KINNIKUMAN
著:ゆでたまご
刊:集英社 ジャンプ・コミックス 既刊85巻(続巻)
2010年(37巻)
☆☆☆
旧シリーズジャンプコミックス全36巻で完結後、以前取り上げた「マッスル・リターンズ」という、その後を描いた読み切りが他社で掲載。それがきっかけで新シリーズ「キン肉マンII世」がスタート。
そんなII世の連載中に、ちょこちょこと色々な媒体で旧シリーズの読み切り話が何本か描かれる事に。単行本1冊分溜まったので、それを「短編集」として別冊で出すのではなく、通しナンバーの37巻として、旧36巻から22年ぶりに刊行。
というのが本書。
「ウォーズマンビギンズ 仮面の告白!の巻」
「キン肉マンVSテリーマンの巻」
「キン肉マンの結婚式の巻」
「マッスル・リターンズの巻」
の4本を収録。
そしてそこから2年後。「II世」の物語も完結させて、世代交代後ではなく旧シリーズのそのままの延長で続きをスタートさせる、というのが先日から新しいアニメも始まったキン肉マンの新シリーズで、単行本の38巻からがそちらのシリーズになる。というのが大まかな流れ。
よくある質問で言えばじゃあ旧シリーズとII世の間の話を今はやってるのかというのが普通の感覚でしょうが、時系列的にはそうでも「キン肉マンII世」は実際の所、設定に矛盾も生じてパラレル的な扱いであまり気にしなくて良い作品。ただ新シリーズ本編中に「II世」とリンクする設定なんかもたまに出たりはしてるので、完全に無かった事にされたわけでもない、ぐらいの感じかと思われます。
それはさておき37巻の各話感想
▼「ウォーズマンビギンズ 仮面の告白!」
キン肉マンとウォーズマンとの超人オリンピック決勝戦の直前、ウォーズマンは少年時代からの自分の過去を振り返る、という話。
ニコライ・ボルコフの父・超人ミハイルマンは今以上の強さを求め、祖国の手により肉体を機械化して機械超人へと変貌を遂げたものの、暴走の果て散っていった。その血を引き継いだボルコフもまた機械超人として生まれていた。やがて成長したニコライは、国のスカウトにより超人ウォーズマンとして生まれ変わる。
悲劇を乗り越え、氷の精神を身に付けたウォーズマンは、突如現れたバラクーダと共に超人オリンピックの制覇を目指す。
ウォーズマン、人気的にはトップクラスながら、実は私はそんなに好きなキャラでも無い。剣とか武器が好きそうな幼少期にはベアークローもツボにハマりそうなものですが、ラーメンマンを貫いたのが結構ショックだったからかなぁ?ロビンは好きだけど、何故かウォーズマンはそうでも無かった。
それこそ2世でのパロスペシャルを上回るOLAPをケビンに伝授とか、ああいうのは良かったのですが。
そういやウォーズマンはその後のゆで先生の連載「スクラップ三太夫」にも出てましたね。「ゆうれい小僧」や「蹴撃手マモル」は割と好きでしたが、三太夫はちょっと子供心には下品な感じがあんまり好きじゃ無かった。
▼「キン肉マンVSテリーマン」
プロローグ部分は2世とキッドという、そっち読んで無い人には結構な違和感かも。
結果として上手く描き切れて無かった感はありますが、テリーの息子のキッドが、親父はキン肉マンのパートナーの座に甘んじてナンバーワンになれなかった!自分はそんな親父みたいにならない、自分は自分でトップの座に躍り出るんだ!というキッドのコンプレックスはわかりやすいと思う。
いやタッグではマシンガンズとしてきちんとトップなんだし実績は十分じゃね?と思うんですけど、プロレスファンにとってはサポート役がいかに大事か、自分が主役という考え方の人ばかりでは、プロレズは成り立たないんだよ、という発想は物凄く大切なので、そこに気付けない青二才のキッドというのも、それはそれで凄くプロレス的感覚を描いているのは確か。
それでいて、タッグパートナーとしてだけでなく、自分も直接キン肉マンと戦いたいというテリー本人の気持ちもね、プロレスあるあるだなと。その後のナツコさんの悲劇は話の作りとしていかがなものかとは思いますが、幻のカードが実は裏では実現していた、みたいなのもまたプロレス的発想。
ジャンボ鶴田VS前田日明とか、実際に実現しなかった、ファンだけが夢見た幻の対戦カードもあれば、PS2だかのゲームのムービー収録でだけ実現した三沢光晴VS武藤啓司とか、そういう変わり種のネタもあって、話題や想像には事欠かない。
後はちょっと別な視点ですが、テリーの練習相手になってくれるのがバッファローマンとウォーズマンだったというのも、勝手な妄想を膨らませるのには良い素材じゃないでしょうか。
▼「キン肉マンの結婚式」
こちらはアニメ「キン肉マン 完璧始祖編」の第0話でも過去を振り返るベースの部分としてアニメ化されてました。
結婚式の前日、取り壊しになるキン肉ハウスに集まった正義超人達。ウルフマン、ブロッケンJr.、ラーメンマン、ウォーズマン、バッファローマン、ロビンマスク、テリーマン。キン肉マンは地球を去る前にもう一度お前らと戦いたかったと、その魂をぶつけ合う。
何年か前に「バキ」をBL視点で読む、みたいなのちょっと話題になってましたが、拳と拳を突き合わせて精魂果てるまでぶつかり合うって、まさしくホモソーシャルというかブロマンスというか、そういう重ね方もやっぱり出来るわなと、大人になるとそういうのも理解出来るようになる。今回の話もまさにそれですよね。
人間にはわからんだろうなこの超人の感覚は、って言ってるのは、古い言い方だと殴り合って確める友情とか女にはこの感覚わかんねぇだろうな、みたいな感じですよね。
ある意味バカっぽいんだけど、そこがまた魅力というか。キン肉マンに女性ファンがどれほど居るのか微妙な所ですが、もし居たらこういうとこはグッと来るポイントでしょうし、男としても連帯感みたいなので、わかるわ~みたいにグッと来る。まあ男だから女だからとか、将来的には段々となくなっていくのかなとは思いますが。
偏見120%の意見を言いますが、チームのアイドルアニメとかあるじゃないですか。いや現実の多人数アイドルでも良いのか。2~3人くらいならともかく、8人とか10人とかましてや何十人も居るグループ、全員仲良しなんてありえないし、妬みや恨み、感情が渦巻いて、表向きはニコニコしてるけど、裏では足のひっぱりあいとかしてるんだろうな。アニメはそんなリアリティは見たくないだろうと、そう言う描写は入れてないけど、もし実際だったらそうだよね、と私は思う方。女だから、なんていうのは偏見も甚だしいと思うけど、これが男ならさ、普通に仲良く連帯意識を持ったりすると思うんですよね。それは何故ならアホだから。
キン肉マンってそういう印象が凄くあります。この話は特に。
ウルフマン居るのにジェロニモはいねーのか、とか、ネプチューンマンとアシュラマンはやっぱり別枠なのかな?とか、こちらはこちらで色々と想像が膨らむ感じ。
▼「マッスルリターンズ」
は単品の単行本で話したのでここでは割愛。
新アニメ、0話と1話まで見ましたが、良いですねぇ。私はキン肉マンに関しては旧アニメにそんなに思い入れも無いので声とかも全然違和感無く聞けて素直に楽しいです。ただ、断片的な情報ながら、1クールのみのようで、恐らくはまた少し期間を置いて次の2クール目とかやってく感じっぽい。物足りなさも憶えつつ、そこは長く話題になって楽しめるんだと好意的に受け止めたい。
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