PRETTY CURE
構成・執筆:金子博亘、田中博幸、松野本和弘
刊:講談社
2023年
☆★
約20年前の『ファンブック』が帰ってきた!
『ビジュアルファンブック』Vol.1、2が1冊になって、復刻!
プリキュア20周年のロゴも入ってる去年に復刻版が出た初代のビジュアルファンブック。元の2冊は私持ってますので、ここはスルーで良いかと思いつつ、追加のインタビューも掲載されてるという事で、だったらそれは是非読みたい部分。う~んどうしようかなぁと実際に本屋で発売された時に手にはとってみたものの、ええ?これ4000円もするのか!流石に一つや二つのインタビューに4000円はキッツイなぁと思い、結局はそのままスルー。
そこから1年。先日たまたまブクオフで見かけて、2000円だったので半額なら十分安いしまあそれくらいならと確保してきました。特典のカードとかもついてましたし。
本名さん(ブラック)&ゆかなさん(ホワイト)合わせてのインタビュー。鷲尾さん(プロデュサー)西尾さん(ディレクター)稲上さん(キャラデザ)川崎さん(シリーズ構成)4人での座談会。20年前の振り返りです。
いやしかし20年ってマジで凄いな。20未満の人は生まれる前の話ですし、当時の感覚でだって、20年後もシリーズとして続いていて、まさかこんな本が出て振り返る事になるなんて夢にも思ってなかった事でしょう。
それでもプリキュアは2000年のミレニアム以降のコンテンツですし、私はセガサターンに思い入れあって、なんて事を書いてるの更にもっと前だし、何なら私はサターンどころか初代ファミコンからやってる年齢のおっさんですので、そりゃあ歳はとるわけだと今更。それこそキン肉マンがアニメで復活したりとか、レトロコンテンツ全盛のご時世ですから自分では普段あんまり年齢って気にして無いけど。
ところで、新規のインタビューあるけど、あれ?当時のインタビューは?載って無かったっけか?そんな事無いよなと思い、旧版をひっぱり出してくる。
ああ、元が1冊2000円なのか。いかに今の学研の「オフィシャルコンプリートブック」シリーズが安いかがわかる。お値段当時の据え置きでおまけつきなら安いでしょ?っていう価格設定なのか。
で、確認した所、きちんと1巻2巻ともインタビューがたっぷり入ってる。声優陣は本名さんゆかなさんだけでなく、メップル(関智一)、ミップル(矢島晶子)、ポルン(池澤春菜)と妖精の方もあり(流石に敵側は無し)
スタッフの方も新録の方の4人だけでなくもっと色々な人のインタビューが載ってる。
あくまで「ビジュアルファンブック」ですよ。イラスト関係とかは全部載ってるでしょ?なのかもしれないけど、シリーズなんか想像もしてない初代の当時の空気を知るための資料的価値を求める人には、ちょっとこれふざけんなよって感じですよね。
多分、当時のもプレミア化まではしてないはずなので、お手軽とはいわないまでも手間をかければ入手は出来るはずなので(日頃からブクオフ巡りとかしてても過去に何度かは遭遇した事ありますし)そちらをお求め下さい。
じゃあこれ、ライトなファン向けなのかと言えば旧版には載って無い28話の絵コンテ138P分をフル掲載とかいうちょっと異常な事をやってたりする。
初代の無印プリキュアと言えば第42話が伝説で、そこの絵コンテは元々このビジュアルファンブブックには掲載されてたんですが(今回のもカットはされてない)28話ってね、こっちも違う意味で伝説というか、終戦記念日の放送に合わせたプリキュアでは異例な戦争(戦後の復興)を扱った話。
シリーズディレクターの西尾さんが、監督やってると忙しくて絵コンテとか自分でやれなくなるけど、それでも何本かは自分でやりたい(42話も西尾さん)という所でようやく入れたのがこの28話。
最近は終戦記念日に合わせた戦争のドキュメンタリーとかあまりやらなくなったよね、でも子供たちにもあれはきちんと伝えていかなければならない問題だし、それを自分はやりたい、という流れで作られた話。
勿論、プリキュアという子供向け番組で、その作品のカラーを壊さない形ではやるよ、という事で、さなえおばあちゃんの話もどこかで1本くらいやりたかったし、自分が責任もってやるよ、という形で作られたのが28話。
相当に気を使ってプリキュアと言う番組の範疇からは外れないと言いつつ、今見ても相当に異質な1本です。でも、これは作り手のエゴじゃないか?と言われればそれまでだけど、どんな人がこの作品を作っているのかという、作り手の思想が見えてくるという意味ではなかなかに貴重な1本。
女児向け、可愛い物、子供の頃に見ていたなつかしコンテンツ、そして今だとジェンダーロールの先進作的な消費のされ方がプリキュアの基本かと思いますが、プリキュアにはそれだけじゃないものも何気にあったりする。
だって見てる方はそんなの求めて無いし、と言ってしまえばそれまでだけど、作品としての読みとり方は色々ありますし、何より意図して作り手側は入れてるものなので、そこを無視してしまうのは勿体ないよねと私は思う。
見方と言えば、また別の視点。元々この本に入ってるプリキュアグッズ紹介。全部に写真があるわけではないものの、その数、当時出ていたもので500以上ある。これ、ビックリしません?鉛筆とかの文房具や、女児向けの靴下とかのアパレルとかそういうの全部ひっくるめて、2004年当時で500以上。基本は玩具を売るのがメインの販促アニメなんでしょうけど、やっぱりこの商品展開が特徴の一つ。
確か50億行けば大ヒットと言われる女児物の成績で、100億近く売り上げを叩きだして超ヒットになったのが初代のプリキュア。こういう商品展開はそれそこ同じ枠の「どれみ」とかがあってこその流れでしょうし、その前の「セーラームーン」もあるけど、セラムンはニチアサ枠ではないんですよね。どれみの前だと「夢のクレヨン王国」とかがヒットしてたけど、更に前だと「ママレードボーイ」とか少女漫画のアニメ枠とかだったはず。アニメ作品としての系譜や流れは調べるとある程度わかるんだけど、商業戦略みたいな所を掘り下げて見るのも面白そうだし気になる。
これもメインの玩具の系譜くらいなら調べられそうだけど、例えば「セイカのぬりえ」はいつからあって、どういう展開をしてきたのかとか、アニメとスポンサーの歴史みたいになりそうだけど、そういうのも研究書とかあれば面白そうだなと私はいつも思う。誰か調べて本書いてよ。
こういう昔のものもね、ただ「なつかしいな」で終わるんじゃなくて、視点なんて無限にあるんだし、大人が子供と同じ目線で楽しむ必然性なんか私は皆無だと思ってる人なので、色々と掘り下げたり考えたりするのはとても楽しい。(頭をからっぽにして楽しむ、みたいなのは私にとってはただの逃げなので)
そういう意味ではね、私は昔の本も持ってるから良いけど、資料的な価値を求める人がこれ買ったらガッカリするだろうなと感じたので、そこはご注意の程を。ああ、おまけCDに入ってた奴を、CDこそついてないものの、専用サイトで聴けるようにしてあるとか、頑張ってる部分もあるのでそこは立派だとは思います。
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