イノノブヨシ
シナリオ協力:小太刀右京(チーム・バレルロール)
キャラクターデザイン:金世俊
メカニックデザイン:森木靖泰
オリジナルF90デザイン:大河原邦男
原作:矢立肇富野由悠季
刊:角川書店 角川コミックス・エース 全11巻 2019-24年
☆☆☆☆★

 

ファステストフォーミュラ第2部。
悲劇的な結末で終わった第1部のUC.0112から3年の時が流れて、第2部はUC.0115年(劇中ですぐ0116年に時間経過)

 

F89のパイロットだったギデオン・ブロンダインが再びファステストフョーミュラに招集を受け、チームリーダーを務める事になる。そこではかつて子供だったリヴ・アンゲリカがディル・ライダーと名前を変えて昔のリヴとは全く違う少年に成長していた。今度のファステストフォーミュラ部隊は実験テスト部隊ではなく、ジオン残党らを対処する実戦部隊となっていた。

 

1部はF90の新武装がメインで、敵もトニー・スタークみたいな「FF」オリジナルの勢力でしたし、元々「F90」が好きな人以外にはさほど注目度も高くなかった気がしますが、第2部に入り、中原版「F90」のボスキャラだったボッシュ・ウェラーが登場した事で、ファンがざわつく。え?今になってボッシュを掘り下げるのか?・・・と思った矢先。

 

今度はまさかのMSA-0120が登場。型番だけで名前無しながら、マニアの間ではその番号からフリーダイヤルと呼ばれていた幻のMS。F90とコンペで競い合ったアナハイムのMSという設定上に存在するMSで、かつてはサイバーコミックスに一度イラストが載ったのみながら、既存のMSとは全く異なるゼントラーディのメカみたいなデザインに、メガブーストやら半重力ブラックホール砲とか設定オタクもどう解釈して良いか困るビックリドッキリメカ。タイラントソードと大差無い。

 

これ出たときに、サイバーコミックスの元編集者だかがツイッターで、あれはサンライズとかバンダイの権利じゃ無いので訴えるみたいな事を言ってましたが、その後も特に問題にもならなかったので、きっと大丈夫だったんでしょう。

 

そこから更にバズ・ガレムソン登場。今度は「シルエットフォーミュラ」のボスキャラ。タチバナ家(クライマックスUC)フォンセ・カガチ(Vガン)カラス(クロスボーン)と、おいおいこの年代のキャラ全部出す気なのかと。

 

ゲスト的な顔出しではあるので、上手くやったなと思いつつ、今度はゲストに留まらず、ストーリーの軸・話の中心としてハウゼリー・ロナをガッツリ掘り下げてきた。凄い、「F91プリクエル」でもここまでやってないレベルで、本来の意味での「F91」前史であり、まさしくUC100年台の総括じみてきた。ハウゼリーの野望が色々な所に派生して行った、いわばこの年代のジオン・ズム・ダイクンみたいな存在かもしれない。

 

トワイライトアクシズ」の設定にも直接触れてるし、何なら「ガイアギア」のゾーリンソールまでひっそり紛れ込ませてたりする。直接ではなくとも、「AOZ3」「ムーンクライシス」辺りを思わせる部分もあるし、時代の違う「∀」っぽい部分も。

 

そう、正直こういうのが私はガンダムでやってほしいと思ってた部分。ガンダムってシェアードワールドっぽい部分がありつつ、外伝とかは各作品それぞれ違う人達が描いてるので、ちょっとした顔見せ程度はたまにあっても、勝手に他の人が描いた漫画とかのキャラを使う訳にもいかず、その辺りは結構難しい。

 

ダムA版「ブルー」に「宇宙閃光の果てに」のキャラがガッツリ出たりとか近年は多少あったりはするものの、基本そこは難しい。安彦先生が「オリジン」でファーストをリメイクする事になった時、外伝やMSVも組み込んだ上でリメイクして欲しいと思った人は多かったはず。でもやっさんは自分が関与して無い物は一切使いませんって割り切ってましたしね。

 

かといって設定を拾う事に終始した作品なのかと言えば、そこはちゃんと意識的にディル・ライダー(リヴ・アンゲリカ)の物語をこれでもかとブレずに貫いたのが凄い。父・母・親友・部下・ヒロイン・ライバルであり兄弟?を丁寧に描いてあるし、ニュータイプとは?みたいな部分にもこの作品なりの答えを出そうとしてる辺りが凄く気合入った作りだなと。

 

私も基本的には一度出た設定は例え強引な解釈でもなるべく生かす方向にしたいタイプ。この作品は設定に矛盾があるから無視・非公式でしょこんなの。無かった事に・・・というのはなるべくしたくないですが、作品としてはテーマやドラマの部分を重視したいので、設定遊びだけに終始してる作品はそれはそれであんまり好きじゃない。

その点、この「F90FF」の全方位に頑張りました感が凄いなと。じゃあ話が面白かったかと言えば、そこはちょっと首をかしげる部分もあるんですけど、これは今までに無いレベルで、そうそうこういうのを待ってた!という部分が大きくて、非常に楽しめました。

 

ハウゼリー(ロナ家)の思想という部分ではF91前の前史としてセットで触れるのもありかなとは思うものの、ただ基本的には周辺の歴史をほぼ網羅してから、その集大成として後から楽しむ、という感じの作品かなぁ?

 

作者が特別な思い入れがあるからっていう部分で「フォーミュラ戦記0122」のパートも入れてあるけど、そこは正直ノイズだったかなとも。シャルルとカナタも中途半端な描写で終わってしまった感あり。(そこは続きで描かれるかな?)まあこれが好評を博して次の「F90クラスター」まで描ける機会を得たのは後からの結果論で、連載開始前には強引にでもねじ込むしかなかったんでしょうけど。一応、フォーミュラ戦記は当時のコミカライズが先にありますしね。

 

これが出来たのは、この時代の作品が線になっておらず、バラバラな点としてあちこちに散らばってたからこそこういう芸当が出来たというのはあると思うけれど、1年戦争、グリプス戦役とか、各時代でこんな感じの設定の総決算みたいなのやってほしくはある。

 

多分、「F91プリクエル」の人が近いうちに本編コミカライズもやると思うのだけど、それはきっと映画や小説で描かれてる部分までで終わるはず。そこは長谷川先生辺りに戦後も描いてほしい所です。

 

「F90FF」
ありとあらゆるガンダムへのオマージュが散りばめられた完全にガノタ向けの作品ではあるものの、これまでに出来なかった事をやってくれた力作じゃないでしょうか。私は好きです。続編のF90クラスターにも期待してます。

機動戦士ガンダムF90FF(11) (角川コミックス・エース)

 

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