原題:BLADE
監督:スティーヴン・ノリントン
脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー
原作:MARVEL COMICS
アメリカ映画 1998
☆☆☆
今に至るまでのマーベル映画の最初の一歩とでも言うべき作品の一つ。
2000年以降の「X-MEN」「スパイダーマン」のそれぞれの1作目の大ヒットの流れで語られる事も多いけど、その前にスマッシュヒットしたのがこちら。
映画化前はマーベルでもマイナーキャラの部類でしたし、マーベルという肩書に今ほどはブランド力の無い時代でしたので、そこまでアメコミ原作映画と言うのが前面に押し出されたわけでもなかったはず。
というのも私はリアルタイムでこれは見ておらず、X-MENスパイダーマンの後の公開の「3」くらいの時は流石にこれもマーベルなんだと後から知って映画館でようやく見たという形でした。(多分「2」も劇場では見て無かった気がする)
勿論、これ以前に劇場公開されたマーベル映画は「ハワードザダック」とかドルフ・ラングレン版「パニッシャー」とかありますし、初の劇場公開映画というわけではないものの、流れ的には製作にアヴィ・アラドの名前が入ってますので、後のマーベル映画全盛期に繋がる一歩目である事は間違いない。
因みにそのアヴィ・アラドさん、マーベルを買収した玩具会社のハズブロのCEOで、各種マーベルヒーローのアニメ製作なんかを手掛けつつ、日本では未公開のままで幻になってるTVシリーズのパイロット版「ジェネレーションX」と「ニック・フューリー:エージェントオブシールド」の製作もこの人だったりするので、その2作は結果TVドラマ版が製作される事も無く終わったものの、そのパイロット版は本国でソフト化とかはされてるのでマーベル作品の実写化みたいな部分ではそこそこメジャーな歴史。
ここからは私の想像も入るけど、マーベルヒーローの映画化というよりは、アクション映画の企画の中で、バンパイアハンター物、なおかつ黒人が主人公という部分で他の作品との差別化もしやすいという事でニューラインシネマが企画にGOサインを出したのでしょう。
ニューラインシネマはワーナー系列の制作会社。ワーナーと言えばDCの親会社ですから、本来はライバル会社のマーベル原作なんて企画は通りにくいはずですし、或いはマーベルの倒産前後くらいの時期の企画だったので、そもそもマーベルなんて名前は気にして無かったのかもしれない。アヴィ・アラド以外は。
因みに超マニアックな事を言うと、そもそもマーベルの創立時のタイムリーコミックス時代はDCの出版物も手掛けていて、そこから派生して生まれた経緯もあったりする。そういう意味ではワーナー系列のニューラインシネマで初のスマッシュヒットを出せたことで、そこからアヴィ・アラドの映画企画ラッシュが始まる辺りが、マーベル映画の歴史の転換点って感じで面白い。確か「スパイダーマン:ノーウェイホーム」のクレジットでもアヴィ・アラドに捧げるって出てましたよね。亡くなってはいないけど、そこがあったから今があるんだよっていうリスペクトだったのでしょう。
で、そんな「ブレイド」を20年ぶりくらいに今回見返した。
他のヒーロー映画は好きで何度も見返したりしてたけど、正直ブレイドは思い入れがほぼ無かったので、おそらくは今回見返したので2度目なはず。
そんな状態だったので99%記憶に無かった上で見返すと、思った以上にアクションが凄い。見栄え、センス共に今とそこまで遜色が無いくらいに作ってある。当然、目新しさみたいなものは無いんだけど、このスタイリッシュさ、中二心をくすぐる設定とかがまさしく当時にしては目新しかったんだろうなという気がする。つーか「マトリックス」より前ですからねこれ。
剣の柄の部分のギミックがちゃんと最後に使われたりと、脚本にもそれなりに気を使ってる感もある。
と、同時にヒロインの不死身っぷりとか、お母ちゃんの顛末とか、え~これはどういう事なの?なんか雰囲気で流してない?みたいな部分もちゃんとあって、そこはまだ雑な時代だったなと感じる部分でもある。
雑な部分をあえて残したと言う「マダムウェブ」とか「デッドプール&ウルヴァリン」のあえてって何だよ?そこは別にチャームポイントとかじゃないと思うぞ、と正直思ったけど、まあブレイドなら何と無く許せる気がしないでも無い。今やる事じゃないけど、当時の話だからそれは。
いわゆるヒーロー然としたコスチュームを着るわけでもなく、特殊能力を持つヴィランが出るわけでも無く、やっぱりスーパーヒーロー映画というよりは普通のアクション物ですが、歴史や系譜を辿る時に今後も出てくる有名作品の一つ、という扱いかなぁ?
つまんなかったわけではないけど、私的には今も昔もそんなには響かない感じ。マハーシャラ・アリが主演のMCU版ブレイド、トラブル続きで製作が一向に進みませんが、今更ただのスタイリッシュなアクションだけでは世間に通じないと思うので、新しい何かを生み出してくれる事に期待。
関連記事