INVINCIBLE IRON MAN: IRONHEART VOL.2 -GHOICES
著:ブライアン・マイケル・ベンディス(作)
ステファノ・カッセリ 他(画)
訳:吉川悠
刊:MARVEL 小学館集英社プロダクション ShoProBooks
アメコミ 2023年
収録:INVINCIBLE IRONMAN #6-11(2017)
☆☆☆★
トニー・スタークの遺志を継ぐ若き天才リリ・ウィリアムズ、
国際テロリストと対決する!
新人ヒーローとして悪戦苦闘するアイアンハートことリリ・ウィリアムズ。A.I.化したトニー・スタークと共に華々しくヒーローデビューを果たした彼女は、大企業や一流大学、若手ヒーローチームからもラブコールを受け、多忙な日々を過ごしていた。そんなある日、アメリカ本土で大規模な自爆テロ事件が発生してしまう。人命救助のために現場に駆けつけたリリだったが、そこで彼女は思わぬ重大な選択を迫られることに。一方、リリのために作られたトニーのA.I.は「リリをサポートする」以外の目的に目覚めつつあり…!?
アイアンハートの2巻目。
鮮烈なデビューを飾った彼女だったが「アイアンマンの後継者」というポジション一つで世界中から大注目、ヒーローコミュニティの中でも引く手数多で、色々な所から声をかけられる。
MCUのドラマでも「ワカンダフォーエバー」でデビューして、今後もドラマシリーズが告知済み。じゃあ今後のトニーのポジションを引き継ぐ重要かつ人気キャラなのかと言えば・・・どうでしょう、私がネットとかで見てる範囲では正直不評の嵐。好意的に捉えてる人はほとんど見た事無いかなぁ?
そのほとんどが、新ヒーロー出すのは別にいいけど、特にトニーと関係性も無かった部外者が「アイアンマン」を引き継ぐのに抵抗がある。映画ならそれこそ「ポテトガンの少年」で良かったんじゃないの?という声が多いように思います。
こちらの原作だと、MCUと同じくトニーとの縁は特に無いけど、トニー・スタークのAIがサポートに入る(現在のトニーは「シビルウォー2」の戦いで昏睡状態になり、本人は身を隠しているのが現状で、自分で自分の人格をコピーしたAIトニーを起動している状態)という部分でAIながらも一応はトニーがサポートしているという状態。
ただそこは世間には公表はされてないはずなので、基本的には「よく知らないけどあのアイアンマンの後継者が表れた、アイアンマンを引き継げるくらいならさぞかし凄い奴なんだろう」っていう感覚のはず。アイアンハートというよりアイアンマンという名前のブランドの方を見ているという部分では、世間の評価という点に関しては割とメタ的な共通項もある気がします。
まあでもね、賛否あるのは当然として、こっから何をしていくかですよ。MCUにおける大衆の反応なんて、キャップへの反応見てればいくらでもひっくり返せますから。アイアンマンはカッコ良いけど、このキャプテンアメリカって何?これはちょっとキツイなぁという下馬評を実力でひっくり返したわけですからね。みんな手のひら返ししてたの私は憶えてるぞ。
勿論それは今後、最初の印象をひっくりかえせるくらいの良い作品を生み出せればという話ですが。
今後どう成長していくかしだいだと思います。新しい若いアイアンマンってだけで、ウチに来てよとチャンピオンズがスカウトしに来たり、世間的にはアイアンスーツというだけでもうアベンジャーズの一員だし、シールドもトニーの後継者ならウチの管轄に入れと。で、残っているトニー陣営(トニーのお母さんのアマンダ・アームストロング、秘書のMJ、AIホログラムのフライデー)らは、リリにトニーのラボを解放する。
でも天才少女であるリリは、いくらトニーAIが認めた後継者とは言え、この遺産を見ず知らずの人に委ねちゃうのって倫理的にまずくないか?というのをちゃんと考えられる当たりが面白い。
そんな世界が一気に変わった後に、どこに所属するかも決めかねる中、まずは日常的なヒーロー活動もやらねばと、B級ヴィランのウィル・オ・ウイプスが暴れている所にかけつける。名の知れた有名ヴィランじゃない、こんなの楽勝!・・・かと思いきや、経験の無いアイアンハートはいきなりB級ヴィランに完敗してしまう。
この辺は新人ヒーローらしい部分でありつつ、完敗した後にその背後にラトベリアが絡んでいる事を知ったアイアンハートは、単身ラトベリアに乗り込んで行ってしまう。
この時のラトベリアはドクター・ドゥームが国王から退き、それこそリリと同じくアイアンマンの後継者としてインファマスアイアンマンとなっていた時期(スーペリアスパイダーマンみたいな感じでしょうか?)ラトベリア国の元首として君臨していたルシア・フォン・バルダスと激突。ただの私怨が国際問題に発展しようかと思われた時、じゃあトップを倒した私が今からラトベリアの国王を継ぎます、というとんでもない展開に。
ラトベリアは独裁国家ですし、苦しむ国民の市政を良いものに変えていくというリリの主張に国民はそれを受け入れるという、まるで漫画みたいな展開。
この辺のラトベリア展開は、同じくベンディスが過去に脚本を担当した「シークレット・ウォー」(アシェットで日本語版あるけど私はまだ読んで無い)をベースにしているらしく、そちらでは国の判断では無く個人の意思で他国介入した事で、その指揮をとったニック・フューリーが更迭されてしまうという話でした。
アイアンマンの後継者と言う背負うものの大きさに対する、新人ヒーローというギャップ。それでいて若さで感情で突っ走る半面、若いが故の柔軟な発想と天才の頭脳で予想外の危機の乗り越え方をしていく、という部分ではなかなか個性的で面白い話でした。
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